獣人奴隷との出会い
2人目のヒロイン登場です!
※2020年5月9日 文の書き直し終了
俺とアストは、奴隷を買いに奴隷商へと向かっていた。
理由は簡単で、二人して料理が出来ないからだ。
「アスト。この世界には、何で奴隷が存在するんだ」
「簡単なことです。借金が返せなくなり娘や自分を売る、スラムから連れられた者が売られる、魔族や獣人などが売られるなど、多くの場合があります」
「仕方がない、んだよな」
「ええ、他にも犯罪などを犯した者も奴隷にされる場合があります」
ラノベとかで読むには羨ましいと思うこともあるが、実際には見てるのも辛い。時々見かけるが、大抵酷い扱いを受けている。
そうこうしている間に、奴隷商へと着いた。
何処と無く嫌な雰囲気が出ていた。この中で売られているんだな……。見栄えを良くしようと、外装だけは綺麗にされていた。
中には、小太りで中年のおっさんが一人いた。格好は、妙に装飾の多い変わった服を着ている。頭は……薄毛が悩みらしい。
「何か御用ですかな? ここは街の端くれにあるなんの変哲もない奴隷商ですよ」
「ああ、その奴隷商に用があって。すまないが、奴隷を一人売ってくれないか」
「これは失礼、お客様でしたか。して、条件などはありますかな?」
「料理などの家事が出来るのを頼む。出来れば女で」
「左様ですか。では、少々お待ちを………おい! 家事が出来る女を連れてこい!」
奴隷商のおっさんが店の奥を怒鳴ると、奥から奴隷の女を三人連れた同じく奴隷商の男が出てきた。
連れてこられた奴隷達は、痩せ気味で、髪などはボサボサしている。それに、今にも人を殺めそうな雰囲気だ。
「家事が出来る女は、これで全てです」
一人目は、20歳くらいで金髪の女だった。
二人目は、30歳くらいで茶髪。
三人目は、同じく30歳くらいの赤髪だった。
付け加えると、全員俺を睨み付けている。
「この3人、か……」
「お気に召しませんか?」
「まあ、いつ刺されるか分からなそうだから」
今なら刺されても問題ないが、気持ち的に嫌だ。誰だって、刺されて嬉しくはないと思う。
この奴隷達を連れて来たのとは別の部屋にも、奴隷達がいるのがチラッと見えた。しかし、隔離されているようにも見える。
「あっちは何ですか?」
「あちらは欠陥奴隷でございます。簡単に説明すると、酷い怪我や病気を患っている者達ですな」
隔離されているのは、病気の奴隷達らしい。他にも精神に異常がある者も隔離されると言う。
怪我などは、消毒や包帯などの最低限のことはするらしい。しかし、腕や脚を失った者はどうしようもないらしい。
「一応、中を見せてもらっても?」
「こちらは、別にかまいませんが……あまりオススメはしませんよ」
許可を得ると、奥へと進んだ。
換気はされているが酷い匂いだ。血生臭いような、何かが腐敗しているような。
中は酷い光景だった。ほとんどの者は、目に光はなく、虚ろな目をしている。咳き込んでいる者、酷いと両手両足が無い者もいた。
「これは酷いな……」
「そうでしょう。これを買う人なんて、治癒魔法のレベルが7くらいないと買いませんよ」
俺は、その中で一人の女の子を見つけた。銀髪で、頭に狐の耳がある10歳くらいの少女。だが、その子の右腕と両足首が切断されていた。
「この子は?」
「その娘は、魔王軍に襲われた村の生き残りなんですよ。なんでも、家族や村の皆を全員殺されて、死に物狂いでこの街の近くに逃げて来たのですが、結局は奴隷落ちしたらしいです」
「少し話をしても?」
「ええ、別に構いませんよ」
俺は、檻の中に入り、話しかけてみた。やはり、この子の目も光を喪って絶望したような感じだ。
「君の名前は?」
「……」
「俺はダイキって言うんだ。つい最近、冒険者になったんだ」
そう言うと、彼女は肩をビクッと震わせて俺を見てきた。おそらく、買われれば盾役にでも使われると思ったのだろう。
「君に聞きたい事がある。もしも、君の右腕と両足首が元に戻ったら、家事はできる?」
一瞬、なにを言っているんだ? というような顔をすると、今度は
返事をしてくれた。小さな声だがしっかりと俺に届いた。
「できます……」
「分かった」
それだけ言い微笑むと、アストにも聞いた。
さすがに俺の一存で決めると言うのもな。
「アスト。この子でもいいか?」
「私は、マスターがいいと思ったなら誰でも良いですよ」
