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雫の鼓動


「集まったわね」


合宿と言われて、夏休み中にも関わらずに生徒会メンバー全員が生徒会室に集まった。


「今日から二日間、この学校で合宿をするわ」

「泊まるだけですか?」

「花梨さんに護身術を身につけるわ。その後で花梨さんにも生徒会のバッチをあげる」

「僕達必要ないような気がするんですけど」

「必要よ?みんなも最初からまた学び直しましょう」


あの地獄を......また最初からだと......


「でも、花梨さんは骨折してるじゃないですか」

「え、治ったけど」

「いつの間に⁉︎骨折しててよ!」

「は?」

「いえ、なんでもありません」


なんで僕は後輩に敬語使ってるんだろう。


「それじゃみんな、ジャージに着替えて武道館に集合」


渋々自分の教室でジャージに着替えて武道館へ行くと、既に花梨さんと雫先輩以外のみんなが息を切らせて畳の上に倒れていた。


「え......」

「逃げて蓮くん」


梨央奈先輩が負けたの⁉︎


「蓮じゃ勝てない」

「地獄の始まりだ」


乃愛先輩と結愛先輩も⁉︎


「水......」


千華先輩も⁉︎


「みんな、雫先輩と戦ったんですか?」

「4対1で花梨さんと戦わせたわ」

「うそん......」

「次は私と蓮先輩で」

「負けましたー‼︎」


ここはプライドを捨てて土下座だ‼︎4人が勝てない相手に僕が勝てるわけがない‼︎


「んじゃ、雫先輩と蓮先輩の見せてよ」

「それも嫌です‼︎」

「蓮くん、やるわよ」

「ヤるだなんてそんなハレンチな」


あ、雫先輩の目つきが変わった。僕死んだ。


「いや!ちょっと!待って〜‼︎」


雫先輩は僕の胸ぐらを掴んで立たせ、一瞬で背負い投げで僕を畳に叩きつけた。


「負けました......」

「え〜、それじゃ雫先輩の本気見れないじゃん」

「自分で確かめてみなよ。きっと花梨さんでも勝てないから」

「なんかイラッとした。雫先輩、いくよ」

「どうぞ」

「あ、その前に質問」

「なにかしら」

「危ない人から身を守る為の練習なんだよね」

「そうね」

「了解‼︎」


花梨さんは、ポケットからカッターを取り出し、雫先輩の顔目掛けて真っ直ぐ手を伸ばしたが、雫先輩はその手を掴み背負い投げしようとした。


「うっ」


だが、花梨さんは雫先輩の髪を掴み、背中に膝蹴りを入れ、雫先輩が手を離した瞬間に次は首目掛けてカッターを振り下ろそうとしたが、雫先輩は危険を察知してしゃがむと同時に花梨さんの腹に蹴りを入れた。


「梨央奈先輩、これ止めたほうが......」

「下手に割り込んだら怪我するよ」


このままじゃ、どっちかが負傷するまで続いちゃう!


「雫先輩、まだ本気じゃないでしょ」

「あら、結構本気だったのだけれど」

「んじゃ私の勝ちかな」

「さぁ、どうかしら」


何故か花梨さんは倒れる僕に跨り、首にカッターを当ててきた。


「......え」

「蓮から離れろ‼︎なんのつもりだ‼︎」

「乃愛先輩は邪魔しないでね」

「花梨さん、やめなさい」

「雫先輩が本当に誰かを救えるか、大切な人を救えるか見せてもらう」


カッターの刃が首に当たった時に気づいた。

このカッター偽物だ!


