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誘惑

作者: ルカ

        1


 結婚後も毎週日曜日に教会のミサへ参加することが瑠璃子の習慣となっていた。夫が日曜出勤となったときは一人で出掛けて参加する。第一子に恵まれたあともそれは変わらなかった。

 変化が起こったのは娘の彩が一歳の誕生日を迎えたころのことだった。


 その日、典礼中にぐっすりと眠ってしまった娘を抱いていた夫は、ミサが終わるとすぐに『車で待ってるよ』とひと足さきに駐車場へと立ち去った。

 用事を済ませた瑠璃子は聖堂を出て玄関ホールまで歩いてきた。すでに誰もいない。外は早春の明るさだがここは薄暗かった。さきほどまで帰っていく人々の姿でひととき混み合っていたことだろう。どことなく空気が淀んでいる。

 両開きの扉に手を当てる。半ば体重を掛けるように力をこめて重い扉を押し開く。陽射しが眩しくて瑠璃子は目を細めた。

 外へ出ると若い男が立っていた。がっしりとした体つきで肩幅が広い。青年の肩越しに教会の柵外に立つ木の瑞々しい緑がみえた。

 先ほどのミサのあいだ真後ろの席にいた人だと気づく。最近教会で毎週のように見かける彼はいつも白いシャツにスラックス姿で学生のようにも思えた。

「きょうはお子さんは」

 屈託のない笑顔で青年が訊いてきた。

 怪訝に思って瑠璃子は首をかしげた。手にさげていたバッグを両手で抱くように持ちなおす。そのときふと彼と視線が絡み合いなにか強い印象が彼女の胸に残った。ほんの一瞬のことだった。

「先週、抱いてた。赤ちゃん」

 合点して瑠璃子は笑う。彼は先週娘の彩をあやしてくれたから、いま瑠璃子が抱いていないことを不思議に思ったのだろう。

 先週のミサ後のことだ。

 瑠璃子は聖堂のなかを人の波に合わせて出口へ向かっていた。前方の壁際にはひとりの青年がぽつりと立っている。彼の前を通り過ぎようとしたとき、人の動きが滞り、彼女の足も止まった。

 瑠璃子の抱いていた娘の彩をみて青年が笑いかけ、彩も彼をみて笑った。

 両手を彩に向けて彼が「抱いていいですか」と訊いてきた。「はい」と彼女は承諾した。夫は車を出すため先に駐車場へ行っていてその場にはいなかった。

 教会内で他の信者が一歳の娘を抱きたがるというのはよくあることだった。特に年配の女性たちは顕著で娘を見ると話しかけてくる。

 これまで何度か彼の姿を見かけたことがあったし、シスターと話している姿を目にしたこともあったから、それが一種の安心感に繋がってもいたのだろう。青年から話しかけられたことに対する不審は瑠璃子のなかにはまるでなかった。

 ただ彩を抱いてあやす青年の姿が彼の若さにそぐわないほどの自然さで板についていることは不思議だった。おどけたような表情をして娘に笑いかける様子にはよほどの子供好きなのだろうかと疑問を持った。

 そういうことがあった。

 思い返しながら瑠璃子には再び彼に話しかけられて不快な気持ちはない。こういうとき大抵は煩わしく思うものだが、きょうはどういうわけか心のどこかでそれをよろこんでいる。そう自分でも感じている。

