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<16> 僕は殺されるかもしれない

 独自の魔法の開発と、新しい数学の知識を公表した。独自の魔法に関しては、自分以外に無詠唱が可能な可能性を持つ人がいないため、無詠唱で開発した魔法を、詠唱化するという研究も開始した。魔力の動きを声に変換し、それに近い言葉に変換する。数多くの詠唱のパターンと魔力の動きから逆算して、詠唱化する作業は、時間がかかるものの、試行錯誤すれば成功する。


 どのぐらい試行錯誤するかというと、一つの魔法を分割し、部分ごとに再現して、最後に一つの魔法にまとめるのに、最低でも百回は試す必要がある。僕は面白くなって時間も忘れて没頭した。


「pbダアpウラbンダ̪ɟ」


 失敗、ほとんど成功だけど、もうちょっと魔力の流れが速くなる発音を選ばないとダメだな。


「pbダアtワラbンダ̪ɟ」


 失敗、逆に早すぎてもだめなんだよな。


 などと、発音した時の体の中を流れる魔力の動きを確認しながら、何度も試す。ラケルやリサには僕が苦労しているように見えるらしいが、僕が面白がってやってるだけだ。


 既に開発に成功して、実用化された魔法が二つある。


 一つ目は睡眠魔法で、子供を眠らせるのに有効。人体に無害な魔法である。


 もう一つは、麻酔魔法。痛み止めの魔法で、例えば戦場では回復魔法をかける前に、体に刺さった矢などを取り除く作業がある。しかし矢を抜く時の痛みは恐ろしいものらしい。今まで麻酔魔法は夢の魔法だったが、この魔法により助かる命が増えるそうだ。


 次に開発中の魔法は、人体再生魔法。欠損部位を再生する。腕がない人に新しい腕を。目を失った人には目を。そんな夢のような魔法を開発中であるが、これが非常に難しい。再生する部位ごとに詠唱する発音が違うのだ。だから、全ての部位の再生を詠唱化することは不可能だ。何百年かかるかわからない。無詠唱でないと難しいのだ。


 話は変わるが、以前から僕は気をつけていたことがある。人から恨まれないようにして、殺されるのを避けることだ。でも、不正の発覚で牢屋に入れられた人がおり、これからもどんな不正が発覚するかわからない。僕が伝えた知識が起因なので、少なくない人に恨まれる可能性がある。


僕はなぜか、今のままでは殺されるという予感がする。僕の存在は少しずつルカナンで有名になってきている。魔法はかなり使えるようになったものの僕がひとりの時を数人で襲えば暗殺成功となるに違いない。この件をリサとラケルに相談し、リサがジンを呼んだ。ジンは言った。


『殺されるかもな。次は自分の番かもしれないと恐れている人たちが何をしてくるかわからない。ラケルに悪用する意思がない知識も、悪人たちにとっては都合が悪い。ただし、太郎が決めたことなんだから自分のことは自分で責任とらなくっちゃ』


「僕が?決めたこと?」


『おいおい、忘れたとは言わせないぜ。お前がリサに言ったんだぞ。』


僕は、リサとの会話を思い出した。確かこういう会話だった。「リサ、僕はラケルを信用して僕の知識を教える。ラケルは僕を信用して魔法を覚える。それで対等だと思うんだけど、どうだろう。」ラケルを信用して僕の知識を教える。って言ってるな。


「わかったよ。ジンの言う通りだ。僕のことは僕が責任を持たないとね。」


 ジンは、僕の言った事に満足したようで、僕がそういうと『さすがは太郎。理解が早くて助かる』と言って行ってしまった。僕は、自分を守る方法を考えないといけない。僕の魔法だったら殺されないようにすることが可能かも。幸いにして攻撃魔法、回復魔法、防御魔法ぐらいは使える。この世界で優秀な魔法使いのラケルに教えてもらったんだから間違いない。そうすると、問題は即死するような状況を防ぐこと。即死はどうにもならない。ヘルメットや防弾チョッキは必要だな。


 でも、ヘルメットを常時つけているのって恥ずかしい。頭にヘルメットに見えない防弾の帽子をかぶるか。地球の科学力と財力を駆使して作ってもらおう。大田副社長の人脈を使えばなんでもできる。そこまで考えをまとめたところで、少し落ち着いてきた。


「ラケル、僕もう帰る。しばらく来れないかもしれないが、よろしく頼む。」


 ラケルにそう言うと、リサは僕の横に立ってラケルに「またね」と言った。ラケルとリサは少しずつ仲良くなっているようだ。僕が教えた知識は、ラケルとリサで協力して理解しようとしていた。王宮を出てからの帰り道で僕はリサに言った。


「リサ、僕はなるべくリサと一緒にいたほうが良いと思うんだ。一人になったところを襲われる可能性が高い。裏を返せば、リサが一緒にいれば襲われる可能性が低くなる。万が一の時は、僕がリサを守る。こんな時に相手に危険が及ぶからって恋人を遠ざけるようなことをする展開の漫画とかドラマが多いけど、リサはどうしたらいいと思う?」


「太郎。私の答えは決まっている。私は太郎と離れて生きるより、太郎と一緒にいて殺されるほうを選ぶ。太郎が私を気遣って私から離れて勝手に死んだら許さない。……ってなんか、恥ずかしいけど、本心だからね」


 そう言ってリサは僕の手を握った。


「ありがとう。このパターンで、相手を遠ざけるストーリ展開、僕嫌いなんだよね」


「私も100%同意見だわ」


 そして、僕とリサはできるだけ近くにいると約束したのだった。それから、リサと僕は死なないための対策を立てるため、いろいろ話し合ったのだった。

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