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祭りの夜

作者: 瀬川なつこ

春の宵、

夜桜を見に行きました

すると、枝の高いところに、お爺さんが絡みついていました

お前さん、早死にするよ

そう言って、ふっと消えてしまいました

確かに、隣で一家心中があった家の、おじいさんに間違えないのです

そう云われて、一か月経つのですが、

最近、誰かに見られている気がして、

落ち込み気味です

調子が悪いのですが、鬼やらいを呼ばなくてはいけません

逆さ逆さ、逆さの祭りがやってくるよ。

赤いポスト、蝶の標本、りんご飴、赤べこ。

そういう、ちょっとブラックなものがいいとして、

夜店はそれを売ります。

お寺で、売っているような、干支の根付小物も、

ところせましとぎゅうぎゅうに。

まるでこの世の終わり。

祭りの夜とは、「死」の匂いがする



海を渡って、常世の世界へ行こう

そこには、亡くなった祖父や祖母が眠っている

海行く漁船の漁火に照らされて、目を細めて見た

沖のほうには、蜃気楼でてきた魂の帳が大勢、蛍石のように輝いていた

美しいな、と思っていると、髪の毛を引っ張られている

彼岸からのお誘いだ


鬼に喰われた娘が、帰ってきた

だが、顔半分失っている

しかし、生きている

娘さん、あなたの番よ、

そう言って、半分の顔でくすくす笑っている

やっぱり、あの時、階段から背中を押したのを、

怒っているのですね

鬼は、笑って、私の手を取った

ああ、喰われる



急に死にたくなって、峠に立った

緑深き山間に、おおいおおいと呼び声が木霊する

やっぱり、居るのか

闇より呼ぶ声

そこの水路のところに、椿の花が首からぽとりと落ちていて、さっと血が流れたかのように見えた

すべて、幻だった

茶屋で水を貰うと、家路につく

悪い、夢


夜桜が、蔵の裏にも咲きました。

酒を持って、蔵の裏の川に棲みついた人魚と、花見をしていると、

綺麗な指先の、女怪が、現れて、抱きしめてきた

そのまま、うつらうつらしていると、

翌朝、自分の部屋で目が覚めた

嗚呼、あの女怪、よけいなことを…

首と手首に、縄で縛ったような跡がついています

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