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<8> 異世界と地球での生活

 今までの仕事を無事辞めることができ、異世界と日本との間を行ったり来たりしながら、僕は新しい事業について考えている。


 異世界で手に入れたきんを、日本で売るための最善の方法はを考えてみた。なにしろ金はこちらの世界では高価である。考えるだけでもワクワクしてくる。


 まずは、自分の会社を立ち上げて鏡を大量に仕入れ、それを異世界で金に変える。次に集めた金を加工して純度を上げ金の延べ棒を作る。それを売って儲けたお金で、また鏡を買う。それを繰り返すだけで、かなりのお金が稼げるはずだ。


 僕は、インターネットを通じて知り合った人々に実際に手に入れた金を見せ、新しい会社を立ち上げる話を進めている。具体的には会社を税率の低いシンガポールで作る予定だ。細かいことはネットで知り合った大田慶介という男に任せることにした。年齢三十七歳。僕より十歳も年上だ。僕が社長で大田が副社長という関係で会社を立ち上げ、会社の業務は大田に任せる。これは彼自身の能力を評価したのではなく、彼の人脈を考慮してのことだ。これ以降、彼のことは副社長と呼ぶことにする。


「大田副社長。今7キロの金がある。これで事業を始められるかな」


「社長。今なら7キロの金の価値は三千万円以上。これだけあれば問題ありません。早速手配します。金は月間どのぐらい集められる予定ですか?会社の規模をどの程度にするか参考にしますので」


「目標は百キロ。だけど最低でも二十キロは集められると思う」


「月間一億円相当ですね。承知しました。それでは知り合いを通じて会社設立を急ぎますので、人員の確保も金を加工する工場の手配も全部わたくしが担当して良いのですか?」


「ああ、任せる」


 これ以降は、彼に任せれば大丈夫だろう。次に会うのは三日後の朝十時ということで、今回の話は終わった。


 さて、異世界に行ってこよう。僕はいつものトイレに行って異世界に転移。リサを笛で呼ぶ。こっちの世界にも季節はあるようで、以前に比べ涼しくなってきた。川の水が日に照らされてキラキラ輝いて見える。せっかくなので川の水を飲む。いつもながらうまい。遠くから聞こえる虫の鳴き声が秋を感じさせる。そこに聞きなれた天使の声が聞こえた。


『太郎、俺だ』


 ジンは機嫌がよさそうだ。ジンがいるおかげでリサを待つ時間が短く感じられる。ジンとの会話は結構好きだ。


「ジン、今日も来てくれたんだね。いつもありがとう。リサは今日来れるの?」


『大丈夫。リサにとっては太郎が最優先だから、来れないことは殆どないと思うけどな』


 姿の見えないジンと会話しているが、よく考えたら普通の人には声も聞こえないんだった。今は人がいないからいいけど、人が見ている中では気軽にジンと話ができないのかも。ちょっとジンに聞いてみよう。


「ジン、ちょっと聞きたいんだけど、リサはジンと話す時に人が見ていても大丈夫なの?」


『いや、さすがに人が見ている時には話はしないよ。リサが空中に向けて独り言を呟く可哀想な人と思われてしまうからね』


 リサが人前でジンを話をしないのは正解だと素直に思った。


「やはりそうか。僕も人が見ている時にはジンと話さないほうが良いね」


『ああ、そのほうがいいだろうな。ところでリサが来たよ。今日も早かったな。普通はこんなに早く来れないと思ったほうがいいよ』


 街の方角を見ると、人の姿が見えた。リサだ。


「……早すぎるぐらいだね。いや、さすがに僕もこれが普通だとは思っていないけど」


 ジンは気を使っているのか、リサが来ると僕とリサの二人きりにしてくれる。少しでも長くリサと話をしたいと思っている僕は、リサに向かって全力で走った。だんだんリサが近づいてくる。リサは急いで来ただけあって汗をかいているが黒髪のポニーテールで今日も本当に可愛い。リサが浄化魔法を使うとリサから出ていた汗が消えた。


 そういえば浄化魔法か。僕も覚えたいな。


「リサ、今日はその魔法教えてくれない?」


「いいわよ。魔法の呪文を書いてあげるから、紙とボールペン貸してくれる?」


 僕は、紙とボールペンを渡した。リサは、紙にこの世界の言葉で呪文を書いた。それに僕はカタカナと英語の発音記号を混ぜた読み方をメモする。読み方をボイスレコーダーに記録し、何度も再生してみた。僕の魔法を使う能力はまだ低いかもしれないが練習すれば能力は高くなっていくとリサが説明してくれた。


 それから、僕は呪文を唱えてみた。たどたどしい呪文では、魔法の効果が発揮されないようで、すらすらと言えることと、鮮明にイメージできることが大切だとリサが教えてくれた。


 以前ジンに聞いたのだが、こちらの世界で魔法が使えるようになっても、地球で魔法は使えないんだそうだ。世界の法則が違うため、魔法が使えるのはこちらの世界にいる時だけ。ついでに聞いて知ったのだが、こちらの世界の名前は、ユーナス。ユーナスが地球に相当する。日本に相当するのはルカナンだそうだ。


 だから、僕はルカナンと日本を行ったり来たりしているわけだ。


 リサに教えてもらった浄化魔法の呪文を練習すること30分。とうとう僕の中の魔力が消費されて体の汚れが消えたのを感じた。


「リサ!成功したよ。魔法が使えた。やった。ああ、嬉しいなあ」


 そう言いつつ得意げにリサを見ると、リサが固まってる。ものすごく驚いているように見えるのは何でだろう。


「うそ?ありえない。おかしいわよ……そんなに早く魔法が使えるようになるなんて……」


「いやいや、なんで魔法が使えておかしいみたいになってるの?」


「だって普通は半年以上訓練しないと初級の魔法も発動しないよ。こんな短い時間で使えるようになるなんて太郎おかしいよ」


 リサは、まだ信じられない様子で僕を見て、そう言ったのだった。どうして僕が魔法を早く覚えられたのか、その理由を知るのは、それから二カ月後のことだった。

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