第1話
__っぅ!
夕日が射し込む一本の小道に小さな声が漏れる。
そこに居たのは とある少年が一人
地面ばかり見つめ、どこかグラついている足取りで何処かへ向かおうとしていた。
少年の制服には 膝や腕に砂や埃が付いていて、所々縫い目がほつれ、くたびれている。
_体が痛い
動くだけで痛む身体中の痣や擦り傷が少年の足取りをさらに重くさせる。
痛む身体を休めるためにも早く帰りたい、そう思うも、その思いとは裏腹に少年は遠回りをする。
それは家で待つ唯一の家族である母に心配を掛けまいと強く思っていたからである。
少年に父はいない。
その分、少年の為にと毎日いくつもの仕事を掛け持ちしている母に 今の彼の惨めな姿を見せたらどうなるのか、想像に難くない。
普段ならば帰宅が遅くなる母が 早く帰ってくる日なのにも関わらず、帰りたくないとすら思う。
_今のままの気持ちじゃ心配かけちゃうだろうな
そう呟くと、少年は全く知りもしない 更に遠回りな道へと曲がる。
ある程度家の方向さえ分かっていれば帰れるだろうと。
見たことのない建物にお店が立ち並ぶ街の一角。
しかし、足元ばかり見ている少年はそんなことを知る由もない。
もし、彼の気持ちに余裕があれば 新鮮味溢れる道に好奇心で胸が高鳴り、全てが煌めいて見えるだろう。
だが、喉元につっかえた感情を整理するので精一杯の少年に其れを気にする程の余裕は全くない。
ただただ道を進んでいく。
しかし、何かが少年を呼び止める。
少年は進み行く足を止め、ゆっくりその方向に目を向ける。
視線の先にあったのは、只の古びた 営業しているかも分からないような駄菓子屋の前だった。
二階建ての木造建築物は、あまり手入れされてそうもなく、二階部分の壁や "駄菓子屋" と書かれた看板には蔦が伝い、屋根には木の葉が積もっていた。
加えて、建物横には自由奔放に生えた木が四方八方に枝を伸ばしている。
手入れもされておらず、駄菓子屋とは思えないような雰囲気を醸し出していたが、正面には堂々と駄菓子屋という看板が付いていた。
そんな摩訶不思議な駄菓子屋に少年の心は引き寄せられる。
ゴクリと唾を飲み込むと、少年はおずおずと扉に手をかけ、そっと音を立てないように開けた。
「こ、こんにちは」
自分のなんとも弱々しい声が響く。
店内は漫画やアニメに出てくるようにお菓子が沢山置かれてあった。
たくさんの棚にいっぱいに詰められた見慣れたお菓子や全く見たことのないようなものまで。
駄菓子屋に来るのは人生で初めてのことだが、_どこか懐かしい
心を擽られているような感覚に思わず笑みを漏らす。
辺りをキョロキョロと見回していると、「いらっしゃい」
と、障子が開きおばあさんが奥の部屋からやってきてしまった。
入ったからには何か買わないと。
急に現実に引き戻されるように焦りながらお菓子をに目を向け、どれにしようか迷っていると、
(お金、持ってたっけ?)
そんな言葉が脳裏をよぎり、段々と冷や汗が出てきた。
左右のポケットに手を入れてかき回すように探すが、ハンカチしかない。
財布にはお金がないし、鞄の何処かになかったらどうしよう…
そう思い、鞄の至る所を探してみると、
いつだったか母さんがくれたポーチ型のキーホルダーの中に300円が入っていた。
これで、何も買わないで帰ることをしないで済む。
ほっと胸を撫で下ろす。




