依頼の報酬と4人の想い
ギルドの前に来たのはいいのだが、明らかに酒を飲んで騒いでるんだよな……あれから1ヵ月だ。いくらなんでも長すぎだろう、受付さんとかは仕事をしてるっぽいけど、冒険者達は全員酒を飲んで騒いでるみたいだ。
「仕方ないのか、これは。こんにちはーって……」
「オェー……飲みすぎで吐き気と頭痛が半端じゃねぇ……だれか水を持ってきてくれ」
あれが冒険者ギルドのギルドマスターだと思うと、冒険者ギルドの未来が心配になってくるな……しかも、周りはまだ騒いでるし。
「ライオさん、あんた何をやってるんだ」
「おぉ……これはこれは、我が国の英雄様ではないです、か……オェー」
もう、帰ろうか。はぁ、いちおう回復魔法でも掛けとこう。
話が出来るかもしれないし……。
「さて、これで調子は良くなったよな。ギルドマスターさん」
「おお、ありがとな! じゃあ、奥で話をするか」
「始めからそのつもりだ……」
だれが好き好んで、酒臭いギルドにずっといるだろうか。
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「さてと、まずは無事に帰ってきてくれて感謝するダイキ」
「畏まっても威厳も何にも感じないぞ……あれからずっと飲んでたのか」
「当たり前だろ! 世界を脅かしている魔王の一人が打ち倒されたんだからな! みんな騒いでるのは当たり前だ、今度祭りもあるみたいだしな!」
祭りってことは、もっと飲むのか。というか、魔王が複数いるって知ってたのか……。
「それは置いといて、話があるんじゃないのか」
「ああ、そうだったな! 今回の依頼の報酬についてだ。今回の魔王軍の討伐で金貨10万枚、魔物達の毛皮等で金貨5万枚、合計で金貨15万枚だ!」
「嗚呼、有り難く貰っておく」
王様から金貨100万枚貰って、ギルドの報酬で15万枚か……マジで金持ちになった。そこらの貴族よりも多分ある筈だ。
「そう言えば、城からギルドに連絡が来たぞ? なんでも式典をやるそうだな。しかも、重大発表があるとか?」
「あ、ああ……そんなこともあるみたいだな」
この様子だと神のことについては言ってないようだ。まあ、サプライズって事で。その方が驚いた時の顔が凄そうだ……。
「ん、どうしたニヤニヤして? 変も酒でも飲んだか?」
「あんたと一緒にするな。ただ式典で、皆が驚く顔を見るのが楽しみでな」
「驚くって、お前は重大発表とやらの内容を知っているのか?」
「まあ、まだ内緒だけどな」
あ、そうだ。金も沢山手に入ったし、アスト達にお土産でも買っていくか。
「じゃあ、俺は寄り道をしてくから帰る」
「おう、じゃあな英雄さん」
「英雄は止めてくれ……」
こうして、俺はギルドから出てアスト達にお土産を買い、家へと帰った。
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家に入ると、エミリが玄関で迎えてくれた。
「ただいま、土産を買ってきたからアスト達を呼んできてくれないか」
「分かりました、すぐに呼んできますね」
「別に急がなくても良いからな。俺はリビングに行ってるから」
リビングに着くと、既に全員揃っていた。
この短時間で全員呼んできたのか……。
「それは違うよ、ちょうど女子だけの話をしてたんだー」
「リエはまだしも、マリアは女子って定義なのか?」
「いちおう女性の身体ですから、女子であってますわ」
まあ、誰も気にしてなさそうだし、別にいいけど……。
「で、お土産って何かな。ダイキくん」
「近い近い、ちゃんと全員分買ってきたから大丈夫だ、ほらこれ」
そう言って、ギルドの帰りに買ったアクセサリーを4人に渡した。アストはエメラルドの埋め込まれてるネックレス、エミリはアメジストのブレスレット、リエはサファイアの髪飾り、マリアにはトパーズのイヤリングを買ってきた。
「マスター、その……ありがとうございます……」
「私なんかの為にありがとうございます! ダイキ様!」
「ダイキく~ん、ありがとうねー!」
「ダイキ様、ありがとうございますわ」
「喜んで貰えて何よりだ。それと、その宝石には魔法を一つだけ保存して使うことが出来るらしいから、ワープの魔法を保存しておいた」
これで移動とかも便利になる、それに危険な時にすぐに逃げれるしな。いざと云うときの為に、準備は怠らないようにしないと。
「さてと、そろそろ日が暮れるし夕飯にするか」
「「「はい! ダイキ様(マスター)!」」」
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マスターが冒険者ギルドに行ってる間に、今まで出来なかった自己紹介をすることになりました。
「じゃあ、改めて。創造神ことリエだよ。よろしくねー!」
「ダイキ様のメイドであり、奴隷のエミリです。これからよろしくお願いします」
「魔導書のマリアですわ、これからよろしくですわ」
「ホムンクルスのアストです、よろしくお願いします」
その後、自分の特徴やマスターとの出会いなどを話していると、リエさんがとてつもない爆弾を投下しました……。
「この際だから、皆のダイキくんへの想いを言いあおうか?」
「「「なんですってー!」」」
「ボクは勿論ダイキくんの事が、一人の男性として大好きです!!」
「「「えぇー!」」」
薄々感ずいていましたけど、かなりのインパクトですねこれ……。
「わたくしもダイキ様の事は異性として好きですわ!」
「わ、わたしだってダイキ様のことは皆さんに負けないくらい好きです!」
まさかのマリアさんまで……ここは私も勢いで言った方がいいのでしょうか。
「で、アストちゃんはどうなのかなー?」
「私もマスターの事が……そ、その……好きです……」
「これで、分かってたけど、皆の気持ちを言いあえたねー!」
そうでした……リエさんは考えを読めるんでしたね。
「まあ、この世界は一夫多妻制だから大丈夫だけどねー!」
「でも、負けませんよ!」
「そうですわね、わたくしだってダイキ様の事が好きですから!」
「マスターへの気持ちなら私も負けてませんからね!」
なんか……とても胸がスッキリしました。
何時も不安のようなモヤモヤした気持ちがあったので……。
「じゃあ、ダイキくんの好きなところを言ってみようかー! まずは、エミリちゃんから!」
「わたしですか!? わ、わたしは、私達が元気でいてほしいと願う優しいところですかね」
「次は、わたくしですわね。わたくしは、誰へでも等しく接せられる心の広さですわね」
「ボクは自分が辛くても、無理してでも笑って周りを安心させようとしてるところかな」
私のマスターの好きなところ……恥ずかしいけどもこれですね……。
「わ、私はマスターの全部が好きです……」
「ひゃー! アストちゃんは大胆だねー!」
「わたしだって、ダイキ様の全てが好きです!」
「わたくしだってそうですわ!」
「わ、私はマスターの事を愛してますから!」
自分で言った筈なのにとっても顔が熱くなりました……しかも、リエさんからの弄りは止めるどころかエスカレートしていってますし……。
「そういえば、リエさんが初めてマスターと会ったのは、やっぱりあっちの世界でなんですか?」
「違うよー、見つけたのはあっちを偶然覗いた時に見つけて、それから毎日のように神界から覗いてたけど、顔を会わせたのはこの間だよ?」
そんなこんなで、マスターが帰ってくるまで話しは続きました。
リエさんは、マスターの小さい時から陰ながら見守ってきたって言ってましたが、下手したらストーカーですよね……。




