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<21> 青木探偵事務所での打ち合わせ

 青木探偵事務所に行くまでの間、僕とリサは十五年前の事件について話をした。リサは、自分を殺した相手が誰か、見えてはいなかった。普段から一人でいることが多く、学校行事の一つとして山に登っていたその日のことを思い出し、リサは言った。


「休憩時間の時に景色を見ていたら突き飛ばされ、崖から落とされたの。気が付いたら太郎がいたわ。手がかりは無いに等しいと思うの。だから、調査しても何もわからないと思うんだけど。」


 僕は、リサに内緒で調査を依頼していたことを話し、リサも一緒に聞いた方がいいと言うと、リサはそれに同意してくれた。そのような会話をしているうちに僕たちは青木探偵事務所に到着したのだった。少し前から働くことになった松井さんがリサを見て悪戯っぽい笑顔で言った。


「あら、彼女さん可愛いわね。高校生ぐらいに見えるんだけど、犯罪のにおいがするわよ。」


「私はこう見えても、以前は太郎の同級生なの。今はもうすぐ十六歳だけど……」


「松井さん。彼女はリサというんだけど、異世界に転生したので、本当に僕と同級生だったんだ」


「田中さん。私も調査に関わっているから、そのぐらいの事情は知っているわ。ただ、一般世間的に見ると、二十七歳と十六歳ぐらいの人が恋仲になっているのは、ちょっと……。見ていて通報したくなる衝動を抑えるのが大変だわ」


 松井さんにいじられていると、ドアが開いて青木?さんが来た。青木さんでいいのかな?とにかく僕は挨拶をした。


「お世話になってます。事件のことで連絡を頂いたのですが、今回リサ……転生前は白神響子も一緒です」


「異世界からようこそ。日本に来るのはだいぶ久しぶりですね。以前の姿とちょっと違っているようですが、黒髪と黒い目の特徴は引きついでいる。なるほど。私は表向きは青木です。特殊な事情があって私のことはこれ以上申し上げられませんが、問題ありませんよね」


 リサは、僕を見てどういうこと?と目で訴えている。僕は言った。


「以前あなたが言ったヒントのレギオンについて調べました。たぶんですが、あなたの中には多くの霊が入っているのではないでしょうか。そしてあなた自身は青木さんではない」


 青木?さんではないと思われる何者かが、僕の言ったことに対して満足気な表情を見せて言った。


「さて、どうでしょうね。田中さんがそう思うのであれば、そう思っていただいて結構ですが、それ以上のことはまだ言うわけにはいきませんので。それにしても、あのヒントはわかりやす過ぎたかな……。ともかく、私のことは青木で結構ですから。今まで通り青木さんとでも呼んで下さい。お互いのためです」


「わかりました。今まであなたのことをなんと呼んだらよいのか気になっていましたが、青木さんがニックネームなんだと思って対応させて頂きます」


 リサは、ここまでの話の流れに驚いている様子だ。容易に信じられる会話ではない。リサは言った。


「ジンが紹介しただけあって、普通じゃないわね」


 普通ではないことが、今回は必要だ。僕はそう思い、本題に入ってもらうことにした。青木さんは、今回の件について次のような説明をした。


 1、黒川徹という同級生に悪霊が入り事件が起こった。

 2、白神響子は十二歳で死ぬ運命だった。

 3、白神響子は死ぬ予定日より二日早く殺された。

 4、今回の件は、霊のマフィアのような集団がかかわっている。

 5、これ以上の調査を行うのであれば、最低でも五十億円は必要。


 僕は、この説明を聞いて疑問に思ったことを青木さんに聞いた。


「五十億円必要ということは、より多くの人材が必要という意味ではないですか?」


 青木さんは答えた。


「自由に活動できる体が欲しい。四十八人分。四十八人に一億円ずつ報酬を払うと四十八億円必要。どうして四十八人分必要かは、……まあほとんど田中さんはご存知だとは思います」


 僕は疑問に思っていることに対し、ほぼ満足のいく答えを得たのだが、念のために聞く。


「それでは、五百億円かかってもよいですので、危険のないように調査して欲しいんですが」


 これに対して、青木さんもリサも、一緒に聞いていた松井さんも驚いていた。


「「「五百億円?」」」


「はい、そのぐらいのお金ならありますので、安全第一でお願いします。」


 僕の発言に三人ともしばらく固まったままだった。……五百億円ぐらいなら、普通に出せるよ。足りなければもっと。


 どうやら僕の金銭感覚は一般常識の範囲外となったようだ。結局、五百億円あれば、今回の件については余裕ということで、調査してもらうことになった。リサは、五百億……五百億円としばらく呟いていたのだった。

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