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緊急召集

※2020年5月12日 文の書き直し終了

 目覚めると、そこは修羅場だった。

 あぁ……なに言ってるんだろうな。


「なんで、エミリさんがマスターのベッドにいるのですか!」

「それはわたしのセリフですよ! どうしてアスト様が、ダイキ様のベッドに!」

「あのー、二人ともそのへんで……」

「「マスター(ダイキ様)は黙ってて!」」


「……はい、すいません。黙っております」


 修羅場に突入した主人公って、こんな気持ちなんだろうか。

 __キンコーン、とチャイムの音がした。

 ってことは、誰か来たのか。また、面倒くさいことが起きそうな予感がする。


「二人とも、ちょっと出てくる」

「え、ちょっと待ってください」

「もう、ダイキ様はせっかちなんですから」


 これは、せっかちって問題じゃないだろう。客人を待たせるのは失礼だろうに。

 俺は、急ぎ足で玄関に向かった。

 近くまで来ると、扉をドンドンと叩く音が聞こえる。


「はいはい……今出ますよ。って、受付さん?」

「急いでください! ギルドから緊急召集です!」


 どうしたのだろう。

 いつになく焦っているようだが、行ったら分かるか。


「分かった。アストとエミリは、家を頼む。少々、面倒な予感がする」

「分かりました。行ってらっしゃいませ、マスター」

「ダイキ様……無理はしないでくださいね……」

     ・

     ・

     ・

     ・

 俺と受付さんは、急いで冒険者ギルドまでやって来た。

 ギルド内は妙に慌ただしく、狂ったように笑っている者や泣き叫んでいる者など沢山の冒険者がいた。それを見ないようにして、俺は真っ先にギルドマスターであるライオさんのところに向かった。


「ライオさん、どうしたんだ。緊急召集だなんて」

「嗚呼、ちょっと……いや、かなり不味いことになった」


 そう言うと、ライオさんはギルドにいる冒険者の全員を中央へ集めた。中には、その場から動こうとしない者もいたが、他の冒険者によって、強制的に連れてこられた。


「知ってる者もいると思うが、今回はあることが原因で緊急召集を掛けさせてもらった。訳について今から聞いてもらう」


 ギルド内が急に静まり返った。

 ライオさんの表情からして、ただ事でないと悟った者、既に事を知っている者と半々だ。


「いま、この王都に魔王の軍勢が攻めてきている。現在、魔王軍は王都近郊の森まで攻めてきている」


 ライオさんがそう告げると、周囲は一気に騒がしくなった。

 たしか、近郊にある森っていうと、俺が魔物を狩っていた場所だよな。


「お前達には、その森に向かってもらう。つまり、魔王軍の討伐依頼だ」

「すまない。質問を良いだろうか?」


 大剣を背負った大男が何か気になったらしい。

 この大男以外にも、気づいた者が少なからず居るらしい。


「嗚呼、俺が知ってる範囲でなら何でも構わん」

「では、オレが聞きたいのは勇者達についてだ」


 一気に場が騒がしくなる。

 勇者って、あの勇者達だよな。確かにそうだ。勇者が居るのだから冒険者が戦う必要はない筈。


「全員静かにしろ! で、勇者がなんだ?」

「王宮では、つい最近勇者を数十人召喚したと聞いている。で、その勇者達はどうなったのか。それと、魔王軍はどの程度の戦力なのか」

「…………分かった。答える」



 俺を含めた、冒険者全員が息を飲んだ。

 そして、衝撃の事実が語られた。


「勇者達は……既に魔王軍に突撃して……全滅した……」

「そ、それは事実なのか! ライオさん!」

「ど、どういうことだよ! 勇者が負けた!?」

「嘘だろ……勇者でも負ける相手に俺達が挑むってか……」


 勇者達が全滅した……?

 再び場が騒がしくなった。

 しかし、ライオさんの言葉で静寂に包まれる事となった。


「これは事実だ。勇者達と一緒に行った騎士の一人が、伝言を言われ還された」

「伝言とは……?」

「今回、魔王軍を率いているのは四天王ではない。魔王自身であること、勇者達の首が全て落とされたのを見たと……」


 この一言により、冒険者達の心は絶望に染まった。

 勇者達が死んだか……悲しいって気持ちは沸かなかった。理由は明白なのだが、思い出したくもない。


「それと相手の戦力だが、魔王軍の兵と幹部達全員、四天王が三人に魔王……つまり、最高戦力だ」

「か、勝てるわけねえ……」

「もう、終わりだ……俺達は終わったんだ……」


 皆は口を揃えて駄目だ、終わったなどと言っている。

 そういうのは、正直に言って気に入らない。


「依頼についてだが、今回の依頼の受ける受けないは、各自の判断に任せる。では、受ける者は俺の前に来てくれ」


 ライオさんはそう言ったが、前には誰も出てこない。

 冒険者達は全員顔を伏せている。


「そうか……急に呼び出して悪かったな皆……」


 誰も受けないみたいだ。なら、これで人目を気にせず、思う存分戦える。ここからは、俺の時間だ。


「ライオさん。俺は依頼を受けるよ」

「ほ、本当か!」

「ああ、ただし条件が一つ」

「おう、条件くらいなら大丈夫だ! で、どんな条件だ!」

「俺一人で行かせてくれ」

「は? いや別に構わないが……俺で良ければ何処までもついて行くぞ」

「足手まといになる……他にも絶対に手出しさせないでくれ」

「あ、嗚呼……分かった」


 こうして、俺と魔王軍の全面戦争が始まろうとしていた。

 だけど、ちょっと失敗したな。イライラしてライオさんに八つ当たりしてしまった。

 待ってろよ、魔王軍。俺が更生させる筈だった勇者に手を出してタダで済むと思うな……。

アスト「マスター、遅いですね……」

エミリ「朝食も食べていかなかったですね……」

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