異世界考察
ベッドの上でぐてっと横になり伸びをする。
「うぅ〜」
声のする方を見ると俺の隣で真似するかのように腕を上に伸ばす幼女がいる。
ふむ、愛らしいね。
「ふふっ、二人とも同じポーズしちゃって仲良しね〜」
「あぅ」
「きゃう」
母がこちらを見てニコニコ笑っていながら二人の頰を指でつついてくる。今日面倒を見てくれているのはエミリー母さん、つまり俺の母だ。
「ん〜、フィルもリリィちゃんも頬っぺたプニプニで気持ちいい〜」
こら、止めたまえ。突きすぎだ。痛くはないがむず痒いじゃないか。
「にゅぅ〜!」
リリィちゃんから不満の声が上がる。そうだそうだ!赤ちゃんの肌は敏感なのだよ?
「ゔ〜!」
俺からも抗議の声を上げる。
「あぁ! ごめんごめん! もうしないから、ね?」
そういって頭を撫でてなだめてくる。仕方ないな〜もう。これで許すのは今回だけだからね?
◇
今日はリリィちゃんが俺の家に預けられていて、俺の母が面倒を見てくれている。
俺とリリィちゃんの家は隣同士で歳が近いこともあり、いつもこうして一緒に面倒を見てもらっているのだ。
何より俺の母もリリィちゃんの母のレナさんもそれぞれ仕事を持っているので二人でこうして交互に子育てをしているというわけだ。
俺の母は多少学があるらしく村の事業や会計関わっているみたいで村長の補佐みたいなことをやっているらしい。結構大変みたいだけど赤ん坊に愚痴るのはやめていただきたい。どう反応したらいいのか困ります。
…あと気になっているのは出かけるときいつも剣を持っていくんだよね。女性でも剣とか使えないとまずい場所なのかな?
レナさんは薬師をしていて俺たちの面倒を見てくれている間も薬草を干したり、調合したりしている。母が俺たちの面倒を見ている時に薬草を補充しに森に入ったりしてるみたいだ。レナさんも出かけるときは弓を装備している。森の中はそれなりに危険ということだろう。
あっ、今更ですがフィルというのは現世の俺の名前だ。呼びやすくて結構気に入っている。
この世界のことは正直まだ分からないことばかりだ。いろいろと状況を確認したいところだが第一ステータスをどうやって確認したらいいのか分からないから困っている。喋れないせいかな?
だいたいどんなスキルを取ったかは覚えているつもりだが一度ちゃんと確認したい。スキル選択の時は急かされていたため選択したスキルが記憶通りかあやしいんだよねそれに神らしき人物から最後に送られたスキルが気になる。自分にあったスキルってなんだろうな?
また魔法について今わかっていることといえば個人でもそれなりに魔法が使えることと魔道具という存在があることだ。個人の使える魔法はやはりその人の特性によって限られているらしい。魔法はやはりスキル選択時にあったように個人の適正があるのだろう。魔道具は誰にでも使える。一般に使われるのは薪に火を付ける際に使用する着火の魔道具ぐらいだろうか。俺の父は村で魔道具の製作・調整を任されているらしく土を柔らかくしたり、固めたり、貯めた水を放水させる魔道具を父が調整しているのを見たことがる。
まだまだ自分の体が幼児のものであることから外にはあまり連れて行ってもらえないし、動くこともあまりできない。鋭意寝返りの練習中です!
…ただ気になるのはやはりリリィちゃんが眩しく見えることだろう。日によって輝度が違うものの眩しいのに変わりはない。なんとかすべく最初の頃から感じていた圧力的なものに自分なりに干渉できないかアプローチを測ったところ。リリィちゃんには劣るものの自分の体の中央からも似たものを感じることができるようになった。
まだ上手くはできないが体の中央にその圧力、おそらく”魔力”を押し付けるようにするとリリィちゃんから発せられる光が弱くなることを確認できた。うん、まだまだ検証が必要だな。
「あぅ、あい〜!」
そんなことを考察しているとリリィちゃんが俺に構ってとばかりに俺を手でバシバシ叩いてくる。
あっ、やめて叩かないで!わかった、わかったから。
俺はリリィちゃんの手を取って、構って上げることにする。
てかリリィさん、転生して人生経験の上の俺より早く寝返りを打てるようになるなんてあなた何者ですか?
もしかしてあなたも転生者だったりするんですか?
「あい〜?」
可愛い。こんな反応ができる赤ちゃんが人生経験豊富な転生者だったら嫌だからそんなことはないと思っておこう。
よしっ、まずはリリィちゃんに構いつつ身体動かして寝返りを早く打てるようにならねば! 俺は決意を胸にする。
あっ、痛! ウェイト、ウェイト! わかってるから! 構ったがるから!




