02:領地
あのあと、駄女神が「なんで?!どうして?!」ってずっと喚いてたが、無視して寝た。
だって疲れたんだもん。
起きると駄女神はいなかった。やっぱりあいつ幽霊かなんかだろう。
ハロルドさんの作ってくれたモンスターの肉を使った刺激的な朝食を食べた。
モンスターの肉って怖い響きだが、シルバーウルフってやつの肉が美味しかったから、あまり抵抗はなかった。
美味い飯が食えるなら異世界も悪くないなと思った。
ハロルドさんの家にお世話になるのは今日だけにした。
夜にモンスターが出るなら今夜もお世話になることも考えたが、昨日駄女神が大丈夫って言ってたから、迷惑だろうと思ったからだ。
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「ハロルドさん。お世話になりました」
「こっちこそありがとなソラ!助かったよ。またいつでも来な!」
ハロルドさんに別れを告げ、出発することにした。
「さて、どうするか」
「ソラさん!」
「うわっ!」
これ何回目だよ。
知らないうちに駄女神が横にいた。
「おまえやっぱり幽霊だろ」
「失礼ね。私は正真正銘の女神よ。あと、『おまえ』じゃなくて、私の名前はアリスよ」
この駄女神、性格に合わず、真面目そうな名前だな。
…まずい。こいつは心が読めるんだった。
「…どうかした?」
「あれ?心が読めてない?」
まずい。声が出てしまった。
「こっちの世界では読めないのよ。あなたもしかして私に怒られるようなこと考えてでしょ?多分…『性格に合わず、真面目そうな名前だ』とか」
「……なんで分かるんだよ…」
「顔に書いてあるもん」
え!?思わず顔を触ってしまった。
こいつ化け物だ…。
「『こいつ化け物だ』って思ってるでしょ?」
……アリスには一生ウソがつけなさそうだ……。
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俺達は、歩きながらアリスに質問することにした。
「いろいろ説明してほしいことがあるんだが、1つ目は、【英雄】スキルのことで、なんでそんなに驚いていたんだ?」
「あのね、【英雄】ってスキルは、冒険者スキルの一つで、普通なら冒険者をやってないと発現しないのね?しかも、【英雄】は偉業を成し遂げたりしないと発現しないの。冒険者スキルには、同じスキルでも条件や能力に違いが出るのもあるんだけど…このタイプの説明文、見たことないわ。トラックから女の子助けた以外に、あなたこれまでどんな人生送ってきたのよ」
まぁ、説明文に『苦難を乗り越えて』ってある通り、一般人よりは壮絶な人生を送ってきた気がするが…
「いろいろあったんだよ…もう一つが、昨日言ってた『貴族』ってなんだ?」
「この世界に来る前に、土地を治めてもらうって言ったでしょ?私がよく説明してなかったんだけど、あなたは、この世界では貴族なのよ。転生者の貴族には、【統率】とかの貴族特有のスキルが与えられるはずだから、やっぱりあなたは特別なのよ」
…ハロルドさんに一般人って嘘ついちゃったよ。不可抗力だけど、罪悪感がひどい…。
「って事で、これから、あなたが治める領地に向かってもらうわ。さあ、行くわよ!」
「2日目から大移動かよ…死んで間もない俺を少しは慮ってくれ…」
「転生させてあげたんだから文句を言わない!行くよ!」
言われるがままに連れてかれ、馬車で向かうことになった。
「そういえば、アリスはなんでこの世界にいるんだ?」
荒く揺れる馬車の中で聞いた。
「…えーと、それは…あなたに何の説明もしないで異世界に送り出したら、他の女神に大激怒されて…ソラさんが領地にまともな街が出来るまでまで帰って来んなって……」
「ああ…そうなのか…」
「ソラさん……お願いしますぅ……私を早く天国に帰してくださぃ…」
目に涙を浮かべながら訴えてくる。
アリスは帰れないのか。自業自得だが可愛そうだし、何より俺のことを全部見透かしてそうで怖い。早く立派な街を作ろう。
「最近の若い人ってラノベとか読んでないの?読んでるものだと思ってたんだけど…」
「アリスも知ってる通り、進学校組だったから、そんな本を読んでる暇がなかったんだよ」
「そうなのね。悪かったわ、説明不足で」
本当に俺みたいな異世界知識0の俺を転生させて良かったのだろうか。
今になって不安になる。
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2時間ほど馬車で揺られると…
「さあ着いたわ!ここがあなたの治めていく土地よ!」
着いたのは見渡す限りの広大な草原。
え、街じゃないの?
俺の不安は、絶望に変わりました。
「いやいや、冗談ですよね?アリスさん?こんな何もないところに連れてくるわけ…」
「……」
…あるんですね。
「え、どうするの?住む場所、食うものは?」
「ああ、説明してなかったわね。今からある『特技』を教えてあげるわ。昨日見たステータスの『〜Skill〜』ってあったでしょ?あれは覚えた特技の一覧を表すやつよ。じゃ、ステータスオープンの時みたいに、『アイテムボックス』って唱えてみて?」
「『アイテムボックス』」
言われた通り唱えると、ステータスの時みたく、何か表示が出てきた。
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パン×180
建物(小)×10
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「そこに、パン2カ月分と、設置型の簡易的な建物10棟入ってるわ。まぁ、これでどうすればいいかは分かるわよね?」
「建物を設置して、住民を呼び、生活が可能になるように街を作っていく」
「そう。意外とイージーでしょ?ここまでくればあなたくらいならできると思うわ。」
「何もない草原は普通にハードじゃない?」
「ほかに転生してきた人で、砂漠が領地だったりした人もいるくらいだから、まぁ、それに比べたらね?」
そうなのか…かわいそうに…。
「ささ、早く家を設置しなさい?私は寝るわ。馬車の移動は疲れるのよ」
「………」
なんだこいつ。天国から追い出されたのに反省してないのか?
「今ソラさんが考えていること当てようか?」
「ごめんなさい。なんでもないです。」
まぁ、なんとかなるだろう!
使えない駄女神と、異世界知識0の元高校生が、街づくりを始めます。
「ソラさーん?今『使えない駄女神』って心の中で言わなかったー?」
……やっぱり不安になってきた。
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