閑話・リエの気持ち
彼を見つけたのは偶然だった。
その日、ボクは胸騒ぎがして下界を覗いた。覗いた先は、自動車事故の現場だった。原因は大型トラックの運転手が、飲酒運転をしたことだった。
もう一方の軽自動車は、建物と大型トラックに挟まれ潰されていた。車内には、家族と思われる大人二人と少年が一人乗っていた。
両親は亡くなってしまったが、少年は奇跡的に生きていた。だが、突然起きた事故に少年は呆然としていた。
『お父さん、お腹に棒がささってるよ? ねぇ、どうしたの? だいじょうぶ? なんで動かないの……?』
『お母さん? なんでお顔が半分ないの? 大丈夫なの? 返事してよ……うぅ……』
ボクは、その光景を見ていられなくなった。だけど、同時に少年のその後を見届けようと決心した。
少年の人生はとても酷かった。引き取られた家族には、毎日のように暴力を奮われ、学校では虐めの対象になり、仲の良かった友達には何度も裏切られていた。
少年はその世界に絶望してしまった。何度も泣いていた。何度も自殺しようとしていた。だけど、出来なかった……泣けば泣く程、心が苦しみ……自殺しようとする度に、事故の光景を思いだし体が震えていた。
彼は高校生になり他県に進学した。だけど、何も変わらなかった……暴力などは受けなくても精神的な虐めは続けられた。
ある時、別の世界で勇者召喚の儀式が行われる事になった。そして、彼もその対象となった。ボクは、彼が再び元気を取り戻す為のチャンスだと思った。
そして、あるものを試した。それは神でさえ適正の者は居らず。たった一人しか適正者は現れないと言われている物だ。
ボクは可能性を信じて彼が異世界に行く途中に試した。そして、彼は適正者だった。その時、とても嬉しかった、決意した……彼にはその世界で幸せになってもらおうと。
初めて彼と話をした。その時に分かった……彼は人を信頼をすることは出来ても、信用することは出来なくなっていたことを。
だから、ボクは決めた。彼には城からわざと追い出されて、自由に暮らしてもらおうと。そして旅立った……だけど、ボクはなぜか悲しくなった。
神であるボクはすぐに理解した……これはきっと恋なんだと。何年も見守っていた彼が幸せになれると思って、自分の想いに歯止めが効かなくなった。
何故、ボクはずっと彼を見守っていたのか。なぜ幸せになってほしいのか……すべて理解した。その時、ちょうど良いものがあった! 神の仕事が忙しくて貯まっていた休暇だ!
ボクは全力で残っていた仕事を片付けた。1日もかからなかった。そして、彼と二度話をした……とても胸がいっぱいになった。ウザがられてしまったのは少し残念だけど。それでも、充分だった。
____そして、沢山の思いを秘めながら彼のいる世界へと降りた。
※2020年5月24日 文の書き直し終了




