第9話
「全くこっちの世界のこと知らないでしょ?
そんな傀のために、私が手伝ってあげるわ!
それに、私も行く場所もやることもなくて困ってたのよ…」
ティラの声のトーンが下がる。
きっと何かあったんだ。
だけど契約してしまっていいのかなぁ?
もしかして、ティラが言っていることは嘘かもしれない
本当は、僕を騙して…。
けど、ティラがそんなことする人には見えないし
ティラのあんな表情を見たら断れない
いいのかなぁ
「いいよ、契約しよう」
言葉にするとあっさりしたものだった。
傀は契約とは何かも、それによって何が起こるかも知らない。
だが、その一言でティラが救われるのなら という一心で契約することにしたのだ。
「え?いいの?ほんと?
じゃ、じゃあ契約の説明するわね!
この石はね、私たち妖精一人一人が持っている石で契約するときに使うの。」
そう言いながら銀の小さなナイフを取り出す。
「妖精や魔女はこっちの世界と別の世界を行き来することができるけど、一定の条件を満たしていないといけないの。それが契約。
契約は私たちにとってこっちの世界と別の世界を繋ぐ橋なの。」
ティラが説明をしながらナイフを傀に手渡す。
小さいナイフを壊してしまわないように優しく受け取り、ナイフをまじまじ見る。
細かいツルの装飾が見える。
「それで指を少し切って血を石につけて」
傀は恐る恐るナイフを左手の親指に当て、切る。
切れ味が随分良く、じわじわと血が出てきたところで、山吹色の丸い宝石に親指を石に押し付ける。
すると、傀の指を切った銀のナイフと宝石は光を放ち始め、吸い寄せられるように二つが合わさり、銀のドッグタグに姿を変えた。
そのドッグタグの中心には、宝石が元々そこにあったように煌めいていた。
っ痛!
その光景を不思議そうに眺めていると、親指にピリッとした痛みを感じ、指を見る。
「指が治ってる!」
ティラは驚いている傀の顔を見て満足そうに「その石はね、人にあった形になるの。
それに、回復を促す力もあるから、着けているだけで回復するのよ!」と、笑う。
「それで傷が…」
「それで傀はどこまでこの世界のこと知っているの?」
ティラの唐突な質問に「え?」と返す。
「え?じゃなくて!魔女にどのくらい説明してもらったかってこと」
「…?魔女って何?」
「え〜〜!まず、そこから?!」
と あんぐりと口を開け、傀を見る。
しばらく考え込んだと思うと、何か閃いたようにバッと顔を上げ、
「じゃあ、私が全部説明してあげるわ!
だって、契約者なんだから!」
くるっと回ると、透き通るオレンジ色の羽から鱗粉がキラキラ輝く。