表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/134

クソ......


選挙演説前日。


「もしもし雫?」

「あら、結愛さんから電話なんて珍しいわね」

「乃愛が作戦を放棄しちゃうかもしれない」

「そう。誰か一人はそうなると思っていたわ」

「ごめん。乃愛に悪気はないから許してあげて」

「いいのよ。最初から私のわがままで演技してもらっていただけなのだから」

「うん......明日の演説、梨央奈が応援演説?」

「そうよ」

「瑠奈は?」

「瑠奈さんにも予定通り動いてもらっているわよ」

「蓮、ビックリするだろうね」

「でも、蓮くんは瑠奈さんを傷つけたと思い続けているのも可哀想よね」

「可哀想?珍しいこと言うね」

「たまたまよ」

「瑠奈と睦美先輩は?仲直りした?」

「電話で仲直りしたそうよ。元々勘違いが招いたことだし、瑠奈さんも素直に謝れる子でよかったわ」

「いい子なんだけどねー。蓮のことになると目の色変えて凶暴になるからね」

「まともに護身術を教えなくて良かったわね」

「まぁ、とにかく明日は頑張って」

「気楽にやるわ」

「余裕だねー」

「まぁね。それじゃ私は寝るわね」

「うん。おやすみ」


翌日、久しぶりに通学路で瑠奈に声をかけられた。


「れ、蓮......」

「瑠奈!久しぶり!」

「いろいろと雫先輩から聞いた。ごめんなさい......」

「謝る相手が違うよ?」

「睦美先輩とは仲直りした」

「本当?」

「うん。学校に着いたら、私は蓮と話さない」

「どういうこと?」

「今回のことを見逃してもらうために、雫先輩に協力しなきゃいけないの」

「そっか」

「でも、話さないのは今日だけ」

「分かった。一緒に学校行くのはヤバイ感じ?」

「うん......」


元気ないなー。


「瑠奈」

「ん?」

「ああいうことさなければ、僕は瑠奈を嫌いだなんて思わないよ」

「......」


瑠奈は泣きながら弱々しく僕に抱きついた。


「蓮......蓮、蓮!」

「泣かないでよ」

「本当にごめんなさい」

「いいよ。今日はなにかするんでしょ?先に学校行きな」

「うん!」


瑠奈に笑顔が戻り、瑠奈は走って学校に向かった。

僕も学校に着き、いつも通り乃愛先輩を背負って階段を上がっていると、二階に着いた時、封筒を持った瑠奈とバッタリ会った。


「よ、チビ瑠奈」


瑠奈は鋭い目つきで乃愛先輩を睨み、なにも言わずに何処かへ歩いて行った。

なんだあの目つき......本当に反省してるのかな。


「ねぇ」

「はい」

「はむ」

「うぅ〜!」


乃愛先輩は僕の右耳を咥えて、一瞬舌が当たった気がする。


「なにするんですか⁉︎危ないですよ!」

「もっと」

「はい?」

「演技でも嫌われるのは嫌だから、嫌われた風に。はむはむ」

「ぬぁ〜!」

「はむはむ」


乃愛先輩に耳をはむはむ舐め舐めされ、力が抜けそうになりながら教室に運んで椅子に座らせた。


「やめてください!」

「気持ちよかった?」

「当たり前じゃないですか!じゃなくて!迷惑です!」

「酷い......」


えぇ......これが正解じゃないの?いや、これが演技?


「とにかく、僕に近づかないでください!」

「......分かった」


蓮が教室を出て行くと、結愛は雫にメッセージを送った。

(乃愛も無事完了)


今日は朝から選挙演説があり、朝の会が終わると、全生徒は体育館へ向かった。

その途中、梨央奈は一人の女子にぶつかり、持っていた封筒を落としてしまった。


「ごめんなさい!封筒落としましたよ」

「ありがとう」


女子生徒は梨央奈が落とした封筒を素早く拾い、予め用意していた別の封筒を渡して立ち去った。


「今ぶつかっていたけど、なにかあった?」

「雫は心配しなくていいよ。本当、ネチネチしたやり方だよね」

「応援演説、頼んだわね」

「了解」


そして演説が始まろうとしている時、僕は自分の目を疑った。

体育館の隅で、美桜先輩と一緒に瑠奈が立っていたのだ。


「林太郎くん林太郎くん」

「なんだ?」

「瑠奈、なにしてるの?」

「あの感じだと、瑠奈が美桜先輩の応援演説するみたいだな」

「なんで瑠奈が⁉︎」

「静かに。始まるぞ」


梨央奈先輩がステージに上がり、封筒から紙を出してマイクの前に立って一礼した。


「音海雫の応援演説をさせていただきます、沢村梨央奈です」


演説で話す内容をまとめていた紙が白紙の物とすり替えられていたが、梨央奈は動じなかった。


「まず、雫が生徒会長をしている間の学校全体の成績を見てみましょう」


ステージにぶら下げられた巨大スクリーンにグラフが映し出された。


「雫が生徒会長になる前と比べ、全体の点数の上がり方は一目で分かるかと思います。次に体育祭」


スクリーンには、スライドショーのように体育祭の写真が映し出された。


「チーム分けから種目、全て雫が決めたことです。写真を見て分かる通り、みなさん素敵な表情をしていますね。今この写真を見て、楽しく盛り上がれた記憶が蘇っているのでないでしょうか」


