第56話
菊那は指を少し離れた場所にある木に指をピストルのように向けた。
「俺のは持続型だけど、操るのは発動型だから、少しやってみせるね」
ふぅ〜っと、息を全て吐き、ゆっくり空気を吸う。
そして、また吐き出すのを繰り返す。
体にまとわりつくような、毛が逆立つような、変な空気の弾力を肌で感じる。
妙な息苦しさを抱えつつ、じっと菊那を見つめ続ける。
「スキルの発動に必要なのは詠唱、又は呼吸法やある行動で発動させる人が殆どかな。こんな風にね」
パチパチと音をたて、菊那の髪の毛が逆立つ。
ピリつくような空気が傀の頬を掠める。
すると、青白い小さな光が一点に集められ、その小さな欠片が一つの球体に変わった。
「例えばこんな感じ」
指先に集められた光を見やすいようにこちらに振り向き、見せてくれる。
青白磁の色をした球体は今にも弾けそうにも見え、菊那の力で安定しているものの、どこか不安に思わせる。
「俺の場合は呼吸法で静電気を操っているんだ。実際に発動させるには、それに加えて想像する力が必要とされるから、どのように発動させるか、どのような動きをするかを考えなくちゃ、失敗する」
先程の木の方へ向き直ると、ピストルのようになっていた指を打つような仕草をする。
すると、光の玉は弾丸のように弾け飛び、木にぶつかると小さな爆発を起こした。
木があまり衝撃で抉られるような音と木の焦げるような匂いが広がる。
傀は呆気に取られる。
「まぁ、発動には想像力とルーティーンとか何かきっかけにするものがあればいいわけだ」
菊那は木が燃えていないかを確認すると、手をパンっと鳴らし、言った。
「それじゃ、とりあえず本題に入りますか」
「傀くんの絶対集中の内容欄見たけど、きっとルーティーンを作れば意識的に発動できるはずだから…」
「今から鬼ごっこをします!!」
「傀くんが俺を捕まえることができたら勝ち!今から目を瞑って10数えてね!」
颯爽と走り出した菊那にさらに呆然とする傀。
鬼ごっこ?
ルーティーンを作る?
情報過多で混乱している傀を尻目に走り去った彼の姿はもうない。
10秒以上混乱し続けたものの、数えないのもどうか迷った末に、さらに10数え、鬼ごっこを始めた。
もちろん土地勘があるわけでもないので、隠れれそうな場所を手当たり次第探す。
しかし、全く見つけれそうもない。
前に獲物を追う方法を教官に教えてもらったのを実践できるかも…。
足跡を追うべく地面を見ると、新そうな大きな足跡。
少なくとも僕のではないな…。
足跡に自分の靴を合わせてみても断然大きい。
傀は足跡に沿って走り出した。




