表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/134

無様ね


山本先輩との約束通り、朝早くに学校に来ると、山本先輩は昇降口の前で僕を待っていた。


「おはよう!」

「おはようございます!」


他に誰もいない校内は、何故か自由になったような開放感があって好きだ。


「着いてきて!」

「はい!」


そんな二人を結愛は、蓮が入っていないグループ通話を繋ぎながら、下駄箱の影で見ていた。


「もしもし、二人は体育館の方に向かった」

「了解よ。結愛さんはそのまま、昇降口に例の物を貼ってちょうだい」

「了解」


僕は体育館に連れてこられると、山本先輩はクスクスと笑い始めた。


「昨日私に言った言葉、そのまま返してあげるよ」

「え?」

「まんまと騙されてくれたね」


すると、体育館倉庫やステージ裏から、三年一組の生徒がぞろぞろと現れた。


「雫、蓮が危ない」

「大丈夫よ。作戦通りにやってちょうだい」

「でも......」

「千華さん、説明したわよね?私を信じなさい」

「分かった......」


その時、三年一組の生徒は蓮に向かって歩き始めた。

それを千華と一緒に見ていた乃愛は、危機感が伝わらない、いつも通り眠そうな声で言った。


「雫〜、そろそろ瑠奈を入れた方がいい〜」

「瑠奈さん、今よ」


僕がボコボコにされる覚悟をした時、髪を明るく戻した瑠奈が体育館に入ってきた。


「睦美せんぱーい」

「アンタは?」

「私は瑠奈。それよりさー、蓮になにする気?」

「私は涼風くんが許せない。みんなも、一年生で生徒会のメンバーになった涼風くんには不満があったみたいだし、生徒会を潰すなら見せしめで涼風くんからかなって」


すると、一人の女子生徒が瑠奈を指差した。


「睦美、気をつけて!そいつは絶対に生徒会の味方!過去に一回、生徒会に入ってる‼︎」

「落ち着きなよ。私、一回生徒会に入って気づいたんだよねー。あの生徒会は腐ってる‼︎先輩達が生徒会とやり合うって話になったから、私も髪を染めて生徒会に喧嘩売ったってわけ。私は先輩達の味方」

