*目覚め
「リアンナ」
「! ベリル。どうしたの?」
ベリルは再びリアンナの家に訪れた。しかしその瞳は厳しい。
「全てを話せ」
「……なんの事?」
「アンデルセンが絡んでいるならただの誘拐事件ではない。本当にロッシュを助けて欲しいなら真実を話せ」
でなければ私は手を引く……ベリルの言葉にリアンナは蒼白になる。
「父が救出を頼まれたのは……国宝なの」
「国宝?」
「それは“神の子供”と云われるもので、絶対に口外してはならないと」
「モノはルビーだな」
「ええ、そう……」
『ピジョン・ブラッド』と呼ばれる宝石がある。
しかしその宝石の色は神秘的でとても言い表せないとされ、“神の子”と名付けられた。
「……」
ベリルはそれに頭を抱える。
「何故そんなものに彼が?」
「強く頼まれて断れなかったの」
「ふむ……」
救出対象が人間とアイテムになった。
作戦を変更しなければ……深い溜息が漏れる。
一方──キャンプに向かう泉のジープ。
「……」
ライカは泉をじっと見つめた。
「俺の顔に何かついてるか?」
泉は薄笑いで問いかける。
「東洋人だよな」
「日本人だ」
「まだベリル狙ってるの?」
緊迫したような会話にダグラスが割って入った。
「へっ……?」
ライカが目を丸くして泉とダグラスを交互に見やる。
「お前らがいるから当分は大人しくしてるよ」
「!?」
ダグの言葉は本当なのか!? ライカは開いた口がふさがらなかった。
「珍しい人種だな」
「お前が相手でもいいぞ」
ニヤリとされてライカは一瞬ぞわっとした。
こんな奴に狙われたベリルも可哀想に……ライカはしみじみと思った。
「さあ着いたぞ」
車を駐めて外に出る。活気のある小さな基地といった処か。ベリルが要請した傭兵たちだろうか、見える人は全て武装している。
「ハイ! マイケル」
ダグは何人か見知った相手に挨拶を交わす。
ライカはベリルの処に来て間もないため、こういう集団での作戦に参加するのは初めてで目の前の光景に少し戸惑った。
「……」
大勢の人間が行き交う──ライカは改めてベリルの言葉を噛みしめる。
『一歩間違えば仲間を殺してしまう』
誰かを殺してしまうかもしれない恐怖……そうならないためのトレーニング、訓練、記憶、知識。
俺は今まで何をしてきたんだろう……ただオヤジの手伝いをしてきただけだったんだ。それで一人前になれると思ってた。でも違うんだな……