でも根本的な解決になってませんよね!
非常に答えづらい質問。違うと答えれば嘘になるし、じゃああの人はどこにいったん? となること請け合いだ。かといってはいそうですと答えるのも万が一中身がバレることを考えれば躊躇してしまう。
「これ、ジャック」
こつりと、いや実際にはゴツンというレベルで拳骨を落としたのは1人の老人であった。若干品のいい服を着ているあたりきっと村長だとか長老だとか言われるやつじゃないだろうか。ふぉっふぉっふぉとか笑いそう。
「ほれ、あっちに行っておれ……どうも賢者様、うちの孫が失礼を……」
「いえいえ、それほどでもありませんよ」
確かに返答には困っていたが、実際100%問題はこちらにあるわけだし。まあ助かったとでも思っておこう。しかしこう畏まられると、大した人間ではない分恐縮してしまうなぁ。あぁ、どうせならしっかり言っておかなきゃいけないことがあった。
「このような歓迎を受けて感謝しておりますが、実はですね……」
「いやいや、この度受けたご恩に比べれば、この程度では返しきれますまい」
「あー、いえ、そのことについてなんですが、実はですね……」
「しかし、見ての通りこの村にはお支払できるほどの対価が……」
「その話はとりあえず置いておくとしてですね、実はですね……」
「いや、お望みのモノがございましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃって頂ければ……」
含みのある言い方であるが、多分気に入った女性で手を打ってくれという話なんじゃなかろうか。そうじゃなくて、ああもういちいち人の話を遮られると悪意がなくともわざとやっているんじゃないかと思えてくるなぁ。
「そうではなく! 実は皆さんの病気に関してですが完治していないかもしれないんです!」
「「「!!!」」」
空気が凍る。まあそりゃあせっかく治ったと思って飲めや歌えと騒いでいたのに、その薬をばらまいた人物がそんなことを言えばそうもなるだろう。だが実際に必要なことではある。後で詐欺師だのなんだのと燃やされる危険性は排除せねば。
「そ、それはどういう……」
「今回皆さんに処方した薬は対処療法でして、効果が一時的な可能性もあるということです」
対処療法にしては過剰な効果のお薬ではあったが、まあ毒だのなんだのが蓄積した結果だったりするならその摂取をやめさせなければどうせ再発する。つまり原因がわかっていない以上僕にはどうもできねぇなぁという話だ。
「そ……そんな……」
あー。まあ、確かにせっかく治ったと思ったのに再発しますよとか言われればショックだよなぁ。