第63話
前を向き、脇にあるポシェットからいつもの時計を取り出し時間を確認する。
「まだ帰るには時間があるけどどうする?早めに帰る?」
「今回は、祭壇の所から帰ろうかな。そこで、少しゆっくり足でも伸ばそうかな」
鬼ごっこで疲れた体を少し休ませたい。
もし、こっちで1日休んだとしても、現実世界では、1時間しかたっていないからだ。
時間的にお得だ。
そのおかげか、睡眠不足はほぼ、解消された感じがする。
「そう言えば、今日団長さんとどうだった」
「何もなかったわ。でも、一つ言うとしたら、凄い人ぐらいかしら」
………………。
そこには机に向かう鮎太朗と、その机の上で、寝そべるティラがいた。
「ねぇ〜。なんで、傀と一緒じゃダメなの?」
「傀と一緒だと、お互い訓練にならないだろ」
「そ、そんな事ないもん!」
頬を膨らまし、かなり怒っているように見える。
「まぁそろそろ始めるか…」
鮎太朗がペンを起き椅子から立ちがり肩を回し始めた。
一息入れたいと言うように。
「やっとなの?」
「仕方ないだろ…。お金関係は自分にしか任せられないんだからよ」
「受付の人とか、あの人なら信用出来るんじゃないの?」
「ちげーよ。信用の問題じゃねえよ。ある人が言った言葉。
大事な仕事は自分、自らがやるべきである。それが、納得が行く形に終わらせる一番の近道なのだから。」
「それって、他人を信用しないって事?」
「捉え方の問題じゃねーかな…。例えば、書類に不備があったとしたら、やった奴か、頼んだ自分が直さないといけなくなる。
その仕事のために居るなら任せるが、違う仕事のために居るなら、二度手間になりやすいって事だと俺は思ってる。」
「ふーん…」
ティラは何か、腑に落ちなさそうな返事をする。
「それより、訓練するんだろ?」
「そうだったわ!それで何の訓練をやってくれるの?格闘?剣術?それとも、スキル?」
「今、保有してるスキルは確か、ゲート、転移系のスキルだったよな?」
「そ、そうよ?話したことあるないわよね?」
変質者を見るようなの目を団長に向ける。
今にも変態!、っと言いながら頬を叩いてきそうなように…。
「いや、林の中で、傀の面接をしているとき、ゲートのスキルを使ってたから、おぼえてたからだよ!」
「あ…。そう言えばそんな事もあったわね」
口を半開きにして、少し前の記憶が蘇る。いや、無理もないだろう。面接を受けてたのは、何週間も前のことなのだから。
「それで、どんな風に強くなりたいんだ?自分で戦えるようにか?それか、誰かを補佐するようなスキルか、または、別の天災とも言えるスキルか…」
「どれが、一番いいの?」
「正直言うと、知っているとは思うが、スキルは才能で決まるのが殆どだ。
だから、自分でこうなろうってのはしんどいとは、思う」
「それでもいいわ!やってみないと分からないじゃない!」
ティラの目は輝いていた。やる気に溢れ、期待に溢れ、何より、強い意志を感じる光。
「オーケー。やってみるか…。武器はなんだ?」
「ナイフよ!」
腰にあるポシェットから、木の鞘にしまわれたナイフをとりだす。
ティラの手に丁度いい、小さなナイフ。
「じゃあ俺と剣術で勝負だな。俺が使うのは刃が付いてない、練習用のナイフ。
てか、ただの刃の形をした鉄だな」
「私のは刃が付いてるけど、大丈夫?」
「ああ。問題ない。本気で殺す気で来ないと、怪我すんぞ?」
鮎太朗のピリッとした空気を感じ、唾を飲み込む。
当然体は自分より、遥かに大きい。大きいが、今の一瞬より大きく見えた。
「いくぞ?それとも来るか?」
「わ、私から行くわ!絶対に団長の攻撃を受けてめられないし、多分避けられないもん!」
「そんな本気でやるわけねぇだろ?」
「分からないわよ!小さい子を痛ぶるのが好きな変態さんかもしれないじゃない?」
「心外だなぁ〜…」
変態さんと言う言葉に少し傷ついたらしく、肩を少し落とす。それが、開始の合図になった。




