第2話 モンゴリアン・デスワームその①
これは10年前の物語
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あえてその高校の場所を挙げるのはやめておく。
強いて言うなら、北海道よりも南。沖縄よりも北に、その高校は建設されていた。
「ここが、オレたちの【UMAハンター】の本拠地だ」
風鬼の案内で辿り着いた場所は、体育館裏の部室棟だった。
野球部やサッカー部といった、学校の人気を牛耳っている部室に紛れ、【都市伝説部】はあった。
日野光は、埃まみれのその看板を指でつついた。
「としでんせつねぇ」
「さあ、入ろうぜ」
風鬼が鍵を使って、アルミの扉を開ける。
四畳半程の空間が広がっているだけで、UMAハンターに関するものは置かれて居ない。
期待はずれで、ヒカルは拍子抜けした。
「何も無いじゃない」
「それが、あるんですよ」
ヒカルの横から、牛乳瓶の底のようなメガネをかけた男、【平泉良】が顔を出した。
「我々の本拠地は、地下に作ってあるんです」
見ると、床下収納のような扉が付いている。
平泉は取手に手をかけ、思いきり持ち上げた。
ギギギ、ゴゴゴと砂と木が擦れる音がして、地下室への階段が姿を表した。
「さあ、入りましょう!」
風鬼、ヒカル、そして平泉は、階段を使って地下へと向かった。
「ここは、UMAハンターに支給される、【訓練所】兼【待機所】だ」
入って直ぐに、学校の体育館程の武道場。さらに奥に行くと、各ハンター専用の待機室。そして、さらに階段を使って下に降りると、シャワールームまで完備してあった。
ヒカルは、(空襲とか来たら、普通にやり過ごせそうだな)と、無責任な感想を抱いた。
「とりあえず、会議室に行こう!」
風鬼に手招きされ、ヒカルは会議室に向かった。
教室の半分ほどの広さを持つ会議室には、長机とパイプ椅子。そして、ホワイトボードが置かれていた。
そこに、三人で腰をかける。
「じゃあ、早速、ヒカルに、UMAハンターとしての仕事を説明しようかな!」
「うん」
ヒカルは素直に頷いた。
風鬼は、ホワイトボードに、以外に綺麗な文字を連らねていった。
「【UMAハンター】とは、その名の通り、【未確認生物】と戦う者のことを言うんだ」
それは知っている。
「本部は、アメリカにある、【未確認生物研究機関SANA】。オレたちはSANAに認められた、戦闘員というわけだな」
「はい、質問です」
ヒカルは手をあげた。
「私、SANAに認められた覚えはないんだけど?」
つい最近に、神社の林の中で、大蛇と戦っただけだ。SANAに認められた覚えは本当に無かった。
風鬼は「大丈夫だ」と水性ペンをヒカルに向けた。
「UMAハンターになる条件は、【UMAを一体倒す】ことだから、それを報告すれば、UMAハンターになれるんだよ」
補足・・・(ちなみに、この頃はSANAが発足して間もないため、UMAハンターになるための条件はかなり緩かった。10年後、つまり、架陰がUMAハンターになる時は、【UMAを一体倒す】に加え、【各班の総司令官に勝つ】という条件が加えられた)
風鬼は水性ペンを空中に投げた。
右手を掲げ、力を込める。
「【氷】!!」
すると、天井から氷の蔦が生え、宙を舞う水性ペンに襲いかかる。
パキッ!! という音がして、水性ペンは氷漬けにされた。
「これが、【能力】だ。人間にも、UMAと同じように特殊能力が備わることがあるんだ。能力の素質を持っているのは、1000人に1人。それを能力として開花させられるのが、1000人に1人。オレたちは、基本、この能力を使ってUMAと戦う」
補足・・・(10年後は、DVLウイルスの影響で、能力者は生まれていない。よって、UMAハンター達は武器を持つこととなる)
風鬼の話を聞きながら、ヒカルは手を握りしめてみた。
意識を集中させると、手のひらから、「バチバチッ!」と火花が弾けた。
これがヒカルの能力、【電撃】だ。
「オレの能力は、【氷】」
「ボクの能力は、【観察眼】ですよ」
風鬼、平泉の能力は、前回の大蛇との戦いで確認済みだ。
風鬼は「大体のことはわかったか?」とヒカルに確認をとった。
ヒカルはコクリと頷いた。
「ええ、まあ」
「よし!」
風鬼は満足気に笑った。
「なら、早速作戦会議と行こうぜ」
「作戦会議?」
「ああ。オレたちが、次に狙うべきUMAのことだ!!」
その②に続く
UMAハンターKAINと同時に読むと、一層お話を理解できます