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再開

 あの後、俺はワープを使い出来る限り遠くの場所へと来た。結果、何処へ向かうかも分からず、森の中をさ迷っていた。


「そうだよ。始めっからこうしてれば良かったんだ。わざわざ街に残って冒険者なんかになる必要なんて……なんで俺は街に残ったんだ?」


 何か重要な事を忘れている気がする。

 あ、ロインさんから借りたお金……。


「だけどもう二度と会うこともないだろうな……金はみんなが困らないように全財産置いてきたし」

「二度と会うこともないだって? それは違うな。ダイキ殿よ」

「……え? なんでロインさんが此処にいるですか。まさか幽霊……」


 後ろから声を掛けられ、振り向いた。すると、後ろにはロインさんか立っていた。


「幽霊だなんて失礼だな。まあ、それは別にいいとして、ダイキ殿と話しがしたいんだが時間はあるかな?」

「ええ。聞くまでもないですけど……」


 俺とロインさんは、近くの木の下に座り、お互いに今までの出来事を話し始めた。

 ロインさんは騎士団を辞めたあと、実家の手伝いをしていたらしい。幸い農家だったので、すぐに昔のことを思い出して頑張っていたという。


「農家だったなんて意外ですね。てっきり、どっかの貴族かと思ってましたよ」

「はははっ。それはお世辞でも嬉しいな。だが、俺には貴族なんかよりこっちのほうが正にあってると思うぞ? で、そっちはどうだったんだ」


 俺はアスト達と出会ったことや魔王を倒したことなどを嘘偽りなく話した。ただし、家を出る少し前まで……。


「そうか。そっちはそっちで楽しんでいるんだな。てっきり、ギルドマスターにこき使われてるかと思っていたぞ!」

「微妙にあってるんですけどね。いくらSランクだからって、新人にデススライムとかいう四天王を倒せとか、身体的に平気でも精神的に疲れますよ……」

「あの人は昔からああだからな。俺が冒険者だった時なんて大変だったよ……」

「え。ロインさんって、冒険者だったんですか?」

「まあな。こう見えてもAランク冒険者だったんだよ。国王から騎士団に来ないか誘われて入ったんだ」


 だからあの時、冒険者ギルドへ行くように言ったんだな。


「それで、お前はなんでこんな所まで来てるんだ? 街からはとんでもなく遠いぞ」

「そ、それは……」

「言いたいと思ったことは素直に言ってみろ。男は弱音を吐くな、 だなんて言ったりはしない」

「ありがとうございます……実は……」


 俺はロインさんに仲間が離れて行くのを恐れたことを話した。この人のことは信用できると思ったから、やっぱり初めの印象は大切なんだな。


「そうか……まあ、俺から言えるようなことは一つだな。逃げたかったら逃げろ、それが悔しいと思うなら立ち向かってみろ! お前が、自分から離れて暗い気持ちになってるのなら少なからず悔しいと思っている筈だからな。仲間を信用できないというなら、相手にまず自分を信用させてみろ、そうすれば自然と信用できるようになる筈だ」

「信用できないなら、まず相手に信用させればいいか……」

「それが駄目なら諦めたって別にいい。感情を持つ者なら誰しも出来ないことの一つくらいあるからな」


 そうか。俺は逃げたんだな……確かに、何もしないで逃げたなんて自分に悔しいな。


「俺が言えるのはこのくらいだな。じゃあ、俺は村に戻って家の手伝いをしてくるよ。まだ、気持ちの整理が出来ないかもしれないが地道に頑張ってみろ!」

「はい! ありがとうございましたロインさん!」


 まだ、整理が出来ないってのは確かだな。本当にロインさんには救わればかりだな……あ、またお金返せなかった……。


「しばらくここで考えてみるかな……」


 そう言って、木に寄りかかり考え始めた……。

     ・

     ・

     ・

     ・

「……輝、大……、大輝おきなさい!」


 あれ、たしかあの後……そうか、考えてる内に寝てたんだな……でも、こんな所に誰が?


「お! 起きたみたいだな流石は母さんだ!」


「あたり前よ、息子を起こすのは母親か幼なじみの女の子って相場が決まってますからね!」


 暗くてよく見えないな……でも、この声どこかで聞いた覚えが……


「大輝よ悪いんだが魔法? とやらでこの辺りを照らしてくれないか?」


「あ、ああ、分かった……」


 そう言って光属性の魔法を使い明るくすると目の前にある人が二人立っていた……俺は二人を見ると自然と涙を流していた……


「そうか……ついに俺は死んだんだな……でも、父さんと母さんに会えるなんて死んでも後悔はないな……」


「大輝……ここはあの世じゃないぞ……」


「もう、寝ぼけてないの!」


「ああ……あの世では死んだ人どうしでも触れ合えるんだな……」


「「駄目だなこりゃ……」」


 死んだ後にようやく本当の幸せを手に入れられるなんてな……ん? あの世? でも、ここって俺が木に寄りかかった……


「ようやく頭が回り始めたか……寝起きは母さんにそっくりだな……」


「なに言ってるのよ寝起きはあなた似じゃないですか……」


「それは二人に似てるってことじゃないのか……」


「「そうだな(ね)!」」


 父さんと母さんは本当にそっくりだな……でも、だからこそお似合いって事か……あれ? 父さんと母さん?


