第11話
久しぶりに母さんが作ったご飯を食べ終わり、はぁぁぁ と長い息を吐き、勢いよく布団に転がり込む。
満たされたお腹に苦しさを感じながらも薄れゆく意識の中、机に置いたあの本に手を伸ばし探るように取る。
洗練された美が際立っている表紙にそっと触れ、ゆっくり表紙を開く。
その分厚い本の表紙を開くと<注意>の大々的な少し長めの文が開くと目に入った。
<注意>
・この本には筆者が知っている情報や筆者の考察が書かれてあるので、無論 筆者が知らないことは書いてないし、間違ったことが書いてある可能性があることを念頭に読んでほしい。
・この本は、私が手渡した人間にしか読むことができないようになっているので他人に見られても平気だが、逆に読めない本を読んでいるということでもあるので注意してほしい。
余談だが、全く読めず現代に存在しない言語に見えるのではなく、その人が習得したことがない言語に変換されるので変人扱いはされないだろう。
・この通り、筆者は敬語や読んでいる人間に考慮しないのでその点注意が必要だ。
そう言えば、お婆さん特製ってことは…。
まさにあの人らしい本らしい。
思わずクスリ と笑みが漏れる。
それにしても、この本は随分と不思議な本だ。
いかにも異世界って感じがしてワクワクした気持ちが止められない。
ページを捲ると、ページいっぱいの目次が広がっており、目次だけで十数ページもあった。
それを流し見るようにパラパラと開き、始めにのところから読み始めた。
始めにこれは大事な内容だからしっかり読む事!
まずは重要用語からだ!
<重要用語>
・ヘルワールド:あちら側の世界(異世界)のことを指す。
・ヘルダイバー:ヘルワールドに行き来する我々のこと。
・アーリック:ヘルワールドの原住民の名称。
・ダイブ:ヘルダイバーがヘルワールドに行くこと。→このページに記述あり
・ゲート:ヘルダイバーがヘルワールドに行く為の扉。→このページに記述あり
・スキル:基本的にアーリックとヘルダイバーが使用するその人の持っている特殊能力。→36P参照
これらを呟くように頭に刻む。
<ヘルワールドでの死 ※重要>
よくヘルワールドの世界をゲーム等の異世界だと思い込み、死んでも復活すると考える人が若者を中心としているが、実際は死んでしまったら復活することはできない。
ヘルワールドで死んでしまうと死んだヘルダイバーの存在は現実でも死んでしまい、加えてヘルダイバーの存在自体が現実世界からも消失してしまう。
確かにそれは完全ではないが、それについては それ以上判明していない。
<ダイブ・ゲートについて>
ヘルワールドはいくつもの大陸に分かれているが、ダイブした先は前回までいた場所となる。
またその逆も然りで、帰還後にまたダイブすると最寄の石碑の前にいることが基本。
いつもダイブしているゲート以外からでも特定のゲートでヘルワールドに行くことは可能である。
しかし、例外としてスキル保有者によるスキルが挙げられる。
稀に移動スキルを保持している者の中でも一部が帰還することができるスキル能力を持つ。
もちろん、血族的に所持している場合もある。
そこで注意すべき点は、帰還することはできてもそのスキルでダイブすることは難しいという点である。
この点については 37P を見て欲しい。
<マナー>
先ほどヘルワールドでの原住民をアーリックと称したが、差別的意味合いを持つ場合があるので表現上そう称するが、実際では呼ばないことを推奨する。
また、アーリックは我々が異世界から来たという認識は存在する。
だが、ヘルダイバーが問題を起こす事例も少なくなく、一部の地域ではヘルダイバーを差別するなどの風潮があることから、その土地柄について知るまではあまりに異世界から来たと言わないようにした方が良い。
アーリック側からしたら、我々はある意味侵略者に近しい。
それ故、アーリックの最低限のルールを守らなければ危険視される。
他のヘルダイバーのためにもマナーを守った行動が必要だ。
勿論、ヘルワールドにはヘルワールドの法律が存在し、幾つもの大陸、国ごとで異なる。
逮捕されれば、拘束され現実世界に戻れなくなったりもあり得るだろう。
道徳さえ守っていればある程度はなんとかなると思うので、もし気になるのならば活動する国などを中心に…………………。




