<20> 準備できるまでリサと一緒に日本に転移
全く、リサの分の防御用の帽子と防弾チョッキを忘れるなんて。僕はなんて間抜けなんだ。リサの安全を考えて僕は彼女に言った。
「リサ、次に会う時はリサの分の帽子と防弾チョッキができた時にしたい。ちょっと準備できるまで待っててね。」
「それなら、私を日本に連れて行ってくれない?太郎が私に触っていたら一緒に転移するんじゃないの?」
その発想はなかった。早速実験してみよう。リサと僕が……抱き合うのか?そうなのか?うん。転移のためだ。決して変なことを考えているわけではないんだよ。でも、ほら、転移するならちゃんとお互いに密着してないと、転移できないかもしれないしね。
「い……いい一緒に転移するには、密着しないといけないね。抱き合うような感じになるけどいいかな?」
僕は早口で言った。やましい気持ちはある。やましい気持ちしかないと言っても過言ではない。もう変な汗は出るし、顔が赤い。恥ずかしい。だって、本当は手をつないているだけで転移できるはずだから。
「し、しょうがないわよ。一緒に転移するんだから抱き合うような感じになるのは、しょうがないよね」
なぜか、リサも早口になっている。お互いに顔が赤くなっている。とにかくリサを抱きしめ、おしっこをする。おむつを穿いているから大丈夫。すると、日本に転移した。リサも一緒だ。
「成功したね」
「太郎、成功すると思ってたわ。でも、どうして転移するのにすぐ転移できる時もあれば、転移に時間がかかる時もあるの?」
リサには、おしっこをして転移してるなんて説明してない。だって恥ずかしいから。だから、今はまだ溜まってないからと説明している。溜まってないって何が?おしっこが。言えるかぁ!
だから、リサには、特殊能力発動のための魔素がまだ足りない時には転移できないとか、よくわからない説明をしてごまかした。
「よくわからないけど、私に転移魔法が使えるわけではないから、まあ、いいわ」
納得してはいないが、追及するのをやめてくれた。助かった。
「久々の日本ね。昔とはずいぶん違っているのね」
「そうだね。特に携帯電話なんか以前とは違っていると思うよ」
と言った直後、携帯電話が鳴った。青木探偵事務所からだ。電話に出ると松井さんだった。元気に働いてるかな。
「はい、田中です」
「田中さん、松井です。実は大変なことが分かったんですが、いつ来れますか?」
「へ?もうわかったの?まだ、あまり時間が経っていないと思うんだけど」
「そのことなんですが、これ以上調査を続けると私たちの命にかかわるので、調査は一旦中断しています」
何か穏やかではない様子だ。リサが心配そうに見ている。
「今から行きます。前に説明した異世界の彼女も来ているので、一緒に行きますね」
僕は、十五年前の事件について調査を依頼したことをリサに話しながら、青木探偵事務所に向かったのだった。




