03:隣町
じゃあまず、家を設置するか。
まだ住むのは俺とアリスだけだし、置くのは2棟でいいだろう。
「なぁ、アリス、家ってどうやって設置するんだ?」
「アイテムボックスを使って、家のとこをピッピッて押して、置きたい場所に目線を移してドンよ」
面倒になったのか、説明に擬音が多い。
「わかった」
「アイテムボックス」
家(小)をピッて押して…
目線を移して…ここら辺かな……
ドン。
こじんまりとした家が建った。中に入り、確認すると、まぁまぁな広さで、ベットや、小さなテーブルなどの最低限の家具があるだけの家みたいだ。
「ソラさんありがとー!じゃあおやすみー」
ベットに転がろうとするアリスの羽衣の背中を掴んだ。
「うぐっ!なにすんのよ!」
「住民を呼ばないと街が作れないだろう。どうすれば住民募集ができる?」
「それなら、馬車で最寄りの街に行きましょ!多分誰かしら来てくれるわ」
近くに街があるのか。それなら都合がいい。
「具体的にどんな人を呼ぶの?」
「大工が3人と、農業ができる人が5人かな」
とりあえず、家が用意できる分は呼ぼうか。
「わかったわ!あ、そうだ。これを渡すのを忘れてた」
アリスが、コインの入った布の袋を渡してきた。
「これはこの世界のお金よ。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、で、今は入ってないけど、金貨100枚で白金貨1枚になるわ」
数えてみると、銅貨が100枚、銀貨50枚、金貨が9枚入っていた。
…ん?9?
「なぁ、アリス」
「?どうかした…?」
「金貨1枚くすねただろ?」
「……い、いや?と、っとっとってないわよ!」
なんて分かりやすい嘘をつくんだ。
「そうか。取ってないのか……そうだ。この街で、盗みとか、犯罪をしたやつは、居住権を剥奪することにするから、犯罪をしなさそうな人を呼ぶから…な?」
「ごめんなさい。金貨返すので、ソラさんの街に住まわせてください」
なんだ。追い出してやろうかと思ったのに。
「近くの街に行くのに何分かかる?」
「1時間弱くらいね」
「じゃあ、今日行こう。まだ夕方だ」
「やったあ!パンじゃないご飯が食べれる!」
欲の塊だな………。
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俺たちは馬車に乗り、街へ向かった。
「お前って瞬間移動ができるのか?」
「この世界ではできないわよ?」
「え?じゃあ昨日の夜はどうやって入ったんだ?」
「窓からヒョコって」
「やっぱお前犯罪者だろう!」
こんな奴を住民として受け入れたくない…
「ソラさんの家族構成ってどうだったの?しっかりしてるから一人っ子?」
「双子の兄がいるよ」
「そうなのね。出来が悪いお兄さんたちだったのね」
「いや?2人とも外科医だぞ」
「は!?きもっ!」
「人の兄をきもいってなんだ。失礼だろ」
「だって、あなたほど異世界に来て落ち着いていられる人はじめて見たんだもん。兄がしっかりしてなかったから、ソラさんが頑張ったんだと思ったから、外科医って聞いてびっくりしたの!どんな家族よ。どうせ両親もすごいんでしょ?」
「父さんは弁護士だった」
「ほらね。お母さんは?」
「……俺が死ぬ前に死んだよ」
「…ごめん………」
「…いや、気にするな。事実だし、いずれ言ってたさ」
「「……」」
重い雰囲気になったじゃねーか…
静かになったのはいいけど…調子が狂うな…
どうにかしてアリスを元の状態に戻したい。
そうだ。
「よし、決めた。今日から3日間、今から行く街に泊まる。そこで金貨を二枚やる。アリス、好きなだけ楽しめ」
「!?あら〜?どうしちゃったの〜?ソラさんもしかして私に惚れちゃったの〜?」
「それはない」
「うっ…即答…。ま、まあいいわ!よし!街でドラゴンのステーキを食べましょう!」
…俺としたことがすっかり忘れてた…金貨の価値を聞かないまま渡してしまった。
遠回しに聞いてみるか…
「質問なんだが、銅貨一枚で買えるものってあるのか?」
「銅貨一枚では、ほとんど買えないわよ。10枚あればりんご一個くらいは買えるわ」
「なっ…」
銅貨一枚だいたい10円くらいだと!?金貨1枚10万じゃないか!20万も渡しちゃったのか…。失敗した…。
「な?」
「…なんでもない……」
「あ!もしかして価値を聞いて失敗したって思った?男に二言は無いわよね?」
「…はい…」
…よく考えたら、聖金貨ってエグくないか?1枚の価値が約1000万だろ?大丈夫か?
