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閑話・エミリの気持ち

今回はエミリ視点での話です!

※2020年5月11日 文の書き直し終了

 わたしは、ある獣人の村の生まれだった。小さな村だったけど、それでも両親と3人で楽しく暮らしていた。

 だけど、あの日……。


「お父さん、本当に大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ! この村が魔王どもに負ける訳がないだろう!」


 その日、村に魔王の軍勢が来て、村を明け渡せと言ってきた。だけど、村の皆はその言葉を拒否した。

 そして、拒否した翌日には魔王軍が攻めてきた。


「よし、全員かかれ!」

「「「おおー!」」」


 村には、大人達が約100人居た。獣人は、他の種族よりも戦闘能力に優れており、負ける訳がないとみんな考えていた。

 ____あの時、あれが来るまでは。


「よし! あと少しだ! 踏ん張れ!」

「「「うぉー!」」」


 あと少しで撃退できる……筈だった。

 しかし、誰も予想すらしてない出来事が起こった。


『グロォォォンー!!』


辺りは静寂に包まれた。紫の鱗に包まれたドラゴンの雄叫びによって。

その瞬間、みんなの顔が絶望へと染まった。


「なんだあれは……」

「どういう事だよ……ドラゴンだと……」

「嫌だ! 死にたくない!」


 みんなはパニックになった。

 さらに、ドラゴンの後ろには千を越えるワイバーンの群れもいた。勝機は……無かった。


『グウォォォ!!』

『『『キャオンー!』』』


 再びドラゴンが吠えた瞬間、ワイバーン達は大人達に襲い掛かり、一瞬で肉塊へと変えてしまった。

 その後、ワイバーン達はみんなの家の中に侵入して、沢山の獣人を殺していた。


「お母さん……もう駄目なの?」

「大丈夫よ。何があろうと、貴女だけは殺させない!」


 私の家にもワイバーンが入ってきた。

 そして、お母さんはわたしを突き飛ばした。


「お母さん!」

「逃げなさいエミリ! 貴女は……貴女だけは生きて!」


 そして、お母さんは殺された。

 私は、必死に走った。だけど、村の外に出る時、わたしは見てしまった。ドラゴンの牙の間に、お父さんの体があるのを。

村を出ると、わたしは森の中を走った。

他の獣人の村に向けて。だが、森の中は魔物達でいっぱいだった。

 まず、右腕を食べられた。

 最後の日、わたしは大きなカマキリの魔物に襲われ、両足首を切断された。

 だけど、偶然通り掛かった人達が魔物を倒してくれた。わたしは助かったと思った。


 ____しかし、その人達は奴隷商だった。


 今度こそ駄目だと思った。

 そして、欠陥奴隷として売られた。そのあと、欠陥奴隷は売れても虐待を受けて死ぬだけだと聞いた。

 その日、わたしの最後の日だと教えられた。今日中に売られなかったら処分されると。

 わたしは覚悟を決めた。売れても虐待されて死ぬだけ。だったら処分された方がマシだと。


 だけど、ある男の人が奴隷を買いに来た。その人は、最後に私の所へ来た。そして、檻の中に入ってきて……。


「君の名前は?」


 名前を聞かれた。

 でも、どうせ殺されるならと答えなかった。


「俺はダイキって言うんだ。つい最近、冒険者になったんだ」


 自然と肩が震えた。魔物への盾や囮として扱われると思ったから。だけど、この人はこう聞いてきた。


「君に聞きたい事がある。もしも、君の右腕と両足首が元に戻ったら、家事はできる?」


 始めは、何を言っているのか理解が追い付かなかった。

 理解しても何でそんな事を言うのか分からなかった。

 でも、どうせ死ぬならと思い、最後は答えてみた。


「できます……」

「分かった」


 そう言って、この人は微笑んだ。檻の外に出て仲間の女性と話しをしていた。話が纏まったらしく、奴隷商の人に話しかけていた。

 そして、わたしはその人に買われた。

 驚くことにその人は、わたしの怪我を治してくれた。とても不思議な人だと思った。

 その人は、わたしを買った帰りに服屋へ立ち寄った。怪我も治ったし荷物持ちに使われると思ったが。


「服屋だ。お前の服を買いにきた」


 そう言ってきた。わたしは、さすがに悪いと思い断ろうとしたら、色々と言われて諦めた。ご主人様は、仲間の人にお金を渡していた。

 幾らかを見ると再び驚くことになった。袋には大量の金貨が入っていた。この時、ご主人様が普通の人よりも少しお金持ちだと知った。

 ご主人様は何かを思い出したらしく、お風呂屋さんへと行くように言われた。この時、ご主人様は少しドジだと感じた。

 わたしは、お風呂屋さんに連れてかれ、全身をアスト様に洗われた。その後、服屋さんに戻り、服を買ってもらえた。

そして、アスト様にあることを聞いてみた。


「アスト様……ご主人様は、何故わたしに良くしてくれるのでしょうか……」

「マスターはそういう人です。気にしない方が楽ですよ」


 アスト様は、そう言って笑いかけてくれた。この人達なら信用してもいいかなと思った。

 ご主人様を待っていると、変な男の人達が話しかけて来た。


「ねえねえ君達、俺らと遊ばない?」

「何ですか? ゴミですか? ハエですか?」


 アスト様は強気に答えたが、わたしは凄い怖かった。

 怒った男の人達は、アスト様に殴りかかってきた。そして、わたしは目を瞑った。

 しかし、目を開いた時には、驚くべき光景が広がっていた。


「あ、危ない! ………え」


 その男の人達は、全員地面に倒れていた。

 何が起きたのか分からなかった。その直後、すぐにご主人様が来た。

 ご主人様は何が起きていたのか分からず驚いていたが、話しを聞いて内心ではとても怒っていた。

 男の人達に注意をすると、ご主人様はわたしの心配をしてくれた。そして、わたしを可愛いと言ってくれた。

 とっても嬉しくなったのに気づいた。

 だけど、アスト様は凄い不機嫌になっていた。ご主人様は帰りに何度も謝り許してもらえたらしくホッとしていた。


 しばらく歩くと、とても大きなお屋敷に着いた。わたしは、なぜこんな大きなお屋敷に来たのか分からなかったが、話を聞いてとても驚いた。なんと、このお屋敷はご主人様のお家なのだ。そして、これからわたしが住む家だというのだ。

 このお屋敷には、ご主人様達とわたしの3人だけで住むらしい。本当にどういう人か分からなかった。

 でも、悪い人ではないと分かった。

 その後、私はご主人様に声を掛けられた。


「エミリ。すまないが、夕食を食べたあと俺の部屋に来てくれ」


その時、わたしは思った。そういう目的で私を買ったのだと。

私は、夕食の後にご主人様の部屋に先に行くと、服を脱ぎベッドの上で待った。

 でも、少し恐かった。でも、この人になら別に構わないと思い始めていた。

 だけど、ご主人様が部屋に入ってくると顔を赤くして、凄い驚いていた。その後、話しを聞くと、本当にただ話しがあっただけだと言う。

 とっても恥ずかしくなった。だけど同時に少し残念だと感じていた。


 話しが終わると、ご主人様はそのまま私の膝に倒れてスウスウと寝てしまった。ご主人様の寝顔を見ると胸が温かくなった。

 その時に理解した。この短時間でだが、私はご主人様に好意を持ち始めたのだと。だけど、私は奴隷だ。

 それに、アスト様もご主人様の事が好きなのだろう。それでも、二番目でもいいから好きになって欲しいと思った。

 そして、ご主人様に膝枕をしたまま、私も眠りについた。

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