<82> 怨みの連鎖
俺は今日も十七年前の事件を思い出す。二十九歳になった今もはっきりと覚えている。俺はこの手で白神響子を崖から落とした。白神を見ると、どうしても憎しみが湧いてくるのだ。全く理不尽だが、どうしようもない。
あの日、白神と二人きりになり、誰も見ていないのを確認した後、俺は行動に出た。その時、白神は俺がいることに気が付いていなかった。
俺は後ろから突き飛ばし、ガードレールが邪魔で落ちなかった白神の足を持ち上げ崖から落とした。
すっきりした。もう、これで白神を見ることもない。そう思っていた。ところが、1年以上前にテレビで見たリサという女に白神と同じ感情を抱いたのだ。とてつもない憎悪に、俺は心の奥底から震えるのを感じた。
なぜそう感じるのか俺には全くわからない。
どうしようもなく存在そのものを憎んでいるのだ。リサの誕生日を調べると白神の死んだ直後に生まれている。
これは偶然ではない。白神の生まれ変わりだ。これは、リサのそばで一緒にいる男が俺の同級生の田中太郎であること。その田中がリサの恋人であること。これらが生まれ変わりであることを証明している。
なぜならば、白神が死ぬときに一緒にいたのは田中だ。これだけ条件が揃えば間違いない。
俺は、リサをこの手で確実に殺したいと切実に感じている。だから、リサと田中太郎の情報を集めている。
必ず殺すために。
----黒川徹の中にいる血縁者の三兄弟---
長男『白神響子が生きているだと?いや、生まれ変わりが生きている?』
次男『ああ、間違いない。それに白神が死んだ時に、その霊を地獄に送ることができなかったじゃないか。白神の霊がどこに行ったのか分からないままだったが、生まれ変わったのだとしたら、見つからなかったのも納得がいく』
三男『それなら、今度こそしっかりと殺さないといけない』
次男『白神家の奴らに対する怨みは、こんなもので晴らせるものではないが、幸せに暮らしているなんてとても許せない。絶対に殺さないと気が済まない』
三男『あいつらのために俺たち兄弟がどれほど悔しい思いをしたか。町一番の大金持ちの店主を殺し、お金を奪った犯人として俺たちは疑われた。白神家のやつらが俺たちを店主が殺された日に見たと言ったのだ。俺たちは無実の罪を訴えたが誰も聞いてくれず、結局殺されることになった。実際に殺して盗んだのは白神家のやつらだったのにだ』
長男『せっかくアル・カポネを中心にする奴らに協力してもらって血縁関係のある黒川徹の憎しみの感情を増幅させ、白神響子を殺すことに成功したと思ったのに、白神の霊を地獄に送れない事に俺は納得がいかなかった』
次男『俺だって、全然納得してない。リサが生まれ変わりだと知った今、決して許すわけにはいかない』
三男『また、あいつらに協力してもらおう。何とか機会を作らないと』
----カイトとレイガ---
『あいつら、とうとうリサのことを知ってしまった。テレビにリサが出たのが原因だったらしい』
『そうですね。でも、これでようやく太郎との約束が果たせます。元々、太郎からの依頼で始まったことですからね』
『全く、カイトが何を考えているのかは知らないけど、ここからは本当にまずい事になりかねないぞ。奴らの怨みは相当なものだ。どこにどんな影響を及ぼすか全くわからない』
『アル・カポネの奴らも彼らに味方するから、かなり厄介なことになるでしょうね。そして、その影響はひょっとすると水爆を発射させるスイッチを押すぐらいのことはするかもしれません』
『何万人が犠牲になるか検討もつかないじゃないか。さすがにファミルでどうにかなるレベルじゃないぞ』
『全ては想定内です。そうならないように手は打ちますよ。しかし、思ったよりも彼らが動いたのが早かったですね。まあ、ちょうど対応しようと考えていたところなので、都合が良いのですが』
『想定内かよ。カイトが敵だったら大変だったらと思うとぞっとるすよ。まあ、俺もカイトに負ける気はないけどな』
『私もレイガを敵にしなくてよかったですよ。もし敵なら相手にしたくない。負けるとは思いませんが』
『……まあ、いいや。お互いに敵にはしたくない。それで充分だ。それで、次はどうするんだ?』
『因果応報であることが分かれば納得するかもしれませんね』
『因果応報って、まさか……』
『そう、あの三兄弟が殺されることになった真の原因。十四代前の黒川家が白神家に怨まれることをしたのが先で、白神家の人たちはその怨みを晴らすべく犯罪を犯し三兄弟に濡れ衣を着せた。これが怨みの連鎖の始まりです。だからあの三兄弟に彼らより七代前の先祖の罪を教える必要があります』
『地獄から、白神家の先祖を呼ぶ必要があるな』
『はい。そして彼らに協力してもらった上で黒川家から始まった怨みの連鎖を、転生少女のリサが終わらせる必要があります。しかし、太郎の協力なしには解決は難しいでしょう。でも、そんなにうまくはいかないんですよね。この作戦は失敗してからが本番です』
『……どこまで先を見通しているのやら。まあ、カイトを信じて動いてみるとするよ。作戦通りにならないとしても想定内か』
----太郎とリサ---
「リサ、何か良くない予感がするんだけど、気のせいだよね」
「太郎、その予感、ジンも最近何かを心配してるんだけど、気のせいじゃなさそうよ」
僕は、自分の予感とリサの言葉に対して、転生前のリサの事件を思い出し不安になるのだった。