そう言うと、アストも笑顔で了承してくれた。
本音を言うと、ここで拒否されたらどうしようかと思った。
「すみません。この子を買おうと思うのですが、いくらですか?」
「は、はぁ……でも、良いのですか? この者は欠陥奴隷ですが」
「欠陥があるなら治せばいい話だ」
「……承りました。この娘は、それでも処女で、上玉なので、値引きして金貨10枚ですな」
「分かった」
俺はそう言うと、奴隷商のおっさんに金貨を渡した。
しかし、女の子を金で買うか……普通に考えると犯罪だろう、これ。
「一応言うが、後から無しとか余計に要求しようものなら」
「いえ、それは絶対にありませんな。購入された奴隷をどうしようが、購入した者の自由なので」
奴隷商人は、そう言うと契約書らしき物を持ってきた。
簡単に目を通すと、どうしたらいいかを聞いた。
「ここに名前を書き、この瓶に血を数滴入れてください」
そう言われたので、契約書に名前を書き、指に針をチクッと刺して血を数滴入れた。ちょっと痛かったのは内緒だ。
「はい。では、後はこれを奴隷の肌にっと……よし」
奴隷商のおっさんは、血と謎の液体が混ざった物で、少女の肌に文字を書いていった。使用している文字は、この世界に古くからある特殊な文字らしく、使える者は限られているらしい。
「あとは、詠唱を唱えたら奴隷との契約は完了です」
そう言うと、おっさんは奴隷魔法を詠唱した。詠唱していくと徐々に文字が消えていった。
「これで契約出来た筈です。ステータスの確認を」
そう言われると、称号のところに目を向けた。
【称号】
・勇者 ・適正者 ・神の恩恵 ・魔神 ・剣神 ・龍神
・人間を辞めし者 ・ホムンクルスを作りし者
・アストの主 ・魔物の天敵 ・残虐の王 ・エミリの主人
エミリっていうのか。
結構可愛い名前だ。元の世界で名付けたらイタいけども。
「ちゃんとなっているみたいです」
「わたしもです………」
「これで、今日からこの奴隷は貴方の物です」
「ああ、ありがとう。さてと、ここでこの子を治しても?」
「ええ、構いませんよ。我々は、所有者のいる奴隷に、手出しは出来ないので」
そう言われたので、初めての治癒魔法を使ってみようと思ったのだが、治癒魔法が中々見つからない。代わりに、【再生魔法】というのがあった。
「よく分からんが、『再生魔法』」
使用すると、エミリの右腕と両足首は再生していった。
再生していく様子は、ちょっとしたホラーだったが。
「いやはや、凄いですな……」
「そんなことない」
「……」
エミリは、とても驚いていた。
まあ、いきなり腕や足が生えて元通りになったから仕方ない。いや、ショッキングな光景に恐がってるのかもしれない。俺だったら怖いもん。
「ありがとうございます。ご主人様……」
「ああ、どういたしまして」
幸い、後者では無かったようだ。たくましい子だな。
その後、俺達は奴隷商を出た。次は、エミリの服を買うために、服屋に向かうことになった。
「アスト。この辺りに服屋はあるか?」
「ええ、ありますよ」
俺は【マップ】を使い、服屋のある場所へときた。
「よし、じゃあアスト。あと頼めるか?」
「はい、マスター」
「あの、ご主人様……ここは?」
「服屋だ。お前の服を買いにきた」
「そ、そんな……わたしなんかに、そんな高価な物は……」
本当にこういうやり取りがあるんだな。面倒なので、ゴリ押しさせてもらうけどな。こう言うのは、先に折れた方の負けだ。
「いいから、任せろ。さすがに、その格好で歩かれる方が迷惑だから」
「は、はい……」
「じゃあ、アスト。これで」
そう言うと、アストに金貨を100枚程持たせた。
これだけあれば十分に買えるだろう。
「アストも自分の服とか買っていいからな」
「分かりました。マスター」
「こ、こんなに……」
エミリは凄い驚いていた。
まあ、金貨100枚は普通に大金だし仕方ないか。
「じゃあ俺は、防具を買ってくるから。買い終わったらこの店の前で待っててくれ。あと先に風呂屋にでも連れてってやってくれ」
この世界にも風呂があるらしい。ただし、多くの人が一緒に入る公衆浴場だ。奴隷でも、金さえ払えば入れるらしいので、アストに任せた。
「分かりました。気を付けて行ってきてくださいね、マスター」
「はい……ご主人様」
こうして、アスト達と一旦別れると、防具を買いに向かった。