*才能
しばらくしてベリルが到着した。
「ベリル!」
「久しぶりだな」
口々に声を掛ける男たちにベリルは手を挙げて応えた。今回集めたのは30人。集めたデータからベリルが計算して出した人数だ。
「ここで軽く作戦を立て移動。移動した先で最終的な決定を出す」
地図を広げながらベリルが説明する。
「この建物は何かの施設だったのか?」とメイヤー。
「公会堂だったらしい。10年も前から使われていない。そこを奴らは隠れ家としたようだ」
「ロッシュが捕まったのなら移動してるんじゃないか?」とトマック。
「リアンナがロッシュが捕まったと知らされてすぐ、傭兵を雇って監視させているらしい。それだとまだ移動はしていない」
それに何人か口笛を鳴らす。
「さすがロッシュの娘だ」
「今回はロッシュ救出と彼の依頼を同時に遂行する。気を引き締めていけ」
聞いて全員移動を始めた。
ライカはベリルから荷物を受け取る。
いつもならベリルから渡さなければ何もしなかったのに自分から荷物をすすんで取りに来た。
車に乗り込むとライカはすぐにバッグの中を探り出す。そして武器を1つ1つ取り出して、何やらぶつぶつと独り言を言っていた。
「ライカ」
「何?」
ベリルはそんなライカに数枚の紙を手渡した。
「アンデルセンとよく組む奴らだ。覚えろ」
「15人?」
仲間は30人近くいる。パーティ戦に慣れていないライカには敵の顔を覚えてもらう方が味方撃ちを防げる。
ライカはすぐに記憶を始めた。
「僕は覚えなくていいの?」
「お前はライカの後で見せてもらえ」
ダグラスはそれに怪訝な表情を浮かべた。
ライカの後って……そんなのいつ回ってくるか解らないじゃないか。
「はい、ダグ」
「え!?」
まだ10分くらいしか経ってないよ!? 驚くダグラスにベリルは小さく笑った。
「どういう事?」
シャワーを終えたダグラスがベッドで銃の手入れをしているベリルに訪ねた。
「何がだね?」
ダグラスはシャワールームにいるライカにクイと頭を向けて示しながら発する。
「敵の顔だよ」
「あれが本来のあいつだ」
言われて少年は眉間にしわを寄せた。
「奴は要領が悪かっただけだ。向上心さえ出ればちゃんと出来る」
「ベリルはそれに気付いてたの?」
「おや、気付かなかったのかね?」
しれっと答える。
「は~さっぱりした」
相変わらずオヤジ臭い物言いですっきりした顔のライカが出てきた。
「ライカ」
「何?」
「買い物を頼まれてくれないか」
「いいよ~何?」
「9ミリパラベラム弾を3箱、50口径AE弾を2箱」
「OK~服着てすぐに行く」
着替えるため別の部屋に向かったライカをダグラスは唖然と見つめた。
「な?」
とベリルは笑って言った。
「……」
“な?”って言われても……
「お前は天性のものがあるがライカは努力型なのだ。1つ1つ、しっかり覚えたり見たりする事で上達する」
今度はナイフを取り出し刃を確認しながら応える。
「……」
このままだとすぐに追い越されてしまう……ダクラスは慌てて敵の顔を覚え始めた。