爺ちゃんについて
2020年5月14日 文の書き直し終了
異世界に来てからは、色々と酷い目にあった。チート能力を手にいれたけど、強すぎて隠さなきゃいけなくなったり。冒険者になったら、金の為に狩った魔物のせいでSランクになって目立つことになったり。城から追い出されたら、2、3日で魔王を倒したりと……これ全部自業自得だった。
「ダイキくん。言っておくけど、ほとんど君が悪いからね?」
「……さてと、散歩がてら冒険者ギルドに報告しに行かないとなー」
「あ、逃げた」
「マスター。逃げましたね」
「そうですね。ダイキ様は、都合が悪くなって逃げましたね」
「「行ってらっしゃい(ませ)」」
いや、当たり前だろ。どこに女の子3人に言葉責めにされそうになって逃げない男がいるんだよ……しかも、一人は神だし。
だが、俺に立ち向かう勇気はない。
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さてと、着いたはいいんだが。なんだこれは。
「飲めー! 今日はギルドの奢りだー!」
「「あざーす!」」
「……」
ギルド内では、男達が酒を片手に騒いでいた。
俺は、場所を間違えたのではないだろうか。うん、そうだな。よし、帰ろう……。
「おぉー! 今回の英雄様の登場だ! 皆、せーの!」
「「ダイキ様! ありがとうございました!」」
「すみません……ギルド間違えました……」
そう言って、俺は静かにギルドの扉を閉めた。
そして、全速力で家へと帰った。ワープを使って帰ることも出来たのに。そこまで頭が回らなかった。
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「ただいまー。冒険者ギルドは、もうすぐ潰れるんじゃないか」
「帰っていきなり何を言っているのですか、マスター?」
「大丈夫ですか。ダイキ様?」
いや、あんな光景を見たら誰でも思うだろ。
酔っ払い達が、真昼間から酒をこれでもかと飲んでいるんだから。しかも、受付すら仕事してなかったぞ。
「おっかえりー、ダイキく~ん! お土産はー? ねえ、お土産は?」
「んなもんあるか! こっちは、昼間から酒の匂いに当てられて軽く酔いそうだったんだぞ!」
「ありゃ? もしかしてダイキくんはお酒に弱いのかな? ますます、お爺さんにそっくりだねー!」
いや、そもそも未成年だから酒飲んだことないんだが。あ、でもいま肌で分かるんだっけ?
「そうですか……って、そうだよ! 俺の爺ちゃんの話は!?」
危うく忘れるところだった。いったい、爺ちゃんはこっちでどんな人だったんだ。爺ちゃんのことは、俺が産まれる前に亡くなったって事しか知らないし。
「えっとねー。まず、君のお爺ちゃんがどんなステータスだったかについて教えるね?」
「私達も聞いて良いのですか。マスター?」
「暇を潰すつもりで良いなら、一緒に聞くか」
爺ちゃんが何百年も昔に召喚されてた、なんて誰も思わないだろ。ていうか、そんな昔なら知ってる人はいるのか。
「いやいや、知らない人はこの世界にいないと思うよ。だって、物語として小さい頃に一回は聞くと思うから」
ますます、どんな人だったのか気になるんだが……。
「じゃあ、そろそろ話すよ? 君のお爺ちゃんのステータスは異常だったんだ。それこそ君以上にね」
俺でさえ酷いのに、爺ちゃんはもっと異常って。
「君のお爺ちゃんのステータスは、呼び出されたとき全部1で、魔法も無し、スキルも一つだけだったんだ。いっけん危険そうでしょ? でも、それを覆すのが、そのたった一つのスキルだったんだ」
爺ちゃんのステータスそんなに酷かったんだ……ステータスがオール1って。
「で、そのスキルの名前が【真の勇者】っていうスキルなんだ。そのスキルは、レベルが10毎に全ステータスがなんと7倍! さらに、悪との戦いには絶対に負けないっていうスキルだった。だけど、ペナルティとして片手剣以外の武器等は使えないってなってたよ」
レベル10毎に全ステータスが7倍になるって……しかも、悪は負ける可能性はないって、邪神とか絶対に勝てないじゃん。
「そう思うよね? でも、負けないってだけで必ずしも勝てる訳ではないから、封印するっていう引き分けの形になったんだよ」
「厄介なスキルだな。で、爺ちゃんはどんな事をしたんだ」
「簡単に説明すると、召喚されてから1年でレベルを1000にして、町の風紀を正し、1ヵ月以上寝ないで邪神達と戦い続けて封印したっていう本当の意味での英雄だよ」
なんだろう……化け物としか思えないんですが。
レベルを地道に上げて1000って……どんだけ戦ってたんだろう。そもそも、ステータスが想像つかない……というか、7の100乗とか想像できない。
「本当に格好良かったよ。異世界に召喚されるっていうと女の子とイチャイチャしてるイメージだけど。前の世界いた奥さんの為にも女性関係は作らないって言って、一人で頑張ったんだから」
「マスター……」
「ダイキ様……」
なんというか、本当に申し訳ない気持ちで一杯なんですが……まじで格好良さそうだ。
「さてと、話せることは以上かな? 何か質問はある?」
「いいえ……ありません」
「私もマスターと同じく」
「ダイキ様、元気をだしてください……」
英雄の話しを聞いてた筈なのに、何故こんなお通夜ムードなんだろうか……大丈夫だ、あっちの世界に彼女なんていなかった。
「俺もそのうち誰かと結婚して幸せに暮らすんだ、ハハハ……」
「ダイキくんが良ければボクが……」
「マスターと結婚だなんて……」
「ダイキ様と……」
「どうした。3人とも」
「「「いいえ! なんでもないです!」」」
3人ともどうしたんだ。でも、結婚するような相手も居やしないしな……こんな男じゃな……。
「暗くなってきたし、飯食べて、風呂に入って寝るか」
「「「そうですね(だね)! マスター(ダイキくん)(ダイキ様)!」」」
そっか……もう、あっちみたく一人じゃないんだよな。
もし、帰る事になっても絶対に3人とは離れたくない。
あれ、俺はもしかしてあいつ等のことを…………それはないか。俺が誰かを好きになる事は出来ないから。
「さあ、いっぱい食べるよー! エミリちゃんの料理は美味しいからボクも食事が楽しいよ!」
「そんな、大袈裟ですよ。リエ様」
「もう少し落ち着いてください、まったく……」
いや、帰るなんてありえない……俺は楽しくこの世界で暮らすんだから。
三人「「「結婚……フフフ」」」




