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73/100

<73> え? 殺されそうになるふりが必要ですか?

「太郎、ちょっと申し訳ないのですが、私たちは一度死んだふりが必要です。素直にやられて下さい」


「は?」


 カイトが意味不明なことを言った。ファミルはナンシーと入れ替わっているが事情をよく了解している様子だ。


「ちなみに、さっきばら撒いた骨ですが、テレビカメラですので、踏まないで下さいね」


「マジですか? 僕は骨型のカメラなんて知りませんが。まさか、別に開発を依頼したんですか?」


「いろいろ、今後必要かと思いまして。骨型のカメラは今回限りでしょうね。活躍するのは」


 テレビ放映を意識するあまりに、様々なカメラの開発を行なったのか。そして、僕たちが殺されそうになるシーンも欲しいということか。


「わかりました。三人とも回復魔法使えるし、多少怪我しても大丈夫ですね」


「はい。感動的なシーンが撮れるよう、よろしくお願いしますね」


 僕たちが、やられるふりをするのは難しくない。ダメージを軽減する服を着ているし。まあ、やってみるか。痛いふりとか、色々。


 殴られそうになり、うっかり避けてしまう。よく見ると、ファミル(ナンシー)は急所を外して攻撃を受けている。苦しそうな表情をしているが全然ダメージを受けていないだろう。


 カイトは、リアルにダメージを受けている。青木さんの体が大変な事になっている。


 僕も少しやられないと。


 目を閉じて素直に殴られる。痛い。まあ、僕には演技力がないからリアルにやられないと駄目だろう。


 数分後、僕たちは死ぬほどの攻撃を受けて倒れている。もちろん演技だ。ここからのシナリオをカイトは考えてるだろうが、男達が穴を掘っている。そこに僕たちを埋めるつもりだろう。


 三人とも同じ穴に落とされ、土をかけられた。僕たちは、土の中でも体内の酸素濃度の調整を魔法で行えるので、別に平気だ。


 だから三人が完全に埋められたのを確認して、異世界に転移。異世界なら魔法が自由に使えるから、魔法で土を操作して穴から出る。骨になったふりをしていた男性とも合流して、今四人いる状況だ。


 さて、カイトにこれからの作戦を聞こう。


「カイト、そろそろ作戦を教えてもらいたいんですが、これからどうするつもりなんですか?」


「私が太郎の中に入って、青木さんとグレンさんは後ろから見ているだけでいいです。それで、ナンシーがファミルの中に入って、私とナンシーで全員を倒します。だから、太郎自身はこれから後は一度転移してもらうだけで、他は何もしなくていいですよ。作戦については……まあ、見ていればわかりますから、今は内緒で」


 ……結局、最初から全部秘密にするつもりだったんだ。最初は大したことないから忘れてたとか言ってたけど、完全にわざとであることが明確になった。もう一人名前のわからなかった男性はグレンさんって名前なんだ。もう、帰っていいかなと思った。すると、ファミル(ナンシー)が僕の肩に手を置いて少し腰を落とし上目遣いで言った。


「太郎に演技力を求めるのは酷だと私が提案したの。だからカイトを責めないでね」


 紫色の髪の毛から、ちょっといい匂いがする。顔が近い。くう、ファミルが美少女だからその顔で言われると何でも許したくなる。


「わかった。では、とりあえず僕たちは穴に埋められて死んでいる状況だけど、このまま終わりってことはないよね」


 それについて、カイトが答えた。


「彼らに最高の恐怖を与えないとね。死んだと思っていた相手が生きていると知った時にどんな反応をするか、なかなか見ものだと思うよ」


 そんなの、どのように編集して放送するつもりなんだろう。全くイメージできない。


「これ、テレビで放送するつもりなんですよね。編集どうするつもりなんですか?全くわけがわからないと思いますよ。死んだはずの人間が生きていたなんて」


「日本には便利な存在がいるじゃないですか。まるで魔法みたいな」


 そんな存在いたかな? いや知らない。ナンシーは知っているようだ。僕は、もうよくわからないままに協力することにした。

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