第四話 美少女は猫娘
美少女って言葉使いすぎました。
「三木さん、ずっと前からあなたのことが好きでした。付き合ってください!」
「ごめんなさい。」
彼の一世一代の告白も虚しく千世子は見事にフッた。
彼女、千世子は世間一般的に言うといわゆる美少女の類に入る。
美少女と一口にいってもピンからキリまでいて世の中には美少女と形容される少女はそう少なくない。
だが、千世子はいうなれば美少女の中の美少女であった。
艶やかな金髪に琥珀色の瞳、人形のような整った顔立ちに加わり鈴の音が鳴るような声と相まって
彼女の魅力があふれている、まさに傾城の美女という言葉がふさわしい。
街を歩けば誰もが振り返りスカウトされたことは数えきれないほどである。
そのため彼女に愛の告白をしてくる者は後を絶たない、今年もこれで十何回目のことやら。
だが今まで彼女の目に留まった者はいなかった。というのか興味がないのである。
「じゃっそういうことだから。」
用事はこれで終わりかみたいな顔をしてスタスタと教室へ帰っていった。
それがいつもの千世子である。
「ちょこ、もう少し柔らかく断ってあげればいいのに。
いつも思うんだけど相手の人が可哀想で仕方がないわ。」
「いいじゃん。分かりやすくてさ、菜穂もいざって時はきっぱり断った方がいいよ。」
いつものことだが菜穂子はあきれてしまう。
「菜穂子は男の方まで心配しすぎなんだ。確かにちょこの振り方は荒いけど。」
「この前の侑子の振り方も随分と荒っぽかったよねぇ。あっ、あれは振るっていうか
投げるって方が正しいか。」
「ちょこ、お前は・・・。」
千世子のきれいな額に侑子のデコピンがお見舞いされ
彼女の透き通った白い肌は痛々しく赤く腫れてしまった。
「酷い~。何するのさ。」
両手で額を押さえ涙目だ。
「おっ落ち着いて、ちょこちゃん。はい、チョコあげるから。」
「ちょこにチョコってダジャレか?おもしろくないぞ。」
「違うよー!これはたまたま持っていたのがチョコレートだったのっ。」
恥ずかしそうに顔を赤らめながらも粒チョコを渡す琴子の手のひらから
すっかり涙が引いた千世子がチョコをつまむ。
「ん~、美味しい。幸せ。」
さっきまで泣いていたのが嘘だったかのような変わりようである。
「自由奔放って感じよね、ちょこって。」
「うん、まるで猫みたい。」
「だな。」
チョコに夢中になりながらも三人の話を聞いていたのかこちらを向いた千世子は
「にゃ?」
と猫の鳴き声を真似てみせ、ちょうどその時口の端にチョコがついていた。
その愛らしさは女も胸を打たれるほど強力なものであった。
「「「かっ・・・・・可愛いっっっ。」」」
思わず三人もときめいてしまった。
ちなみに普通のチョコよりホワイトチョコの方が好き。