【第3話】 決戦! 大蚓!! その①
これは10年前の物語。
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「行くぜ! UMAハントだ!!」
地面を突き破って姿を現したモンゴリアン・デスワームを、ヒカル、風鬼、平泉が取り囲む。
これが、最近世間を騒がせている、「連続怪死事件」の犯人。
「先手必勝!!」
風鬼は右手に力を込め、能力の【氷】を発動させた。
空気中の水分が氷結して、風鬼の右手を氷漬けにする。
バキバキと乾いた音を立てて、風鬼の右手から氷の槍が浮き出した。
「【氷槍】!!」
槍がロケットのような勢いで、巨大ミミズモンゴリアン・デスワームに目掛けて発射された。
モンゴリアン・デスワームは、「キュルルルル・・・」とひと鳴きすると、ギザギザに尖った口から、直径十センチ程の岩を吐き出した。
「っ!!」
岩と氷が衝突する。
砕けたのは、氷だった。
「風鬼さん! モンゴリアン・デスワームは、体内に砂を蓄積して、岩に変換する能力を持っています!」
「りょうかい!!」
つまり、投擲攻撃ができるということだ。
「ヒカル!!」
「わわわわ、わかったわよ!!」
ヒカルは、先程の風鬼と同じように、手のひらをモンゴリアン・デスワームに向けた。
「能力、発動!!」
ヒカルの両手が黄金に輝き、バチバチと閃光が弾けた。
ヒカルの能力、【雷撃】。
「はあっ!!」
ヒカルの手のひらから発せられた電撃は、空中に亀裂のような起動を描いて、モンゴリアン・デスワームに迫った。
地面から二メートル程むき出しになったデスワームの胴体に直撃する。
バチンッ!!
デスワームの体が大きく仰け反った。
「勝機!!」
風鬼が畳み掛ける。
右手に力を込め、氷の範囲を拡大させた。
「【氷剣】!」
風鬼の手刀から伸びたのは、氷で作られた刃だった。
氷剣を中段に構え、隙を見せたモンゴリアン・デスワームに切り込む。
その瞬間、デスワームの口から、黄色の煙が吹き出した。
「っ!」
ビクンっ!!と風鬼の危険予知本能が作動する。
「あぶねっ!!」
直ぐに地面を蹴って、デスワームから距離を取った。
平泉が手を叩く。
「ナイスです。あれは硫黄系の毒ガスですね。あれで、人を殺していたようです」
「りょ、りょうかい」
少しずつだが、わかってきた。モンゴリアン・デスワームの攻撃パターンを。
砂を吸い込み、岩にする。
岩にした砂を吐き出す。
毒ガスを噴出させる。
(あんまり、近寄りにくいUMAか・・・)
風鬼は、半歩下がり、右手の氷剣の形状を変換させた。
「氷槍・・・」
氷は鋭く伸び、二メートルの槍に変形した。
氷の能力を使い慣れている風鬼は、凍傷になることは無い。躊躇なくその槍を掴んだ。
「さて・・・」
どうやって責めるか。
まともに攻撃しても、毒ガスを出されたら終わりだ。あれは神経に効く毒。一口吸えば、肺が麻痺して、呼吸困難に陥るのだ。
その時だ。
「風鬼さん!!」
「何っ!?」
モンゴリアン・デスワームが、一瞬で視界から消えたのだ。
「逃げた!?」
「いや、違う!!」
風鬼は感じ取った。この運動靴のソールを通して伝わる微弱な振動。
地面で、モンゴリアン・デスワームが動いている証拠だ。
(どこへ向かっている?)
風鬼は軽く地団駄を踏んだ。
感覚で捉える。モンゴリアン・デスワームの居場所を。
そして、奴が向かった先は。
「跳べ!! ヒカル!!」
ヒカルの足元。
「っ!?」
ヒカルは反射的に上へと跳んだ。
その瞬間、地面が粉砕して、モンゴリアン・デスワームが飛び出す。
「いやあああああ!!」
気持ち悪い。とにかく気持ち悪い。カウンターくらい仕掛けたらいいものを、ヒカルは悲鳴をあげるだけだった。
「ちっ!」
風鬼は直ぐに援護に回る。
「【氷槍】!!」
二メートルの氷の槍をさらに伸ばして、デスワームの筋肉質の身体を貫いた。
その瞬間、氷の槍が折れる。
「っ!!」
(なんて高密度の筋肉!!)
圧迫されただけで、粉砕した。
「クソ・・・」
風鬼は地面を蹴って跳ぶと、直ぐに空中のヒカルを回収した。
次の瞬間には、デスワームが毒ガスを吐く。
「少し厄介だぞ!!」
その②に続く
その②に続く