*1枚上手
銃口を突きつけられながらもしれっと応える。
「確かに本来ならこのまま我々が負けていただろうね。そちらが15人、こちらが30人でも慣れていないシーフを相手になるとそう簡単にはいかない」
そしてさらに付け加える。
「シーフ相手に我々だけで来ると思うかね」
「何……?」
アンデルセンは眉をひそめた。
「! そうかっリリパットを!?」
「もう遅い。制圧完了だ」
アンデルセンは小さく舌打ちした。
「貴様は一体、何だ。一体、何なのだ」
「さあね」
とぼけた表情のベリルを見据えてアンデルセンはライフルを構える。負けは確実なのにアンデルセンの顔には諦めた表情が無い。確かにロッシュたちを人質にすれば彼だけでも逃げられるだろう。
だがそれはベリルを倒せれば……の話だ。
「俺は秘宝と死人を手に入れる」
口の端をつり上げてアンデルセンは静かに発した。
「私もか? 随分と欲張りだな」
「お前を欲しがっている奴らは大勢いる。高値で売れる」
男が引鉄を引く瞬間──
「! 避けろベリルっ!」
ロッシュが叫んだ。
「ぐっ……」
「ベリル!」
撃たれた衝撃でベリルはロッシュの足下まで飛ばされた。
「相変わらずの麻酔か」
「ベリル!」
心配そうに上から見つめるロッシュに小さく笑う。
「怪我は、無いか?」
「ああ……無い」
聞きながら上半身を起こしてロッシュに寄りかかる。
「まったく……お前は、頑固だよ」
「悪かったな」
「そこが、お前……の、いい処でも、あるんだがね」
意識が遠のいていく中、言葉を絞り出す。
「しっかりしろ!」
「無茶、言うな……この量。像用だぞ。普通の人間なら、死ぬ」
クク……と喉の奥から笑みをこぼし声を低くした。
「私の事は、気にするな……何か、転がってきたら……目を閉じろ」
「え?」
ベリルはそう言って眠りに落ちた。
アンデルセンは溜息を漏らしベリルを捕らえたという感情から自然と笑みがこぼれていた。しかし──
“カンッコロコロ……”
足下に何か転がってきて視線を落とす。
「! 手榴弾!?」
気付いた瞬間──まばゆい光が充満し目の前が真っ暗になった。
「うっ!?」
驚く男の手から何者かが銃を奪い両手を後ろに回して縛る。正常な視力を取り戻した時には目の前にベリルの仲間たちが立っていた。
「これはどういう事だ……」
状況を把握出来ないアンデルセンに泉はしゃがみ込み笑顔で発する。
「初めからあんたが麻酔を使うって知ってたんだよ」
「なんだと?」
ロッシュたちを解放しベリルを抱きかかえるダグラスとライカ。
「お前が獲物にどん欲なのは知っている。そして自分に自信がある事もね。だからオトリを使ったのよ」とメロール。
「オトリ……」
聞いたアンデルセンはがっくりと肩を落とした。