「て、なんで二人がいるんだ!?」


「やっとか……それは母さんに説明してもらおう……ほら、父さんはあれだから……」


「脳筋ってことよね……まあ、いいわ! 親子の感動的な対面はこの辺りにして「「どこに感動的な場面が……」」もう! 別にいいじゃない!」


 ハモったってことは腐っても親子ってことか……


「まず、お母さん達がここにいるのは大輝の彼女と言っていたリエさんからのお願いよ」


「ちょっと待った……誰が何だって?」


「だからリエさんがよ、まったく大輝もすみにおけないわねー! 神様が彼女だなんて!」


「まず言おう……あいつは彼女とかじゃないから。それに俺に彼女なんて居ないから……あれ? 言ってて涙出てきた……」


 ていうか、あの野郎……母さんになんて事を言ってやがるんだ……


「そうなの? もう……いい年して彼女の一人もいないなんてお母さんは悲しいわよー」


「母さん……息子弄りはそのへんにして話してやろうじゃないか……くくっ」


「俺のフォローするつもりで俺に止めを刺したからからね父さん!? 自分は結婚してるからって!」


 なんか死ぬ前も親馬鹿全快だった気がするんだが……人間って思い出したくないことは忘れるって本当だったんだな……


「それもそうね、それじゃあ先ずはお母さんとお父さんが何でここに居るかよね?」


「ああ……何であっちで死んだ筈の父さんと母さんがこの世界に?」


 幽霊だって言うなら納得出来る……だが二人には触れた、つまり幽霊という訳ではないらしいな。


「お母さんとお父さんはリエさんに頼まれて仮の身体を使ってこの世界にやって来たのよ、身体は前世とほぼ同じにしてあるらしいのよ」


「そうなのか……で、なんでリエが母さん達に?」


「それは貴方も薄々分かってる筈よね? お母さん達はせめて私達が居ないかわりに出来るだけ幸せになってほしいと思っているの……だから、大輝も駄々こねてないで大人しくお家に帰りなさい!」


「あれー!? なんか急に説明が乱暴になったぞー!?」


 駄々こねてないでって……俺は子供か……


「子供ね、だって私達は親子ですもの」


「ごもっとも……まあ、母さんの思いは伝わったよ。でも、不安なんだよ……母さん達みたくいつか皆が居なくなっちゃうんじゃないかって……」


「そうね……でも、大輝は重要な事を忘れているわ……」


 重要な事を忘れているだって? いったい何を……


「貴方は神様になったんだからそのスキル作成? っていうのであの世にこれるようにすればいいじゃない? 相手が去っていくなら必死に相手を引き留めればいいじゃない?」


「そっか……もう問題は解決してたんだな……本当に俺はドジだな……こんな簡単な事も気づかないなんて……」


「そうよー! 大輝は小さい頃から走っては転んでばかりで何時も私達に泣きついてきてたじゃない!」


「そ、それは昔のことだろ!? 今はそんな事はない……筈……」


 はあ……なんかあんなに悩んでたのに拍子抜けだな……答えはすぐ傍にあったのにな。


「それじゃあ三人一緒に帰りましょうか! 大輝も帰ったらちゃんとリエさん達に謝るのよ!」


「こりゃあ大輝は父さんに似て奥さんの尻にしかれるな! あれ……なんでだ? 言ってて情けなくなってきた……」


「ああ……ありがとうな父さんと母さん……」


 両親と話をするってこんなに心が暖まるものなんだな……ずっと忘れていた……


「それじゃあ母さんはリエさん達にちゃんと挨拶をしなくちゃ! 息子がお世話になってる子達なんですから!」


「父さんは許さんぞ大輝! 沢山の女の子を囲おうだなんて! 父さんだってこの世界だったら……」


「へえ……なんですって大輔さん?」


「違うんだ母さん!? 父さんは母さん一筋だよ!?」


「それでいいのよ? 貴方は私だけの物なんですから……ふふふ」


 母さんってメンヘラ気質だったんだな……知りたくなかった……


「大輔よ……ああいう女性にだけは気をつけるんだぞ……浮気をしたときなんて本気で背中に包丁が生えるかと思うんだからな……」


「大輔さんには後でしっかり夜の調……教育をしなくちゃいけませんね……」


 メンヘラに加えてヤンデレとドSか……親のこんなこと本当に知りたくなかったな……


「嫌だ!? ロウソクだけは勘弁してくれ!? 大輝よ男なら分かるよな? つい他の女性に手を出してしまうってことを!?」


「ごめん父さん……浮気をするような相手もいないんだ……」


「あ……すまなかったな……大丈夫だ大輝よ、女なんて星の数ほどいるんだから」


「父さん……それはモテない人へ対するラストアタックだ……」


 なんか色々と気が楽になったな……さて、そろそろ……


「父さんと母さんは何時までこっちに居れるんだ?」


「ああ、そうね! たしか冥界の王っていう人からの話だと大輝が亡くなるまでは居れるそうよ」


「孫の顔を見るまで死んでたまるか! あ、もう死んでたな!」


「そうか……死んでからも迷惑をかけるね……」


 でも、これを嬉しく思ってる自分がいるんだから不思議だよな……


「じゃあ、帰りましょうね! 大輝のお嫁さん候補はどんな娘達なんでしょうか!」


「くれぐれも母さんみたいな娘はやめておくん……ぐへ!?」


 またやってるよ……まあ、大変なのはこれからなんだよな。どうやってアスト達に許してもらおうか……下手したら一生口を聞いてもらえないかもな。でも、逃げたかったら逃げていいんだ……でも、それじゃあ一生悔しいと思うことになる。だったら俺は何度でも立ち向かってみようじゃないか!

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