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天使の残像  作者: 河野 る宇
◆第6章
27/45

*犠牲

「ダグ」

「!」

 呼ばれて振り返ると泉が何かを手渡した。

「これ何?」

「レモン。ベリルに頼まれていた」

 手榴弾を……?

「これは4秒後に爆発するタイプだ。ベリルが指示したら投げろ」

 一通り説明するとどこかへ言ってしまった。

「?」

 少年はマジマジとレモンと呼ばれる小さめの手榴弾を見つめる。

「受け取ったか」

 そこにベリルが戻ってきた。

「これは?」

「泉は爆発物に長けている。何かあった時それを使え」

 じゃあこれイズミさんのお手製? ダグラスは手榴弾を見下ろしベリルを見上げる。それは少年はただの「お荷物」ではないという事を表していた。

 何かの局面で活躍する場があるかもしれない……少年は嬉しくて笑顔になる。

「命令違反はするな」

「うん、解ってる」

 笑って言った少年の背中をベリルは軽くポンと叩いた。


 アタックポイントに向かう前に全員が集まる。

「時刻合わせ」

 ベリルの言葉で全員が自分の時計を見つめた。

「3・2・1・セット」

 一斉にボタンを押し時刻を合わせる。

「当然だが命令は無視するな。修正可能か判断するのは私だ。解ったら解散」

 全員が散り散りになり準備を始めた。


 それぞれのアタックポイントに向かうためチームごとに車は移動を始める。少年はヒップホルスターを装着しハンドガンを仕舞って防弾スーツを着こんだ。

 ベリルのチームはイズミ、キャシー、セオドア、ナギンそしてダグラスの6人からなる。工場に突入するは最後だ。アタックポイントで待機し決行の時間までしばらく待つ。


 決行の時間は午後11時──秒針が12を差して各々、静かに行動に移った。

<見つかった! 戦闘に入る>

 C班から通信が入る。

「! もう……?」

 キャシーは驚いて声を上げた。いくらなんでも早すぎる。

「H、I、Jはそのまま続行。BはC、Dを守りつつ広く展開」

 ベリルは冷静に指示を下した。

「……っ」

 ヘッドセットから響く音にダグラスは身震いした。

「Gの指示変更。Bの援護」

「!」

 ベリルの声に少年はハッとする。冷静な彼の声は味方を安心させる。

 常に冷静に味方を不安にさせないように……それが指揮官には大切だ。


 ベリルは無言で手と目で仲間たちに侵入の合図を出す。先頭はベリル。次に泉そしてキャシー、真ん中はダグラス。

「!」

 しばらく進むと敵の気配が前方に感じられた。泉はベリルの隣に並び小さく発する。

「俺は右」

「左」

 泉とベリルは出てきた敵に狙いを定め引鉄ひきがねを引く。銃弾はみごとに命中した。倒れ込む敵から武器を奪いさらに進む。

 すでにヘッドセット以外から銃撃戦の音が響いていた。

「……」

 この状況は……やばいか? という表情を仲間たちが浮かべている。ベリルは1人、怪訝な表情で目だけで様子を窺い発した。

「どうも妙だな」

「何がだ?」

「感知されるのが早すぎる。それに相手の統率が良すぎる」

 問いかける泉に応えると彼は眉をひそめて口を開いた。

「誰かがリークしたか、情報が漏れていたか……か?」

 しかし、ここまで侵入してしまっては続行する他は無い。否、続行さぜるを得ない状況になるように設定されたような感覚だ。

「ここで待っていろ」

 ベリルはそう言って小さく溜息を吐き出し飛び出した。

「えっ!?」

 敵の中に突進したベリルに少年は驚いて目を丸くし思わず声を上げる。

「自分の特性を活かしているだけだ」

 泉は薄笑いで言い放つ。

「……」

 ダグラスはそれを理解したものの、敵の攻撃が当る度にベリルの顔が痛みに歪むのを呆然と見つめた。

 死ななくても痛いんだ……なのにどうしてこんな事!?

「私たちのためよ。でなきゃ、あんなことしないわ」

 キャシーの声は少し悔しげだった。そうさせなければならない状況に仲間たちも辛いのだ。誰かを犠牲にしなくては勝てない……だからベリルは自分を犠牲にした。

「状況が悪化すれば敵はそちらに攻撃を強化する。ベリルはこっちに敵を引き寄せてるのさ」

「でっ、でもそれじゃ……っ」

「私たちが危険だわね」

 キャシーは苦笑いで応える。

「全滅するより出来るだけ犠牲を減らす事が重要なんだよ」

 相変わらず泉は薄笑いだ。

 まるでベリルが初めからこうする事を知っていたように笑っている。

「もちろん死ぬつもりなんてさらさら無いがな」

 泉は言ってベリルの元に駆け寄った。

「わっ!? ちょっ……」

 止めようとしたダグラスをキャシーが制止する。

「大丈夫よ、ちゃんと勝算があって飛び出したんだから」

「Hello!」

 明るく発して口の端を吊り上げ泉はベリルの背中に回ると、彼の背後を援護するように引鉄ひきがねを引く。

「人を盾にしおって」

「最強の盾だね」

 2人は笑いながら敵を倒していった。

 しばらくすると銃声が止みキャシーたちが2人に近づく。

「おみごと」

「先に進むぞ」

 警戒しながら進んで行くと銃撃は先ほどよりまばらになった。こちらに引きつける作戦は成功だったようだ。

「C、D。状況は」

<設置完了した>

「素早く撤収準備。F、退路の確保は?」

<確保は出来てる>

「各班、被害状況を報告」

<Hだ。マイクがやられた>

「! そうか……準備の出来た班から撤収」

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