プロローグ
ボーイズラブで男と男がいちゃいちゃしたり、当たり前のように恋愛っぽい空気になっていきます。
少々の性描写、人が死ぬシーンもございます。
ご注意下さい。
酷く心を掻き乱される、暴風の中だ。
先ほどまでは抜けるような青空だったにもかかわらず、神が一滴の宵闇を落としたかのように、空には墨のような雲が現れ、灰色のたなびく間に稲妻が走った。
嵐は、彼の呼びかけに応えたのだ。
悲痛なまでの叫びに、嗚咽に、嘆きを訴えるその声に。
次元の荒れを告げる、生暖かい風が草を薙ぎ倒した。
ばつり、ばつりと葉を強く叩く強い雨が、生き物の存在を弱めた。
やわらかい金の前髪は雨と汗で、青褪めた頬に張り付き、
自分の周りに常に温かい眼差しを注いできた、飴色のその双眸は、いまや燃えるように熱く、涙に濡れ、血の色を映していた。
何度確かめても、同じだった。
冷たい肌。
閉じた瞼。
人形のようにだらりと、力の無くなった四肢。
金髪の青年は、震える指で抱きしめた遺体の頬をなぞり、嗚咽を漏らす。
彼の視線は次第に上がり、墨の波紋を描く空を睨みつけ、全ての憎しみを叫んだ。
「憎き神どもよ、俺の望みを聞くがいい!
聞かないならば、お前の世界を俺が壊してやる!!」
叫びに呼応した稲妻が走り、轟音を辺りに撒き散らした。
時空の流れが変わっていく感覚を察し、彼の口角が上がる。
壊れ、捩じれ、歪んだ笑みだった。