「きょうは主人が先に連れていっています」

 聖堂の扉から駐車場までは同じ敷地内に併設された幼稚園の園庭を通っていく。

 会釈して瑠璃子がそちらへ足を向けると、青年も横にならんでいっしょに歩きはじめた。

 白い土のうえにふたりの濃い影が伸びている。

 光の反射したような地面を踏みながら瑠璃子はそっと目をあげた。半袖の白いシャツがみえた。それから青年の横顔をじっとみる。

「何歳ですか、お子さん」

「一歳」

 前を向いたまま青年が訊いてきて瑠璃子はどきんとした。

「かわいいけれど大変ですね。夜もまだ泣くでしょう」

「よくご存じですね」

 問うように瑠璃子がいうと青年はすこし考える顔をした。

「このむこうにあるH園知ってますか」

「ええ」

 児童擁護施設があるというのは知っていた。

「ぼくはあそこで育ったんです」

 とっさにどう答えてよいのかわからず、瑠璃子は黙ったまま青年をみつめる。

「あそこで。なので小さい子の世話はぼくの仕事のようなもので、なんでもできますよ。おしめもかえるし、遊び相手もするし。着替えさせたり寝つかせたりもするし」

「すごい。立派ね」

「ときどきいらいらすることもある。あいつら容赦ないから」

 なぜ彼がこのような話をこんなふうにするのか彼女にはわからなかった。だが彼と話すことは楽しかった。親近感を覚えはじめていた。

「ぼくの親はどこにいるのやらさっぱり」

「……住んでいる場所もわからないっていうこと?」

「全然わからない。居場所がわからないだけではないんです。ぼくは捨て子だったから。親が誰かということもわからない」

 何も言えず瑠璃子は、彼女を見つめ返してくる青年の淡泊な表情に胸をつかれる。

「捨て子なんです」

 ふたりは黙ったまま歩きつづけた。

 駐車場が見えてきた。

 狭いところで車の出入りがあり、敷地内の信徒館へといそぐ者、道ばたで神父と話しこんでいる人だかりと、だんだんに人の気配がざわざわと近づいてくる。

「来週も来られますか」

 青年が瑠璃子をじっと思いつめたような目でみて訊いてきた。

「ええ」

 ごく自然に瑠璃子はうなずいた。彼女がミサへの出席を欠くことは滅多になかったからだ。

「ぼくも来週は来ます」

「来週は?」

「再来週には園を出るんです。十八歳になったから」

「そういう決まりなの? 園を出なくてはならないの」

「そうです」

 瑠璃子には身よりもない青年が追われるという気がして、つい訊いてしまった。

 同時に十八歳と聞いてやはり彼はまだ学生だったのだと思った。だが自分より五才も年下と考えても彼女の気持ちの中から何かが減っていくということはなかった。

「本当はもっと早く出なくてはならなかったんです。就職先がなかなか決まらなくて……。でもやっと決まりました。Y町にある会社にいくことになっています」

 Y町までここから車で三十分の距離だと瑠璃子は思った。

 駐車場の手前まで着ていた。

 青年が立ち止まり瑠璃子はそのまま歩いた。駐車場のいちばん奥に夫の待つ車があった。



       2


 翌週も青年は教会に来ていた。瑠璃子はひとりで彩を連れていた。彼女の夫は仕事のため来ていなかった。

 ミサが始まると青年は瑠璃子の真後ろの席にいて彩を抱いてあやしてくれた。しばらくして二度目に両手を差し出されたときはさすがに悪いと思って断った。

 だが「腕が疲れるでしょう。いいですよ」と言われてあとはミサの間中ずっと青年が彩を抱いていた。それは教会内ではごく普通のありふれた光景で特に周囲の目を引くものでもなかった。