「る、瑠奈?なに言ってるの?」

「あー、蓮。ごめんねー?これは全部、生徒会が悪いの」


瑠奈が時間を稼いでるうちに、千華と乃愛、結愛と梨央奈は、雫の指示で体育館へと繋がる武道館へ外から周り、物音を立てずに作戦を実行した。

そして瑠奈は、蓮がボコボコにされないように演技を続けた。


「睦美先輩さ、こんな大勢で蓮にかかっていったら、一瞬で終わっちゃうじゃん。もっと楽しもうよ」

「時間がないんだよ」

「時間?」

「みんなが登校してくる前にやらなきゃ」

「で、でもさ、蓮一人をボコボコにしたところでどうなるの?」

「涼風くんだけじゃないよ。一日一人、最後は会長。少しずつ恐怖を与えていくの。みんなやっちゃって!」


瑠奈の携帯から体育館の音声を聞いていた雫は、最後の切り札を出した。


「限界ね。林太郎くん、出番よ」

「はい」


三年一組の生徒が蓮に向かって走り出した時、林太郎は体育館に飛び込んだ。


「待てーい!」

「林太郎くん⁉︎その髪どうしたの⁉︎」


林太郎くんは、何故が金髪になって現れた。

似合わない。破滅的に似合わない。


「俺も先輩達の仲間にしてください!この髪色は、生徒会への反抗の証です!」


すると、一人の男子生徒が指示を出した。


「体育館の扉、全部閉めろ!」


体育館の大きな扉が閉められ、緊張感が走った。


「瑠奈だっけ?お前、蓮が危ないから反対みたいなこと言ってたよな。本当は生徒会の味方だろ。お前もだ、蓮と仲良く話してるとこを見たことがある。バレバレなんだよ‼︎」

「うっ!」

「林太郎くん‼︎」


林太郎くんは先輩にお腹を殴られて倒れてしまった。


「こんなことなら......もっと腹筋しとくんだった......」

「ちょっと⁉︎林太郎弱すぎ!」

「女を殴るのは趣味じゃないし、お前はうちのクラスの女に任せるわ。睦美、どうする?」

「全裸にして体育館から放り出しちゃって」

「る、瑠奈に手を出すな‼︎」

「蓮......」

「んじゃ、お前がボコボコになるのを大人しく見ててもらうか」

「それでいいです。瑠奈には酷いことしないでください」

「おー。カッコいいね〜」

「ダメ!蓮に酷いことしないで!」


その時、瑠奈のイヤホンに雫から指示が入った。


「そのまま時間を稼いで。あと五分でみんなが登校してくるわ」

「......蓮になにかしたら許さない‼︎」


なんだろう......山本先輩以外のみんな、さっきから体育館の時計を気にしてる。体育館の扉は閉めてるし、みんな登校してきても今日は全校集会はない。

そんなに時間気にする必要はなさそうだけど。


「もういい‼︎全員で涼風くんをやっちゃって‼︎」


山本先輩の指示で、全員僕に向かって走り出し、僕は体を倒された。


「蓮‼︎」

「うぁ〜‼︎」


あれ?痛くない。みんな僕を囲むだけでなにもしてこない。


「蓮、やられてるふりしろ」

「え?」

「先輩の言うこと聞け」

「う、うわー!い、痛いです!」


どういうことだ⁉︎


瑠奈は怒り、睦美に向かって走り出した時、雫は瑠奈に告げた。


「蓮くんは無事よ。そのままその場に倒れて、痛がるふりをしなさい」

「はい?」

「早く」


瑠奈はお腹を押さえて、その場に倒れ込んだ。


「どうしちゃったの?お腹痛くなっちゃった?可哀想に〜」


その瞬間、体育館の扉が開き、沢山の生徒達が集まっていた。


「なにこれ。やばくない?」

「戦うってこういうこと?」

「千華先輩のやり方の方が、まだ好感持てたよね」

「それねー」


すると、ざわついていた生徒達が振り返り、みんな道を開けた。

生徒達の真ん中を歩いて現れたのは雫だった。


「まさか、暴力で戦うってことだったなんてビックリね。そんなの、原始時代の考えだと思っていたわ」


その時、武道館から体育館に繋がる扉を開けて、生徒会のメンバーが大量のバットを持って現れた。


「こんなの隠し持ってた〜」

「あらー?まさかバットを使ってボコボコにしようとしていたの?野蛮ね」


体育館に集まった生徒はそれを見て、ヒソヒソと話し始めた。


「ヤバイでしょ」

「それはやりすぎだよね」

「頭脳で勝てないから暴力って、恥ずかしいすぎない?」


みんなに悪く言われ、睦美は青ざめてしまった。


「し、知らない......バットとか知らないよ!」

「それに貴方、三年一組が全員味方だと思っているの?」

「......え?」

「さぁ、私の味方はこちらに来てちょうだい」


すると、睦美以外の三年一組の生徒全員が、睦美と目を合わせないように雫の方に向かった。


「......みんな?嘘でしょ?」

「本当よ?その証拠に、蓮くんは傷一つ付いていないわ。ね?蓮くん」

「あ、はい!バリバリ元気です!」

「林太郎くんも」

「あ、もう演技しなくていいですか?」

「いいわよ」

「なんで?林太郎くんは確かに殴られて......」

「殴るフリよ。見抜かれないかヒヤヒヤしたわ」

「ち、ちょっと待って!まず私達が今日蓮くんをボコボコにするなんて、会長は知らなかったはず‼︎」

「いいえ。昨日蓮くんを屋上に呼び出したわよね。その時、乃愛さんがドア越しに盗み聞きしたのよ。喧嘩を売ってきた生徒を監視しないとでも思った?」

「監視されてたの......」

「朝早く学校に来てという言葉に違和感を感じた私達は、三年一組の教室でも盗み聞きさせてもらったわ。今日の作戦のこと」


山本先輩は徐々に足が震え始め、少し可哀想にも感じる。

そして、雫先輩になにも教えられていなかった僕も可哀想。


「み、みんな乗り気だったじゃん!」

「私が一人一人の家に出向き、卒業までの間、売店も食堂も使い放題にしてあげると言ったら、簡単に私の味方になったわ」

「汚い‼︎そんなやり方ありえない‼︎」

「人間はそういう生き物なのよ。それに、仲良くすると嘘をついて、蓮くんを騙してボコボコにするのは汚いやり方ではないの?残念ね。やっと学校に来れたのに、これから卒業まで後ろ指を指され、もう、友達なんてできないわよ?貴方はずっと一人」


山本先輩は膝から崩れ落ち、泣き出してまった。

雫先輩は山本先輩の目の前に立ち、山本先輩を見下ろした。


「無様ね」


山本先輩は立ち上がり、体育館から逃げようと走り出した。


「待ちなさい」

「なに‼︎もう、アンタのせいでめちゃくちゃ‼︎もう学校もやめる‼︎」

「まだ退学届けは受け取っていないから、会長命令は有効ね」

「そんなの辞めるから関係ない‼︎」

「貴方、生徒会に入りなさい」

「......え?」

「貴方のような人間が、そのまま社会に出ると考えるとゾッとするわ。あとで生徒会室に来なさい。それと三年一組の皆さん、とてもいい演技だったわ」


そう言い残し、雫先輩は体育館を後にした。


「あ、あのー、私も何も聞いてなかったんだけど」


瑠奈もか......


梨央奈先輩は山本先輩に近づいて声をかけた。


「雫は貴方を裏切らない。冷静になって、雫がした行動の本質を考えてみて?」


そして梨央奈先輩も体育館を出て行った。


「乃愛、結愛、バット運べる?」

「え〜、千華も運んでよ〜」

「しょうがないなー」


生徒会のみんなも、他の生徒達も体育館を出て行き、僕と瑠奈と林太郎くん、そして山本先輩だけが残った。


「これ......どゆこと?」

「私も知らない!蓮が危ないから、生徒会に反抗するフリして時間稼げって言われただけだもん!」

「林太郎くんは?」

「僕は全部知ってた。雫先輩が後で説明してくれると思う。それより睦美先輩......」

「会長はなに考えてるの......もう分からないよ......」


大丈夫!僕も分からない!


