第十一話 閑話休題
「ほんとっ、昨日の体育祭では散々な目に遭ったよー。」
「まぁまぁ、琴子のおかげであれはまさに藤高史に残る
伝説の体育祭として後世に名を残して――――――――――――――――」
「だからそれがダメなんだってばーーーーー!!」
鷹野琴子と永山侑子の漫才でいきなりの幕開けで始まったこれはなにかというと
今日は体育祭の翌日、つまり休みの日なのだ。
この休日の意味は本来は体育祭での疲れを残さず
次の学校の授業に集中してほしいというものであるのだが
彼女ら四人はただいま杜崎家にて歓談中である。
ひとつの長方形の白いテーブルを囲み昨日の体育祭について楽しく
盛り上がっているところなのだ。
「あら、琴子。私もあなたに感謝しているのよ。
なんだって琴子のおかげで体育祭が盛り上がったも同然なんだから。」
「なっ菜穂ちゃんに褒めてもらっちゃったーー!やったー、うれしいー!」
「菜穂に褒めてもらっただけですっかり機嫌良くなっちゃうなんて
本当琴子は現金な奴ねぇ~。」
「むぅ、それはちょこちゃんだけには言われたくない!」
三木千世子は先程杜崎菜穂子が冷蔵庫から出してきたお手製のプリンを
頬張りさらにはその前に出されたチョコケーキを頬張り交互に食していた。
「ん~相変わらず菜穂のお菓子は美味しいねぇ。」
「ありがとう、ちょこがそう言ってくれると嬉しいわ。」
「何を隠そう私はお菓子マスターだからねぇ。」
「いや、全然隠れてないし。それにお菓子マスターっていうかお菓子食べマスターでしょ。」
「琴子、小さいことは気にしな~い。」
「かっかっかっ、そうだ琴子。小さいことばっかり気にしてると
あっという間に年とっちまうぞ。菓子は上手けりゃそれでいい。」
琴子の肩をバンバンと愉快そうに笑っている侑子に千世子はそういえばと口を開き
「侑子ってよく手作りお菓子もらっているのは目にするけど~
侑子自身は作ったりしないのぉ?」
千世子の純粋な疑問に身を固くする侑子に一同興味津々に答えを待っている
しかし待っても待っても返事は返ってこない。
そこで代表して菜穂子が訊くと
「あの、侑子?どうしたのかしら。」
心配そうに尋ねても一向に返ってこないのでさらに問おうとしたら千世子が間髪入れず
「もしかして侑子料理下手ぁ?」
またまた千世子の核心を突いた発言にとうとう侑子の固まった原因が判明した。
「そういえば侑子ちゃん、調理実習の時なんかも準備とか鍋見てるとか後片付けばっかりしてたよね。
よくよく思えば包丁握っているとこ見たことないかも・・・。」
さっきまでの楽しい雰囲気はどこへやら、一気にズ~ンと重い空気に変わってしまい
三人が気まずいなかただ一人だけ千世子は美味しいお菓子が食べれて
頭の周りに花が咲いている。
だがしかしこういう時は大抵救いの女神が現れるのだ。
「じゃあそんな料理が苦手な侑子のためにもこれからみんなで何か作りましょうか。」
「さんせ~い。」
「琴子も賛成!!」
「うっ・・・・・。」
機転がきいた菜穂子の発言だったがそれがまさかあんな事態に陥るとはこのとき誰も思わなかった。