 実際に二人が交わした会話といえば、ただその二言だけに過ぎなかった。ミサが終わりに近づくと彼は彩を瑠璃子の腕へ戻したが、このときも何も言葉は交わさなかった。

 すべてが終わって人の波が聖堂の出口へと流れはじめたとき瑠璃子がふり返ると彼はいつのまにかいなくなっていた。

 外へ出て彩をベビーカーに乗せていると青年がやってきた。

「こんにちは」

 改めたように瑠璃子へ挨拶してから彼は身をかがめベビーカーにすわっている彩に笑いかけた。

「おなまえは」

 彩がうきゃうきゃと何か答えている。

「あやというんです。彩りと書いてあやです」

「かわいいですね」

 ベビーカーから離れて青年は瑠璃子をみた。

「旦那さんは駐車場ですか」

「きょうは主人が仕事で車がなくて、それで歩いてきたんです」

 晴れた空を仰ぎながら瑠璃子はゆっくりとベビーカーを押していく。歩調を合わせた青年がとなりを歩いている。

 園庭沿いの道をふたりで通り抜けた。教会の門を出て、坂道をくだっていく。

「どちらですか」

 通りの歩道へ出ると青年が訊いてきた。答えるかどうか瑠璃子は迷った。しかしこのまま青年と別れたくない気持ちが強かったので結局は答えることにした。

「A公園の近くです」

「ぼくも行きます。ベビーカーを押しましょうか」

「いえそれは……。それに二十分以上歩きますよ」

 瑠璃子が笑うと青年も笑った。

「ぜんぜん平気です。歩くのは慣れてるし」

 ふたりでアスファルトの道路を歩きはじめた。

 途中、上りの坂道になったときに青年がいった。

「代わりますよ。重いでしょうから」

「でも」

「いいですよ。遠慮せずに」

 せっかくの好意なので受けることにした。青年と話をするのは二度目にも関わらず互いに自然な態度で話していることが瑠璃子には不思議だった。

「そういえば名前を聞いていない」

 ふと思いついて瑠璃子はつぶやいた。

 別にこのまま名前を聞かないままでもいいような気もしていた。

「ぼくも訊いていない」

 お互いの名前を告げあう。青年の名は徳山勇一といった。

「これからは徳山さんと呼びましょうか」

「勇一でいいですよ」

「それはだめですよ」

「だめですか。では瑠璃子もだめですか」

 心臓が飛び跳ねる。瑠璃子は夫からも名を呼び捨てにされたことはなかった。

「だめです。名字で呼んでください」

「名字で呼ぶのはなんだかいやだなあ。瑠璃子さんならどうですか」

 瑠璃子は黙ったまま立ち止まった。彼もベビーカーを握ったまま止まった。

 自宅のマンション前に来ていた。

「ここです。ベビーカーを押してくださってありがとう」

 ベビーカーを瑠璃子が握る。取っ手に彼の手の温かさが残っていた。なんとなく引き止めたいような気持ちになっている。

「来週はもう来られないんでしょう」

「ミサはね。でも教会には来ます。ミサの終わるころに出口で待っています」

「どうしてミサに出ないの」

 ひどくおどろいて瑠璃子は彼の表情を探った。彼はなんでもない様子で片方の手のひらをふった。

「最後の何回かはあれは義務で行っていたんです。シスターたちがうるさくて」

 優しい表情になって彼はなにかを思いだすように笑っていた。

「行かないと卒園できそうになくて。しかたなく行っていたんです。でもあなたに会えたからよかった。来てよかった」

 率直な徳山の言葉に瑠璃子はめんくらってその表情を探るように見てしまう。

「でも行ったほうがいいと思うけど」

「ぼくは信仰なんてないからいいんです」

 さっぱりしたような顔でそういうと彼はにっこりと笑った。

「さてと。もう行きます」

 来た道をもどっていく彼の背中がやがて消えた。

 ベビーカーを押して瑠璃子はマンションの敷地内へと入っていく。

 もっと彼と話をしたいと思った。いっしょに昼食を食べないかと誘いたかった。喉まで出てきていたその言葉を彼女は言えずじまいだった。結婚して以来初めて抱く感情に瑠璃子は戸惑った。


 次の週。ミサが終わり、彩を抱いた夫とともに瑠璃子は聖堂の出口へとむかった。玄関ホールに着くとあらかた人は捌けてまばらになっていた。両開きの扉は開放した状態で固定されている。

 扉近くの壁を背に徳山が立っていた。両手をスラックスのポケットに入れている。

 瑠璃子が「こんにちは」と呼びかけると彼はさっと背を伸ばした。きびきびとした動きだった。

「こんにちは」

 瑠璃子を見て挨拶した徳山は彼女の夫にも軽く頭を下げた。

 夫のほうも彼に会釈を返しふり向いて瑠璃子を見た。身を屈めて彼女の耳元に顔を寄せ「誰?」とちいさな声で訊いてきた。

「先週、ミサのあいだ、彩の相手をしてくれたの」

「そうか。――それはどうも」

 特に疑問を持たなかった様子で瑠璃子の夫は徳山を見た。当たり障りのない会話を二言三言交わす。

 徳山を残して扉から外へ出る。

 彩を抱いた夫とともに瑠璃子は駐車場への道を歩いていく。後ろは一度もふり返らなかった。


 一週間後の日曜日、瑠璃子は教会へ行かなかった。その翌週も翌々週も休んだ。ミサへ行かない口実など簡単に繕うことができた。

 四週目に教会へ行ったとき彼女の予想通り徳山の姿はどこにもなかった。




       3


 半年が過ぎたある日、偶然、瑠璃子は再び徳山に会った。夫の出勤した日曜日に教会へ行く道すがら、彼の姿を見たのだった。

 午前の冷えた寒い空気のなか瑠璃子は手袋をはめた両手に力をこめてベビーカーを握り、黙々と歩いていた。防寒のためベビーカーには透明なレインカバーとフットカバーを付けている。

 マフラーが緩んできて瑠璃子は足を止めた。巻き直しながら前方に徳山の姿が見えた。

 すぐに彼だとわかった。そろりとベビーカーの取っ手を持つ。

 徳山も気づいたようで瑠璃子のほうへ歩いてくる。ゆっくりとベビーカーを押す。

 だんだんと距離が近づいてくる。全身が鼓動を打っていて苦しい。まっすぐ立つため意識して背筋を伸ばした。

「おはよう」

 目の前で立ち止まった徳山が瑠璃子を見おろしている。

「おはよう」

 短くつぶやいて口をつぐむ。

「毛布に埋もれてる」

 ベビーカーのなかをのぞきこんで徳山が笑っていた。

 彩にはフードつきのカバーオールを着せた上に暖かい毛布を被せている。顔の上半分しか出ていない。腕を動かしても簡単には毛布からはみ出ることのないようがっしりとくるんでいる。