「と、とにかく僕は生徒会室に行きますね......」


僕達は山本先輩を体育館に残して、三人で生徒会室に向かった。

残された睦美は、一人で不気味に笑った。

(落ちるとこまで落ちちゃったな......生徒会か......次はもっと上手く、計画的に......)

「絶望させてあげるからね」


生徒会室では、蓮と瑠奈が雫先輩に説明を受けていた。


「とにかく、今日動きがあると睨んで、瑠奈さんと林太郎くんには、時間を稼ぐ役としてお願いをしていたの。あのバットは、睦美さんを最低な人間だと思わせるために私達が用意した物よ」

「どうしてです?」

「まず、事を解決するためには、睦美さん以外の三年一組の生徒を味方につけるのが1番早い。でも、それだけじゃ睦美さんは後にいじめの対象になるわ」

「だから生徒会に入れたんだよね?守るために」


梨央奈先輩はそう言って雫先輩の背後に立った。


「生徒に生徒会の強さを見せつけながら華麗に勝ち、ちゃんと睦美先輩の今後にも責任を持つ。雫の作戦通りだね!」

「変態さんは黙っていてもらえるかしら」

「へ、変態⁉︎」

「てかさ‼︎私には最初に説明してくれても良かったくない⁉︎蓮がボコボコにされたと思ってヒヤヒヤしたんだから!」

「瑠奈!雫先輩には敬語使いなって!」

「でもね、瑠奈さん。貴方は演技ではなく、本当に蓮くんを助けようとした。蓮くんにも気持ち伝わったんじゃないかしら」

「えっ♡」

「瑠奈、そんなキラキラした目で見ないで」


すると乃愛先輩は、僕が触れてほしくなかったことをサラッと言ってしまった。


「結局〜、デートは誰と〜?」

「え」


瑠奈と千華先輩、そして梨央奈先輩の目が怖い。


「あれじゃない?全員で協力して解決したから、全員にデートチケットだよ」

「結愛、頭いい〜。雫も貰えるじゃ〜ん」

「わ、私はいらないわよ」


乃亜先輩はノートを千切り、一枚一枚にデートチケットと書き、全員に配り始めた。


「梨央奈先輩......目が怖いです」

「あー、そうそう。SNSで女の子と友達になってお話ししていた件......まだ詳しく聞いてなかったね」


僕は無言で生徒会室から逃げ出したが、梨央奈先輩は笑顔で追いかけてくる。


「蓮くん?どうして逃げるの?浮気したんだから罰は受けるべきだよね?待ってよ蓮くん」 

「浮気はしてません!」

「私に内緒で仲良くしてたんだから浮気だよ?いつまで逃げるの?」

「梨央奈先輩が止まるまでです!うわっ!」


クソ!なんでこんな時に何もない場所で転ぶんだ!


「捕まえた♡今から、じっくりお話ししようね♡」

「話だけで済みます?」

「さて、誰もいない体育館倉庫に行こうか♡」

「答えてくださいよー!あ、梨央奈先輩、乃愛先輩からチケット貰いました?」

「あ!貰ってない!」


ふっ。そうだ!そのまま生徒会室へ戻るがいい!


梨央奈先輩は生徒会室に戻ろうとしたが、すぐに立ち止まって振り返った。


「私達って、チケットがないとデートできないんだ。へー、そう」


梨央奈先輩は、日に日に独占欲と嫉妬が強くなっている気がする。

同時に、僕の生命線も縮んでいる気がする。


その頃生徒会室では、瑠奈が雫に質問していた。


「今日って全校集会じゃないのに、なんでみんな集まってきたの?」

「昇降口に、体育館に集まるようにと書いた紙を貼ったのよ」

「なるほど」

「林太郎くん。貴方は明日までに髪を染め直しなさいね」

「分かってますよ。親にめちゃくちゃ怒られたんですから」

「林太郎くんの親には、私が説明しておくから安心しなさい」

「ありがとうございます!」


そして瑠奈と林太郎が教室に戻ると、雫は生徒会室を出る直前、千華達に背を向けたまま立ち止まった。


「千華さん」

「なに?」

「初めて全員で成し遂げたわね」

「......雫ー!」

「な、なに⁉︎」


千華は雫に抱きつき、離そうとしなかった。


「は、離してもらえる?」

「仲間だー!」

「ゆ、結愛さん、千華さんを離して」

「めんどくさい」

「乃愛さん!」

「眠〜い」

「もう......」


その日、睦美は生徒会に加入し、蓮の彼女が誰なのかを探り始めた。

そして蓮は体育館倉庫で、梨央奈の質問に答えるたびにキスマークで身体中にマーキングされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