美桜はスラスラと喋る梨央奈を見て、封筒をすり替えるように指示した女子生徒を睨みつけた。


「雫に対しては恐怖心もあり、今回で生徒会長を変えれば全てから解放されると考える生徒もいるかと思います」


おぉ、応援演説でマイナスな発言......でも梨央奈先輩は天才だ。多分大丈夫、多分。


「ですが皆さんは、それを乗り越えています!乗り越えられた強い精神力!それを身に付けられたのも雫のおかげだと確信しています。どうか、雫に清き一票を!」


意外と短くシンプルな演説だったな。


「それと、今私が話したのは全て本心です。その証拠に」


梨央奈先輩は白紙の紙を全生徒に見せつけた。


「メモは取らず、白紙の状態で話させていただきました」


それを見た美桜は動揺した。

(本当に白紙のまま一瞬の動揺もなく話してたのか......しかも、私の罠をパフォーマンスに使われた......クソ......)


半分以上の生徒から大きな拍手を貰い、梨央奈先輩はステージを降りた。

シンプルで分かりやすく、雫先輩のおかげという言葉を入れながら生徒を褒める......小難しいことを話すより効果はありそうだし、最後のパフォーマンスは強い印象を植え付ける。さすが梨央奈先輩だ......


次は瑠奈の番だけど......瑠奈は緊張からか、ロボットみたいな歩き方でステージに上がった。


「はっ、花井美桜先輩の応援演説をさせていただく、大槻瑠奈です。わ、私は美桜先輩に騙されて、人を傷つけてしまいました!」


一斉に生徒達の視線が美桜に向けられ、美桜は瑠奈を見た後、すぐ側にいた雫に小声で言った。


「なにをした」

「さぁ」


瑠奈は話を続けた。


「美桜先輩は自分が生徒会長になるために、元生徒会メンバーを騙して仲間割れさせました!元生徒会メンバー同士が喧嘩してるのを見た生徒も沢山いると思います!私だけがこんなこと言っても信じてもらえないかもしれないので、実際騙された自覚のある人は立ってください!」


千華先輩、睦美先輩、結愛先輩はすぐに立ち上がり、乃愛先輩は立つ代わりに必死に両手を伸ばしている。


なにあれ可愛い。


「この通り、実際に被害者がいます!こんな卑怯なことする人を生徒会長にしたら大変なことになります!」


美桜先輩を応援している人は、分かりやすくイライラしている。


「私からは以上!みんなよく考えて投票してください!」

「嘘だ!私は雫にハメられただけ!みんな信じて!」

「演説を続けましょう」


雫先輩は冷静にステージに上がった。


「グラフを映してください」


映し出されたのは、雫先輩がお願いした映像と違う、学園祭でみんなが楽しんでいる映像や、全生徒で打ち上げをしている映像だった。


「あら?映像間違ってるわよ?」


次に映し出されたのは、雫先輩がピアノを演奏している映像だった。


「これも違うわね。まぁいいです。これからも、楽しい学校生活を送りましょう。以上です」


美桜は、そんな雫を見てニヤッと笑った。

(映像ミスで何も言えなくなってやんの。あとは私が上手く被害者になれば!......違う......)


雫の演説を聞いた生徒達は、急に表情が明るくなり、楽しげな雰囲気に変わっていた。


(今の映像はわざとだ......雫のおかげで楽しかった学園祭、その記憶を思い出させたんだ......雫はずっと前から選挙活動をしていた......私はまた......負けるのか)


美桜先輩は虚な目でステージに上がり、しばらく沈黙が続いた。


「私は......」


キーンコーンカーンコーン


学校のチャイムが鳴り、美桜先輩は何も言えないまま生徒会選挙の演説が終わった。


僕と瑠奈は雫先輩に屋上に呼ばれ、二人で屋上に向かい、屋上に着くと、元生徒会メンバーが全員揃っていた。


「瑠奈さん、ご苦労様」

「もう、最初から説明しててくれたらよかったのに」

「そうね、それは反省しているわ。私の未熟な部分だったわ」


雫先輩って、悪いことは悪いって認めるから偉いよなー。


「にしても、演技でも蓮とイチャイチャできたからラッキーだったよ!」 


千華先輩のその言葉で瑠奈は一瞬で目つきが悪くなった。


「る、瑠奈?落ち着いてね」

「キスもできたしー」

「千華先輩!煽らないでください!」

「おらぁー‼︎」


瑠奈はカッターを握りしめ、千華先輩に向かって行こうとしたが、僕は咄嗟に瑠奈の体を掴んだ。


「離せー!」

「瑠奈⁉︎反省したんだよね⁉︎」

「アイツの唇を削いでやるー‼︎」

「瑠奈ちゃんはキスしたことないんだもんねー?」

「うるさーい‼︎」


選挙結果が出るまで一週間。

こんな調子で、いつもの関係性に戻ったが、僕にはまだ解決していないことがある。

睦美先輩への返事だ。

それと、乃愛先輩の告白のような言葉がずっと頭に残っている。

生徒会選挙が終わっても、暇にならなそうだ。


その頃美桜は職員室に来ていた。


「先生、私学校やめる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