しかも、こいつは10万を取ろうとしてたのか…やっぱり追い出してやろうかな…
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無事に街に着いた。
始まりの街クレシオンと違い、村人って感じの人がほとんどだった。
もうそろそろ日が暮れそうだ。
「私は酒場に行くわ!もし、ソラさんが言ってたような大工仕事ができる人がいたら誘ってみるわ!」
「わかった。じゃあ、宿屋を取ってくるから、あとで追う」
こうして、ソラと分かれることにした。
よし。面倒な奴がいなくなったところで、ちょっとだけ仕事をしよう。
「すみません。ちょっとよろしいですか?」
「は、はい。なんでしょう?」
「この街の領主さんってどこにいらっしゃるか、ご存知ですか?」
「はい。ここをまっすぐ行ったところのお屋敷に住んでいますよ」
「ご親切にありがとうございます」
よし、この街の領主に会うか。
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俺は、領主の住む屋敷に向かった。
15分くらい歩き屋敷に着いた。冬の日の沈みは早く、気がつけばあたりは闇に包まれていた。
屋敷の前に屋敷を警護する兵士が2人いた。
「そこの者!見たところ、この街の者ではなさそうだな!何者だ!」
やべ。まだ制服だった。そりゃ怪しまれるわ。
「夜分遅くにすみません。ここから馬車で1時間ほどの所にに新しくできた街の領主です。この街の領主様にご挨拶をしたいのですが…」
「大変失礼しました。新しい街の事は耳にしております。わざわざ脚を運んで頂きありがとうございます」
おお、なんもない俺の街でも知っているのか。
「ただ今、屋敷の者を呼んで参ります」
5分くらい経っただろうか。さっき屋敷に入っていった兵士と一緒に、執事のような人が一緒に出てきた。
「私、この街の領主、ノイマンの執事をしております、ウルドです。よろしくお願いいたします。失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「佐々木空と申します。よろしくお願いします」
「ソラ様ですね。冬の夜に外で立ち話というのはお互い厳しいと思いますので、どうぞ中にお入りください」
屋敷の中に入ると、高級感があり、かつ飾り過ぎない装飾が施された広間が目に入る。
俺も街が大きくなったらこれくらいの屋敷を建てたいな。
ウルドさんについていくと、客間に案内された。
「それでは、本題に入りましょう。ソラ様はノイマン様と面会がしたいとのことでしたが、本日は日が暮れておりますので、明日の午後はどうでしょうか?もしよろしければ歓迎の意を込めて宿を用意しますが、いかがでしょう?」
おお、丁度いい。一石二鳥だな。
「明日の午後ですね。わかりました」
「ありがとうございます。ノイマン様に話しておきます。ところで、お連れ様はいらっしゃいますか?お連れ様の分の宿も用意させていただきますが」
「ありがたいです。1人連れてきておりますので、お願いします」
「かしこまりました。それでは、こちらの屋敷の向かいの宿をソラ様方の御宿泊場所として用意します。いつでもチェックインできるようにしますので、様々なご用がお済みになりましたら、宿へ向かっていただいて結構です。それでは明日の午後、よろしくお願いいたします」
こうして、俺は屋敷を後にした。
一仕事終わったことだし、アリスのところに行って、俺も異世界の飯を存分に楽しむとするか!
投稿予定をことごとく壊してしまい申し訳ないです。
急な用事が入りまして、ほぼ毎日徹夜状態で、小説投稿に手が回らない状況でした。
この話を投稿したら寝ますので、2話投稿の予定でしたが、1話のみの投稿となります。
明日から、21時毎日投稿に戻します。よろしくお願いします。
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