「雫先輩がこの状況から蓮先輩を救えなかったら、このまま首を切る」

「......諦めるわ」


いや、え、雫先輩⁉︎


雫先輩は武道館の大きな扉の前に立ち、危機的状況を感じさせない素振りを見せ始めた。


「暑いわね、換気しましょう」


そして扉を開けると、太陽の光が僕と花梨さんに直に当たり、僕は思わず目を閉じ、開けた時には花梨さんは意識を失っていた。


「えー⁉︎なにが起きたんですか⁉︎」

「不意を突いただけよ。さぁ、花梨さんが目を覚ますまで特訓しましょう」

「まだやるんですか」

「当然じゃない」


それからお昼までぶっ通しで護身術を学び、花梨さんは途中で目を覚まして、負けたことに落ち込んでいた。


「さて、お昼休憩にしましょう」


雫先輩のその言葉を聞いた瞬間、全員生徒会室へ走った。


「ひゃー!涼しい〜!」

「乃愛、お腹出さないの」

「涼しんだもん!結愛も出してみな!」

「嫌だ」

「梨央奈先と千華先輩、意外と後半粘ってましたね」

「特訓の成果かな!」

「頑張った後のラムネ味の飴は最高!」

「花梨さんも水分取ってね」

「うん」


レックスはいいな、ずっとこんな涼しい場所で寝れて。


「みんな、好きなものを選びなさい」


雫先輩はクーラーボックスを持ってきて、中を見た結愛先輩のテンションが珍しく上がった。


「すごーい!どれでもいいの⁉︎」

「いいわよ。みんなも選びなさい、早い者勝ちよ」


みんなでクーラーボックスの中を見ると、いろんな種類のアイスが入っていた。


「僕は苺ミルク味がいいです!」

「私は抹茶!」


みんなアイスを選び終わり、雫先輩はシンプルなバニラアイスを選び、淑やかに少しずつアイスを食べる姿を見て、改めて綺麗な人だなと見惚れてしまった。

そして小さく舌を出してアイスを舐める姿はなかなかエロい。


「蓮」

「ア、アイス美味しいですね!」


乃愛先輩が怒ってる〜!


