表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/112

また増えたよ……

※2020年5月19日 文の書き直し終了

 魔王が襲来して一ヵ月が経った。

 俺は、その間ギルドに行かず、屋敷にあった図書室でアストに手伝ってもらいながら本を読み漁っていた。


「ふぅ……やっと半分か。もう、数千冊くらいは読んだよな。前の持ち主はどれだけ本が好きだったんだ」

「マスター。あっちの棚からも持ってきますね」

「あぁ、ありがとう。俺も面白そうな本を探してくるよ」


 さてと、そろそろ奥の方の本棚も見に行くか。

 これと、それと、あれも面白そうだ。ん? 鎖で縛られた本がある。よく分からない本は、アストに解説してもらおう。


「あ、探しましたよマスター。そちらから変な魔力を感じたので」

「それって、この本じゃないか。鎖で縛られてるくらいだし」

「ま、マスター。なんで、そんな厄介そうな代物を見つけてくるのですか……」


 危険な本なのか。見た感じでは、普通の本を鎖で縛ってるだけにしか見えない。そんなに危ないのだろうか、アストは……表情からして呆れている。


「で、何なんだ。アストの口調からして、危ない物っぽいけど」

「聞くよりも鑑定で調べた方が早いですよ、マスター……」

「それもそうか。どれどれ……んー」


 鑑定結果は以下の通りだった。


【魔導書 No,0】

歴史に名を残す伝説の魔導書の一つ。この一冊で国が一つ買えるほどの価値がある。中には伝説の賢者達が記した魔法が記載されている。


「……」

「マスター。変なのばかり見つけないでください。こっちが大変なんですから」

「なんかごめんな。リエに詳しく聞いてくる……」


 とても厄介な物だった。これ一つで国が手に入るって。

     ・

     ・

     ・

     ・

「はははっ! 君といるとボクは楽しいよ! まさか、そんな本まで見つけるなんて!」

「笑い事じゃないだろうに……下手したら、これを狙って国が敵に周りかねないんだから。俺が望んだ平和は何処に……」


 ていうか、この悪運は何なんだ。

 小説の主人公じゃあるまいし勘弁してくれよ。


「で、中はもう見たの? それって、結構いろんな事が載っているよ? たとえば、エルフ族の秘密とか」

「この世界は、エルフとかもいるんだな。てっきり、獣人族くらいだと思ってたよ」

「まっさかー! 天使族とか竜族とかいっぱいいるよ!」


 天使と竜、って……今更だけど、異世界だって事を実感するよな。

 1ヶ月くらい図書室に引きこもってた奴が言える筋じゃないが……。


「おやおや、ホームシックかな?」

「そんなんじゃない。第一、あっちの世界には待っててくれる家族なんていないから……親戚とかも俺がいなくなって今頃、喜んでるんじゃないか?」

「そうかもね……でも、こっちには君を待っててくれる家族がいるんだから、勝手に死んじゃ駄目だよ?」


 そうなんだよな……あっちの世界では絶対にありえない。

 アストとエミリ、それと……。


「ボクも居るからね! それに、神になったから、もし死んでも一度は神界に来なくちゃいけないから、ずっとボクと一緒に居れるよ!」

「ありがとうな……励ましてくれて」

「それくらいならいつでも良いよ! ほら、お姉さんが抱きしめてあげよう!」

「リエさん? いくら神とはいえ、抜け駆けは駄目ですよ? マスターもしっかり抵抗しなければ……」


 アストも俺の為に色々と手伝ってくれている……それに……。


「ダイキ様ー! お昼が出来ましたよー! 何処にいらっしゃるのですかー?」

「あ! エミリちゃん。こっちだよー! 助けてー、アストちゃんがボクを虐めるのー!」

「違いますからね? リエさんが抜け駆けをしようとしていまして」

「へぇー……そうですかぁ……」

「あ、あれ? エミリちゃん?」


 こんなに可愛い女の子達が……。


「ギャー! 助けてー! 死んじゃうからー!」

「アハハッ……アスト様、もう少し締めましょうか?」

「そうですね。エミリさん……ふふふ」


 可愛い女の子……いや、怖いの間違えか。


「マスター? マスターもリエさんみたくなりたいのですか?」

「い、いえ! 滅相もございません!」


