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エミリの役割

※2020年5月10日 文の書き直し終了

 買ってきた食材を倉庫にしまったあと、今後の話をする為に、エミリに後で部屋に来るように声をかけた。


「エミリ。すまないが、夕食を食べたあと俺の部屋に来てくれ」

「は、はい、分かりました……」


 その後、早速夕食を作るように指示を出し、厨房から出た。

 俺とアストは、その隙にエミリに何を話して、何を秘密にするか相談を始めた。


「で、エミリを買ったのはいいが。どうする?」

「そうですね。とりあえず、家事については解決しましたね」

「いや、そうじゃなくて、どこまで俺達のことを話すかだ」

「マスターについてですか……冒険者ということは既に話しましたが、ランクについてはまだ言わない方がいいと思います」


 確かに、いつ俺の情報が漏れるかも分からない。

 それに、国王に知られて利用されるのは絶対に回避したい。とにかく、今は俺は楽に暮らしたいんだ。


「分かった。他に何かあるか」

「私達の素性についてもですね。理由は先程と同じで」

「次に何かあるか」

「ステータスです。これは、私がホムンクルスという禁忌で作られた事やマスターが勇者だという事が周囲に知られれば、この世界の何処にいても危険が伴う結果となってしまいます」


 ホムンクルスは、元の世界の宗教的なのと同じで禁忌とされているようだ。もしも、周りにアストの正体が知られたら……だとすると、本当にこれで良かったのだろうか。


「アストは、いま幸せか……?」

「どうしたのですか、急に?」

「いや、俺なんかと一緒にいて、楽しいとか幸せかを聞きたかっただけだ」

「マスター。いま私が生きてられるのは、マスターが私の為に禁忌を犯してまで作ってくれたこの体のお陰です。それに、私がマスターと居られなくなったら、それこそ不幸と言えるでしょう」

「そ、そうか……ありがとな」


 初めてかもしれない。

 俺のことを、一緒にいたいと本当に思ってくれた奴は。


「ご主人様、アスト様。夕食が出来上がりました」


 ちょうど夕食が出来上がったらしい。

 ていうか、本当にタイミングよく出来上がったな。


「じゃあ、行くか。アスト」

「はい、マスター」


 夕食が出来上がったらしいので、食堂へと足を運んだ。

 しかし、夕食の光景に、俺たちはその光景が嘘であるかのように感じていた。

 食卓には、沢山のご馳走と言っていい出来の料理が並べられていた。


「な、なあ、エミリ。この料理は全てお前が?」

「は、はい……お口に合うとよろしいのですが……」


 もうこれは、口に合う合わないの問題じゃない。

 元の世界にいた頃じゃ考えられない程の料理だ。香りよし、見た目もよしときた。


「じゃ、じゃあ。食ってみるか……」

「え、ええ……マスター」

「エミリも早く座れ」

「は、はい、ご主人様……」


 そう言うとエミリは床に座っていた。

 こういうのも本当にあるんだな。


「エミリ。床じゃなくて席に着いてくれ……そして、俺達と一緒に食事をとってくれ……」

「い、いえ! ご主人様と一緒に食べるなど!」

「頼む、エミリ。俺とアストだけ食ってても罪悪感が半端ないから」

「はい……ご主人様のご命令とあらば……」


 俺達は、エミリの作ってくれた夕食を食べた。

 予想通り、エミリの作った夕食はとんでもなく旨かった。ヤバい……俺もうエミリ無しじゃ生きていけないかも。


「さてと、食い終わったし風呂に入って寝るか」

「では、ご主人様……わたしは先にお部屋へ……」


 この屋敷を選んだ理由の一つがこれだ。この屋敷には、他とは違いちゃんと風呂があった。しかも、何人も一緒に入れるような大浴場が!

 一時間程湯につかり、エミリが待つ部屋へと向かった。事前にアストと何を話さないようにするかは話しておいたので気楽に向かえた。

 部屋の前に着くと、驚かすのもいけないと思い、静かに扉を開け声を掛けようとした。


「エミリ。待たせ、たな……」


 そこにはエミリが居た。ただし、服などは着ておらず、生まれたままの姿で。


「な、なあエミリさん……なぜ服を着ていないんだ」

「ご主人様……お待ちしておりました……ご主人様は私に夜の相手をさせる為に呼んだのです、よね……」


 まさか、こんな展開になるとは……よく考えれば思いついた筈だ。

 夜、奴隷が主人に部屋に呼ばれたのだから、自分にその気がなくても相手にそう思われてしまうでのは仕方ない。


「エ、エミリ。すまないが服を着てくれ……」

「ご主人様は着衣プレイをご所望でしたか……大丈夫です。そのくらいなら許容範囲なので……」

「ち、違うから! ただ話があって呼んだだけだから! 頼むから服を着てくれ!」

「そ、そうでしたか……すみません。てっきり、そういう事かと……」


 そう言うと、エミリはちゃんと服に着替えた。

 さすがに心臓が飛び出るかと思った……ちょっと嬉しかったけど。


「俺も悪かった。誤解されるような言い方をしてしまって……」

「頭を上げてください! そんな事気にしませんから!」


 そう言われたので、下げていた頭を上げた。

 最悪土下座をする覚悟だ。


「あの……それでお話しというのは……?」

「ああ、今後について話そうと思って」


 話を切り出した。あくまで、今後の話しということで。

 これから一緒に暮らすのだから、出来る限りの情報は教えようと思う。


「俺とアストが、冒険者をやっているのは話したよな?」

「は、はい」

「俺達は、この家をあける事が多くなると思う。だから、留守の間とか家の手入れをしてくれる奴が必要なんだ」

「はい、それで私に家の管理を任せると……?」

「そういう事だ。頼めるか?」

「参考までにお聞きしますが、なぜ奴隷であるわたしに……?」

「奴隷だから、だ。奴隷なら命令をすることで、約束とかを破る事が出来ない。他の人に依頼するとなると裏切られる可能性が出てくる。それに、エミリだったら家事も出来るし最適だと思って」

「なるほど……分かりました。屋敷の管理を請け負います」


 これで大丈夫だな………あれ。急に体が重く……ヤバい……いろいろ片付いたら急に疲れが出始めた。


「す……まないエミリ……俺はもう寝る……」

「ご、ご主人様?」

「あと……俺のことは、ご主人様じゃなくてダイキとよぶよ、うに……」

「分かりました……では、お休みなさい。ダイキ様」

「おやすみ……」


 そこで俺の意識は途切れた。

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