第八話 華麗な貴公子
体育祭一種目目は50M競争。
まず男子の50Mが終わり結果は中の下といったところであまり芳しくなかった。
「侑子ちゃーん。頑張れー!!」
次の女子50M、二年三組の第一走者は侑子だ。
「きゃー永山先輩よ!!なんて凛々しいお姿なんでしょう。」
「頑張れ永山さん!クラス違うけど応援しちゃう!!」
学年・クラス関わらず女子たちからの黄色い声援が侑子に送られる。
「おっ、いきなり牡丹の君のご登場か。今年の体育祭は荒れそうだな。」
みんなの応援に振り返り爽やかに手を振る侑子はさながら王子様だ。
「永山ー!!しっかり走りなさいよっ!!我が二年三組が賞金を得るかそうでないかは
あんたにかかってるんだから!!」
凉子が三組の席からメガホンで叫んでいる、彼女は今年特に体育祭に力を入れていた。
それはもちろん優勝賞金のためだ。
「金よ、金。所詮世の中は金が動くから人が動くのよ!」
彼女の名言通り賞金のためクラス一丸となり異様な熱気を醸し出していた。
「大丈夫、凉子。あたしに任せておけ。」
クラスに向けグーサインを出す侑子の王子様攻撃で十数人の女子が倒れる事態になった。
競技が開始して間もないのにいきなり保健委員は大変だろう。
「位置について」
スタートラインに立つ七人が走り出す準備に入る。
「よーい」
ピストルを天に向けスターターが合図するのを待つ。
ドンッ
合図音とともに一斉に七人が飛び出す。
が、最初のスタートがよかった侑子が頭一つ先に出た。
そのまま一気に加速し二番手に大差をつけて一着を獲った。
「いぇーい。」
Vサインをする侑子、汗一つかいてない。
「さすがね、侑子。」
「侑子ちゃん、かっこいい。」
「これで優勝に一歩近づいたねぇ。」
菜穂子、琴子、千世子がそれぞれ労いの言葉をかける。
「さっすが永山ね。本当は全部の種目であんたを使いたかったのに一人五種目までって
生徒会が制限つけるから・・・・・。」
恨めしそうにチラッと菜穂子を見る凉子に対し
「だってそんなことしたらおもしろくないでしょ。」
笑顔で返す菜穂子、そんな彼女に何か言いたげな様子だが凉子は溜息をついただけだった。
「そうそう、その方が燃えてくる。」
侑子は残りの四種目に早くも目を向けているようであった。
以後千世子はパン食い競争で堂々の二位を獲得、琴子は障害物競走で
最後の借り物の商店街の渡辺さんという謎のお題でパニくってしまいドべでゴール。
菜穂子は侑子とともに200M・選抜リレーに出場し、好成績を収めた。
その後も侑子は快進撃を進め50Mに続き100M・200M・選抜リレーにも出場し
全ての出場種目においてトップを独占した。
体育祭も終盤を迎えついに最後の種目を残すのみとなっていた。
只今二年三組の順位は一位と僅差で二位にとどまっていた。
「さぁ、ついに残す競技はあと一つ!頼んだわよ、F4。」
「これで勝てば確実に優勝、賞金もあたしたちのモノ。
やってやろうじゃん、完膚なきまでに叩きのめしてやる。」
一クラスから四名が選抜されて全21クラスがし烈な争いを繰り出す
藤ヶ峰高校体育祭の名物―――――それが騎馬戦。