 女の勘って怖いんだな……でも、大事な家族って事は確かだ。


「ギャー! 千切れる! 千切れちゃうから!」

「フフフッ……大丈夫ですよ。治しますから」

「アハハッ……もう少し強めましょうか」


 なんというか……地獄絵図だ。あれ、何しにここに来たんだっけ。あ、この本のこと忘れてた……三人は。


「出ちゃう! 内臓が出ちゃう!」

「大丈夫ですよー……もし出てもアスト様が治してくださいますから」

「そうですね……いっそのこと四肢を……フフフ」


 触らぬ神に祟りなし……図書室に戻ってから見てみるか。


「ギャー! 助けてー!」

「「ふふふ(あはは)……」」

     ・

     ・

     ・

     ・

 さてと、こっちまで聞こえる気がするが、気にしない気にしない。


「じゃあ、鎖を解いてみるか」


 よし、解けた。では、中を……。


「いやん! もう少し優しくですわ!」

「…………」


 気のせいだな、絶対に気のせいだな。

 本が喋った気がするが、気のせいだな……。


「気のせいじゃないですわよ?」

「そっかぁ、俺は疲れてるんだなー! ずっと本を読んでたからー!」

「大丈夫ですか? 貴方が新しいご主人様のようですわね。では、契約を……」

「ちょっと待て……お前なんで喋れるんだ。本なんだからありえないだろ」


 実際におかしい事ばかりだ。

 物が、自我を持って言葉を話すなんて、聞いたこともない。


「えっと、(わたくし)は全ての魔導書のオリジナルであり、魔法の始まりと言っても過言ではありませんわ。わたくしの中に記されている魔法は、初期の魔法から最新の魔法まで全てありますわよ!」

「どっかの誰かが新しい魔法を作ったらどうするんだ。自分で歩いていく訳にはいかないだろう」

「その時は何かしらのパワーが働いて自動的に記録されます。なので、白紙のページがまだ約100ページもありますわ」


 まとめると、俺にとっては何の意味もないって事だ。

 見ようと思えば全魔法を見ればいい。それに喋れる本なんて危険そうな物は厳重に封ぃ……保管しとかなければ。


「よし、結論から言うがお前は役に立たないので、今すぐ封印されて保管されてください」

「いやいや、待って! せっかく数百年ぶりに目を覚ましたのに封印されるなんて絶対に嫌ですわ!」

「で、本音は?」

「お願いします。何でもするので、封印だけは勘弁してくださいご主人様」


 最近、変なの増えたばかりだってのに……しかも、土下座って……プライドは無いのか。


「さてと、分かった。ただし条件がある」

「なんでも申しくださいませ、ご主人様!」

「俺とアスト達以外の前では絶対に喋るな。それと、この屋敷の敷地内に、不審者用の結界を張っておいてもらえるか?」

「分かりましたわ! 全力で使命をまっとうしますわ!」


 はぁ、これで変なのが二人になったよ……二人?


「あれ、誰だお前」


 先程まであった魔導書が消え、代わりに同じ声をした金髪縦ロールがそこに立っていた。


「驚きましたか! わたくしは防衛手段として、人間と同じ姿になることが出来るのですわ!」


「マジで変なのが増えたよ……アストとエミリに何て説明しよう」


 ていうか、リエの奴は絶対に知ってただろう……あとで、アスト達に頼んでお仕置き決定だ。


「では、よろしくお願いしますわ! ご主人様!」

「よろしくな。俺の事はダイキと呼ぶように」

「はいですわ、ダイキ様!」


 こうして、またもや変なメンバーが家に増えたのだった。

 __キンコーンと音がした。誰か来たのだろう。


「こちらにダイキという男は居るだろうか! 国王陛下が城でお待ちだ!」

「ダイキ様はいらっしゃいますか! ギルドマスターがお呼びです!」

「王様の側にいた偉そうな人と受付さんか……」


 また、厄介事の予感がする。

 しかも二つくらい、何時になったら平和に暮らせるんだ……。


「ギャー! もう勘弁してー!」

「ふふふ……まだですよ……」

「そうですねアスト様……あはは」


 あ、すっかり三人のことを忘れてた。

 まあ、仮にも神だし大丈夫か……。

魔導書「(わたくし)爆誕しましたわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