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小話(フィン視点) 壁

今回はフィン視点です。

 大切すぎてこの関係を壊すことが怖い………。



 俺はルビア様に恋愛感情を抱いている。

 彼女をずっと側で守りたい。でもそれは騎士としてではなく恋人として。


 騎士とお嬢様という立場と彼女の凄まじい鈍感さが隔てる壁は、打ち壊そうとしても容易に崩せるものではない。俺はいつもその壁の前で立ち尽くしている。


 それでも乗り越えたくて態度や言葉で想いをアピールし幾度も挑んだが、あの鈍感お嬢様は気が付かない。


 あまりに気付かないから、勢いに任せてストレートに好きだと伝えたことがある。その時の彼女の返事はというと、「私もフィンの事が好きだよ」。そんなことを好きな人に言われたら舞い上がるに決まっている。

 しかし、その直後俺は一気に地獄に落とされた。気持ちが通じ合えたのかと思って彼女を抱きしめようとした時、追加で彼女の口から「家族のことを大事に思うのは当たり前でしょ?いつもありがとう」と耳を疑う言葉が発せられた。抱きしめようと空中に浮いた手は自分でも気が付かないくらいに静かに下がっていた。

 そんな振られ方あるか?気づいてもらえない悔しさと辛さと悲しさ、それに一瞬でも舞い上がった恥ずかしさに苛まれた。

 その後どうしたのかは、あまりにショックだったからか覚えていない。他の人にあの状況を見られていないことだけが不幸中の幸いだった。


 ルビア様は俺のことを恋愛対象として全く意識していない。

 この間もお兄様のようだ、と言っていたくらいだ。いつまで経っても彼女にとって小さい頃からいつも側にいる俺は兄弟扱い。


 「家族脱却…か…」


 1人虚しく声を零す。壁はまだまだ高い。


 もういっそのこと奪い去ってしまおうか。……………それは到底できない話だ。


 ―――…俺には公爵様や奥様がくれたチャンスと恩がある。

 2人の大事なお嬢様を簡単に奪うことはできない。


 ………。


 ………。


 ……違う…本当はそんなのが理由じゃない。この関係を壊したくない。壊すのが怖い。そんな俺の弱さや情けなさで勇気が出ないだけだ。


 何が守りたいだ。こんな勇気がないのに本当に彼女を守れるのか?


 自分の情けなさに嫌気がさす。自分の心の中にぐるぐると暗い気持ちが流れ出した時。


 「あれ、フィン?そんなところでボーッとしてどうしたの?」


 「――っ!」


 稽古帰りだった俺の耳に、可憐で優しい、世界で1番愛おしい彼女の声が心地よく入ってくる。


 「稽古お疲れ様。今日は見学に行けなくて残念。あ、今から重要なことを言うわ。………もしね、もしだけど、リヤがフィンのところに来たら私がここを通ったってこと絶対に言わないでね?」


 後ろを振り返るとまたリヤから逃げてきたであろうルビア様の姿が目に入る。

 俺が今どんなことを考えているのか知らない彼女は、「えへっ」と無邪気な顔をしてお願いをしてくる。


 彼女の声を聞いて姿を見た瞬間、暗闇に染まりかけた世界が消えて明るく澄み渡るように、見えている景色に色がつく。気持ちが一気に跳ね上がり、嬉しさに心が夢中になる。俺も大概単純だなと思う。


 (あぁ…、好きだなぁ…)


 彼女への気持ちを諦めることは絶対できない。

 これは俺の最初で最後の恋だから。


 愛する彼女がいつか自分の腕の中で幸せに笑っているところが見たい。


 そんな日を夢見て………。

読んでくださりありがとうございます!

ちょっと切ない話となってしまいました。ルビアは鈍感なので…。

次回は本編に戻ります!

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