01:初日
やばい…非常にやばい………。
落ち着け俺…。死んでからキャラが変わってきてるぞ…。
………。
…よし、冷静に判断しよう。
まず、俺は異世界にいる。
知識でしか知らないが、多分夜になるとモンスターとかが出るんだろう。
多分今は真昼だ。
そしたら最優先事項は、安全な宿を見つけることだろう。
…ちょっとまてよ……。
この世界の通貨なんて持ってないぞ。
金が無ければ宿なんて使えないじゃないか!
ああ…終わった…。このまま野宿することになってモンスターに喰われて死ぬんだ…。
…いや、死んでたまるか。
トラックに轢かれた時一瞬、感じたことのないほど強い痛みを感じた。
死ぬ時のあんな痛み、二度と経験したくない。
今持ってるのは制服のポケットに入っていた100円玉5枚だけ。
よし、質屋を探そう。
見た事のないコインってことで高くつくかもしれない。
街の人に聞いてみよう。
あのガタイのいいおじさんでいいかな?怖いけど…
よし、
「すいません!この近くに質屋ってありませんか?」
「あ、ああ。この先を曲がるとあるが…お前はこの街の住人じゃないんだな?珍しい服を着てるし、いい顔してるじゃないか。貴族様かなんかか?しかも質屋に用があるって珍しいな」
ただの制服なんだが…そうか。この世界では珍しいんだな。さっきから視線を感じていたのだが、このせいか。
「いえいえ、ただの一般人ですよ。遠くの街から来たんですが、お金が無くて、質屋でちょっとしたお宝を売って宿代にしようと思いまして」
「そういうことか。もしよかったら、うちに泊まっていくか?ここの宿は高いし、そんなことで宝を売るなんてもったいねーよ」
「いいんですか!?」
「もちろんさ。その代わりというか、ちょっとだけ手伝って欲しいことがあるんだが…いいか?」
何かわからないが、手伝うだけで、泊まる場所ができるならいいだろう。
「なんでもやります!泊めてください!」
「おう!じゃあついてこい。そのついでにここの街を案内してやる」
話しかけたおじさんが優しくて助かった…。これで初夜は生きていけるな。
おじさんの名前は、ハロルドというらしく、農家をしているらしい。
3日前に腰を痛めたらしく、俺に収穫したものを運んで欲しいそうだ。
力仕事は苦手だがなんとかなるだろう。
この街のこともハロルドさんにいろいろ教えてもらった。
この街は始まりの街、クレシオンというそうだ。
街の周りも、あまり強いモンスターは出現しないらしく、冒険者を始めるには、最適な場所だそうだ。
この街のほとんどの住民が、冒険者か、冒険者を支える武器屋や、道具屋などを営んでいて、
冒険者の性なのかは分からないが、血の気が多い奴もたくさんいるらしい。
ハロルドさんは、
「話しかけたのが俺でよかったな!この街の奴ならお宝って聞いたらお前のこと袋叩きにして、力づくで取られてたぞ!」
と、笑いながら言っていた。
いや、笑いごとじゃねーよ。
ハロルドさんの家に着くと、
「さっき言った通り、裏にある野菜を、小屋に運んで欲しい。その立派な服が汚れるのは困るから、小さくて着れなかった作業着を貸してやるよ。その間に俺は飯を作るからよろしくな!」
と言われた。
作業着に着替え、裏にある畑に行くと…
めっちゃでかい大根の山。
はあ!?なんだこれ!?2メートルくらいあるぞ!?しかも300本くらい!
これ全部運ぶのか?
ハロルドの言葉を思い出す。
「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだが」
ちょっとって…詐欺だろ…。
「あのガタイだからちょっとって言えるんだよ…俺にはちょっとじゃないんだよ…」
愚痴をこぼしながら一本持ってみる。
あれ?軽い。
さらにもう一本持ってみる。
やはり軽い。なんでだ?
試しに大根を叩いてみるが、中がスカスカな音はしない。
「この世界の大根は密度がめっちゃ小さいんだな。何はともあれラッキーだ。すぐ終わらせよう」
軽いものの、量が量なので、気がつくと日が沈んでいた。
「寒い…」
雪こそ降ってはいないが、この世界も季節はあるらしく、冬の冷たい風が吹いていた。
「ハロルドさーん…終わりましたよー…」
「おお!終わったか。全然ちょっとじゃなくてビビっただろ?体つきがひょろっとしてたから、終わんないだろうと思ってたが、力あるんだな」
「ちょっと」って確信犯かよ!
「ああ…美味い……」
この世界にきて初めての食事は鍋だった。
「冬の鍋は最高だろ?」
ゴリッ。
なんかかたい肉が入っていた。
「これは何の肉ですか?」
「シルバーウルフのモモ肉だ。硬くて美味いだろ?」
ウルフって狼!?狼の肉ってこんなに美味いのか…
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食事を堪能して、寝ようとしたその時、
「ソラさーん!」
「うわっ!」
駄女神が現れた。
「初日から人様の家に泊まるなんて…あんた何者よ。こういうのは普通野宿でしょ」
「うるさいな駄女神。君がまともな説明しないから、金が無くてって…は?野宿なんかしたらモンスターに襲われて死ぬだろ」
「は?あなたこそ何を言っているの?街の中なんだから、モンスターがいるわけないでしょ?ラノベ読んだことないの?」
「ないよ?」
「はぁ!?じゃあステータスとかスキルも見たりしてないの!?」
「?ステータスはなんとなくわかるけど、スキルってなんだ?」
「はぁ……、呆れた。スキルっていうのはその人の特別な能力のことよ。『ステータスオープン』って言えば勝手に手の上に表示が出るわ」
いや…勝手に呆れられても困るんだが…
俺は、言われた通り、
「ステータスオープン」
と言い、自分のステータスとやらを見た。
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佐々木空. lv.1
〜Original Skill〜
【英雄】
苦難に耐え抜き、己を犠牲にし、助けるべき者を前に能力が覚醒する。
STR 10(+15)
VIT 10
DEX 10
AGI 10
INT 20
LUC 3
〜Skills〜
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なんかよくわからないな…
「はぁ!?なんで貴族になるはずのあんたが【英雄】なんて持ってんの?!」
「ん?【英雄】ってすごいのか?しかも貴族ってなんだ?」
「土地を治めてもらうって言ったでしょ?それよりなんであなたが冒険者最強スキル持ってんのよ…」
「なんかわからんけど、最強ってことは安全に過ごせそうだな。」
「なんでそんなに鈍感なのよ…」
なんか、俺は最強?らしいです。
投稿が遅れて申し訳ないです。
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