「アイスを食べて涼んだら、お昼ご飯にしましょう」

「何食べるんですか?」

「今日はみんな頑張ったから、なんでもいいわよ」

「寿司!」

「千華先輩、もう少し遠慮しましょうよ」

「大丈夫よ、お寿司を注文しましょう」

「やった!」


雫先輩は電話でお寿司を注文してくれて、1時間ぐらい待った頃、生徒会室の扉をノックする音が聞こえ、僕は期待に胸躍らせた。


「ここで大丈夫ですか?」

「お願いします」


みんなが想像していたお寿司とは違い、目の前で新鮮なネタを握ってくれるタイプのお寿司屋さんだった。


「遠慮しないで頼みなさい」

「とりあえずマグロお願いします」

「あいよ!」


梨央奈先輩は慣れているのか普通に注文したが、僕達は緊張して注文できずにいた。


「まったく貴方達は。みんなに今日のオススメコースをお願いします」

「あいよ!」


なんとか雫先輩に助けられて、出されたお寿司を食べた瞬間に頬が緩んだ。


「こんなに美味しいお寿司は初めてです!」

「そう。どんどん食べなさい」


今日の雫先輩は優しい!他の生徒が居ないからかな。


しばらくお寿司を食べていると、雫先輩がお寿司を少しめくって何かを確認していることに気づいた。


「雫先輩、まさかワサビを気にしてます〜?」

「そんなわけないじゃない」

「ワサビは平気なんですか?」

「当たり前でしょ?」

「大将、雫先輩のお寿司にワサビ入れてください」

「あいよ!」

「大将、私はもうお腹いっぱいです。ごちそうさまでした」


くそ〜!少し遅かったか。合宿中に、なにか雫先輩が心を開く瞬間があればなー。

まぁ、ワサビ作戦は雫先輩の可愛いところをまた見たいという欲望からの意地悪だったけど。


「ミャー」 

「大将、マグロの脂身が少ない部分をください」

「雫先輩、まだ食べたいんじゃないですか」

「猫が食べたそうにしているから」

「あぁ、そっちですか」


みんなでお寿司を堪能した後、また地獄の特訓が始まるかと思ったら、夏祭りに関しての会議が始まった。


「今年の夏祭りは、夏休みの最終日が開催予定日になっているわ。学校の生徒も、最終日となるとハメを外しやすくなるはずよ」

「今年は何か起きても、花梨さんがいれば大丈夫そうだけど」

「花梨さんに頼りっぱなしになってはダメよ?」


雫先輩と梨央奈先輩が話していると、花梨さんは気怠そうに聞いた。


「去年、何かあったの?」

「悪い大人達と揉めたのよ」

「へー」 

「花梨も気をつけて、今年も居るかもだから」 

「千華が一番気をつけないとじゃん」

「なんで?」

「1番弱いんだから」

「弱くないし!」


すると結愛先輩は、乃愛先輩の汗を拭いてあげながら見回りについて話をした。


「見回りのやり方なんだけど」

「なにかしら」

「あの大きな祭りを二人ずつ見回りは無理、他の人は楽しみながら見回りって言われても、楽しむって気持ちが勝って視野が狭くなってるし、全員で行動した方がいい。乃愛、スッキリした?」

「ありがとう!んで、今は夏休み中の緊急連絡用携帯は誰が持ってるの?」


本当、結愛先輩の方がお姉ちゃんみたいだ。


「梨央奈が持ってるでしょ」

「うん、私」

「当日はマナーモードにしてね」

「どうして?」

「夏祭りはうるさいし、着信音を聞き逃すかもしれないから」

「なるほどね、分かった」

「それじゃ集団で行動するとして、みんなは夏祭りを楽しまなくていいのかしら」

「みんなで楽しみながら見回りしましょうよ」

「蓮くんに賛成の人は手を挙げなさい」


雫先輩以外のみんなが手を挙げ、多数決で僕の意見が通り、それからは、既に夏休みの宿題を終わらせたみんなが世間話をする中、僕だけ夏休みの宿題をやらされ、退屈な時間を過ごした。