 やがて娘から目を離した徳山が彼女を見た。柔らかい表情をしていた。

「元気そうで良かった。どうしたのかなと思ってた。ずっと教会で見なかったから。もう来ないかと思っていた」

「この子が熱を出したりして。いろいろあって来られなくて」

「そうだったんだ。もう治ったの?」

「すっかり良くなりました」

 瑠璃子は笑ってみせた。

「徳山さんはどうしてここに」

 さっき立っていた辺りの後方を彼は親指で指差した。

「近くに友だちが住んでいて今から行くところだったんです。さっきアパートに入ろうとしたら見えたから――それで出てきました。教会に行くんですか」

「ええ」

「じゃあ門のところまでいっしょに行きます」

「逆方向だけどお友だちのほうは大丈夫?」

「ぜんぜん大丈夫です」

 ここから教会まで十分で着いてしまうと瑠璃子は思う。胸がざわつく。

 いつかのように並んでふたりは歩きはじめた。

「あのY町の会社、お仕事はどうですか」

「おもしろくない」

 即答した彼に瑠璃子は笑ってしまう。

「そうよね」

「でも行ってます」

「偉いわ」

「ぜんぜんそんなんじゃないですよ。しかたなく行ってる」

「いえ偉いと思うわ」

 すると徳山が何かを言いかけてためらったように言葉を止めた。なんだろうと思って見つめる。彼は眉を寄せてまじめな顔をしている。まっすぐに彼女を見ている。

「家族がいるから。養うために働かなくちゃいけないから」

 首をかしげて瑠璃子は徳山を見上げている。

「ぼく結婚しているんです」

 えっと息をのむ。

「十八歳で……もう結婚しているの」

「子供ができて――」

 あまりにも意外なことで瑠璃子は言葉を失ってしまう。彼が彩をあやしていた姿が頭に浮かぶ。だからあれほど慣れた仕草だったのだと納得する。そうだったのかと腑に落ちた。

「まだ一歳になってないです。十ヶ月」

「あやすのが上手だったはずですね。自分の子供がいたのならそれはそうです……」

「ぼくに子供がいることはシスターたちには内緒です」

「内緒にしていて大丈夫なの」

「話していたら大騒ぎです。奥さんはぼくより二つ年上の人で。結婚すること自体反対されていたから」

「そうなんですね……。そうだったんですか」

 既婚者だと知ってもなお気持ちは変わらない。もっと一緒にいたいもっと話をしていたいという感情が湧いてくる。おかしいと自分でも思う。どうしてなのか不思議だった。

 ただ以前はなぜ彼が自分に話しかけてきたのかがわからなくて、わからないけれども惹かれるという部分があった。いまこうして話を聞きながら彼女にもやっと彼が声を掛けてきた理由がわかりかけてきている。いやもしかしたら明確にわかってしまったけれども知りたくないという気持ちがあるだけなのかもしれなかった。それは判明してみればとても哀しいことでそんな彼に惹かれる自分も哀しいと思った。

 前よりもいっそう強くなったのはこれは叶わぬことだというむしろ叶ってはならぬことだろうという認識だ。

「なんだか悪かったわ……。いつだったかあんなふうに家まで送ってもらったのも……奥さんに対して悪かったと思う。だからもう徳山さんもここには来ないほうがいいです」

「そんなことはない」

 きっぱりと言う彼は邪気のない顔をしている。そういうふうだから瑠璃子は惹かれたのかもしれないが、だからこそ怖いとも思う。

「いまだって。こういうのも奥さんに悪いと思うよ」

「どうして。別になにも悪いことなんかしてないですよ」

「いま奥さんは家で赤ちゃんと待ってるんでしょう。そんなのだめでしょう。つらすぎる」

「うちはそんな感じじゃないんです」

 自嘲するように半分笑っている表情になって徳山が言う。

「待つとかそういう人じゃない。子供ができたから一緒になったって感じだから。いつ別れてもおかしくないんです」

「でも好きで一緒になったんでしょう」

「どうかな。お互いなんとなくですよ。子供は可愛いけど」

 脇道から大きな通りに出た。

 次の角を曲がったら教会の門が見えてくる。そこで徳山が足を止めた。つられて瑠璃子も立ち止まった。

「ぼくはここで」

 うなづいて瑠璃子はベビーカーに目を落とす。

「来週も来ます」

 徳山の言葉に顔をあげる。どう答えればいいのか瑠璃子にはわからなかった。いやわかっている。わからない振りをしたいけれどもそれははっきりとしている。

「でも……」

「必ず来ます」

 何も言えなくて瑠璃子はうつむいた。そこへ徳山の言葉がつづく。

「それともきょうは……どこか別の場所に行きますか」

 全身がどきんとして怖くなる。見あげて徳山の視線とぶつかる。ぐるぐると頭のなかで何かが渦を巻いている。『ええ』と答えたい気持ちは確実に潜んでいただろう。

「いえ。教会へ行きます」

 ベビーカーを握って向きを変える。彩のことだけを考えようと思った。

 足を踏みだして歩きはじめる。角を曲がる。ぐんぐんと早足で進んで教会の門を入っていく。


 数ヶ月後、瑠璃子は家族三人で引越をして住所も所属教会も変わった。以降、瑠璃子が徳山に会うことは一度もなかった。


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