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天使の残像  作者: 河野 る宇
◆第1章~ベリル
33/45

*バカンス

「ベリル!」

「ん?」

 振り返ると少年に勢いよく抱きつかれて青年は少し咳き込んだ。

「はしゃぐな……」

 愛らしい笑顔がベリルを見上げる。少年の名はダグラス・リンデンローブ。

「お前が見ていろ」

「知らねーよ」

「ライカよりベリルの方がいい」

 もう1人の男はライカ・パーシェル27歳。ブラウンの髪と青い瞳。印象的な彫りの深い顔立ちをしている。

 10歳の時にセシエルに拾われて、彼が死ぬまで側にいた人物だ。

 3人は骨休めにオーストラリアの砂浜に来ている。

「どうして水着にならないの?」

 砂浜でかっちり服を着こんでいるベリルに怪訝な顔をする観光客。ダグラスはそんな彼に問いかけた。

「泳ぐ気が無いから」

「もしかしてカナヅチなんじゃね?」

 楽しそうにライカは口の端をつり上げる。

「ベリルは泳ぎ得意だよ。時々プールに行って泳いでたもん」

 もちろんトレーニングのためである。神秘的な明緑色の瞳をサングラスで隠しベリルはサンラウンジャーでくつろぐ。

 2人の保護者のようなこの人物はベリル・レジデント、?歳。外見は25歳ほどで金髪のショートヘアにエメラルドの瞳。彼は特別な存在である。

『ミッシング・ジェム』と呼ばれる存在──それは人類の歴史に存在してはならない。記憶に値しない存在の事だ。彼はその1種、永遠性を持つ不老不死のミッシング・ジェムなのである。

 20年前にハンター、クリア・セシエルと出会い。盟友となった。その忘れ形見たちを彼は引き受ける形になってしまったのだ。

 27歳だというのに今まで生きていたのが不思議なくらい要領の悪いライカと要領は良いが好奇心が多すぎるダグラス。

 この2人の面倒を私が見るのか……ベリルは溜息を漏らさずにはいられない。

 サングラスを外して上半身を起こすと、一斉に近くにいた女性たちの視線が注ぎ込まれた。

「……」

 ベリルはそれに眉間にしわを寄せる。よく見ると7割は日本人だ。女性たちはこの3人に釘付けになっていた……その印象的な顔立ちと存在感。

 この3人は一体どういう関係なんだろう? 女性たちのそんな視線が突き刺さる。まさか25歳に見えるベリルが親代わりなどとはつゆほども考えていないだろう。

 しかめっ面のベリルにダグラスがビールを持ってきた。

「何故ビール」

「暑い日にこういう炭酸ってスカッとするよね」

 だったらコーラでもいいと思うのだが……大人ならアルコール飲料というイメージでもあるのだろうか?

「カーっ! 美味い」

「……」

 まだ27歳だというのに……仁王立ちでビールを飲み干すライカにベリルは年寄り臭さを感じた。

 ベリルは現在50歳である。25歳の時に不老不死になり25年が経っている。

「!」

 缶ビールを傾けるベリルに1人の女が近寄ってきた。ナンパか? と思ったが……

「ベリル・レジデント。あなたに頼みたい事があります」

「ほう?」

 彼女の目に鋭い光を感じた。

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