「蓮、勉強終わりそう?」

「1日でなんて無理ですよ」

「今まで手つけてなかったの?」

「はい」

「なんで⁉︎」

「毎日乃愛先輩と遊んでたじゃないですか」

「でも、私は終わってるよ?」

「乃愛先輩もやってないと思って安心してました」

「てか、夏休みの宿題渡されて、家に帰る前にやり終わったし」

「次元が違いますね」


すると梨央奈先輩は、冷たい麦茶を入れてくれ、優しく話しかけてきた。


「今日中に終わらせたら、明日は楽だよ?」

「はい、頑張ります」


夕日で空がオレンジに染まった頃


「終わったー‼︎‼︎」

「さて、夜ご飯は蓮くんが決めていいわよ」

「いいんですか⁉︎それじゃ、ピザがいいです!チーズたっぷりの!」


雫先輩は沢山のピザを注文してくれ、みんなで屋上で食べることになった。


「いただきまーす!」

「結愛!ピザ引っ張って!」


乃愛先輩はチーズたっぷりのピザを咥え、結愛先輩に引っ張ってもらい、どれだけチーズを伸ばせるかを楽しんでいた。


「食べ物で遊ぶと、雫に怒られるよ」

「千華先輩の言う通りです」

「食べるのだから遊んでもいいじゃない、私達しか居ないのだから、食のルールより、楽しく美味しく食べる方がいいわ」

「わーお、雫先輩らしからぬ発言」

「こうやって生徒会のみんなで集まるのも、学園祭までだものね」


雫先輩のその発言で、みんなのテンションは一気に落ち、乃愛先輩は生徒会室へなにかを取りに行った。


「これ持ってきた」

「三脚ですか?」 

「うん、携帯を固定できるやつ。この合宿中、思い出を沢山の写真にしよう!」


そう言って三脚に携帯を固定して、全員がピザを食べている光景を撮った後、みんなでピザを食べながら話す、たわいもない光景を動画で撮り続けた。


「雫先輩、このあとはどうするんですか?」

「プールにあるシャワーで汗を流しましょう。脱いだジャージは洗濯して、明日には乾いているはずだから」


雫先輩のパジャマってどんな感じなんだろう。


その後、シャワーを浴びに来たが、隣からみんなの話し声が聞こえてシャワーに集中できない。


「乃愛、少し大きくなった?」 

「そうかな?梨央奈は相変わらず美乳!」

「まぁね!花梨さんは何カップ?」

「B」

「千華は?」

「デカ目のB」

「結愛は?」

「は?」 

「結愛先輩はAAAでしょ」

「しばき回すぞ」

「あ?」

「まぁまぁ、裸で睨み合わないの」  


なんだこの会話!想像力に感謝!ごちそうさまです!


「雫」

「なにかしら」

「雫は何カップ?」


乃愛先輩⁉︎雫先輩に聞いちゃう⁉︎


「早くシャワーを浴びてしまいなさい」

「雫はなんで裸見せてくれないの?恥ずかしいの?」

「貴方達みたいに下品じゃないだけよ」  

「下品じゃないし‼︎」


さすがに雫先輩は答えないか。それに裸を見せてないなんて、意識高いな。


僕は先にシャワーを浴び終わり、半袖半ズボンのラフな格好になり、プールの外でみんなを待つことにした。


「あら、早いわね」

「雫先輩、それパジャマですか?」

「そうよ」


雫先輩は黒い長ズボンのジャージに、黒い半袖で、シンプルすぎる格好をしていた。

それにオレンジのヘアゴムも腕にしてくれてるし!

もっと可愛いのを期待したが、これはこれで悪くない!胸のラインがハッキリしている!素晴らしい!


「蓮くんは男の子だから、保健室のベッドを使って一人で寝なさいね」

「え」

「なに?」

「合宿って、みんなでトランプとか、恋話して盛り上がるんじゃないんですか⁉︎」

「そんなことしないわよ。それと、あくまでも校内だから、乃愛さんと寝ることも禁じるわ」

「まぁ、それはいいですけど」


それから蓮は保健室で携帯をいじるだけの暇な時間を過ごし、乃愛は生徒会室から脱出しようとするのを梨央奈に止められ、雫は猫の世話をしながら明日の予定を考えていた。


それから時間も遅くなり、相変わらず蓮は暇を持て余していたが、女性陣は蓮が楽しみにしていたトランプで盛り上がっていた。


「はーい!雫先輩が大貧民で〜す!」

「1番のお金持ちが大富豪で負けるなんて、なんか変なの」

「手札が悪かったのよ。もう一度よ」


その時、その場にいた全員が思った。

(これ、勝つまでやるやつだ)


そして雫が大富豪になると、全員倒れるように眠りにつき、雫もトランプを片付けて布団に入った。


その後雫は丑三つ時に目を覚まし、トイレに行こうと立ち上がると、猫が足に頬ずりをしてきた。


「ミャ〜」

「一緒に行く?」

「ミャ」


真っ暗な廊下を恐る恐る猫と歩いていると、猫は突然立ち止まり、天井を見上げて鳴き始め、それを見た雫は恐怖に耐えられなくなっていた。


「ミャ、ミャーミャー」 

「ど、どうしたの?」 

「ミャー」

「もう......」

(ここから1番近いのは保健室か......)


雫は猫を抱き抱えて全力で保健室へ向かった。


「れ、蓮くん?」

「......」


蓮はぐっすり寝ていて目を覚さない。


「蓮くん、起きなさい」

「......乃愛先輩?」 

「ちょ、ちょっと、蓮くん」


蓮は寝ぼけて雫の腰に抱きつき、雫は自分で心臓の音が聞こえるほどに鼓動が激しくなり、思考が止まってしまった。

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