*馴染むもの
「……」
何かを考えながらベリルは車を走らせる。
助手席にいるダグラスの事など眼中に無いようだった。
「……っ」
入り込めないような雰囲気のベリルに喉を詰まらせる。
今度の作戦の事を考えているんだろうか……彼らの会話から察するに、かなり厳しい仕事らしいし。そんな事を思って少年は息を呑んだ。
「!」
車はおもむろにレストランの駐車場に入っていく。
「?」
「腹が減ったろう」
「あ……」
ちゃんと考えてくれてたんだ。
少年はピザを注文したがベリルを見ると注文したのは軽いサラダだけだった。
「?」
小食……? そんな訳ないよね。考え事でお腹が空いてないだけかな? そう思ってパクパクと食べ始めた。
「美味いか」
「うん」
美味しそうに食べる少年をコーヒーを傾けながら見つめる。
「銃の扱いは?」
「大丈夫。父さんから習った」
「そうか」
ベリルは自分の銃を手渡した。ピザを持った手で受け取ろうとしたダグラスに手を拭けとハンドガンを下げた。
手際よくハンドガンを持つ少年に納得したようにハンドガンを奪い取る。
「それ、よく手入れされてるね。凄く持ちやすい」
残りのピザを口にほおばりながら少年は言った。
「常に持ち歩いているモノだからな」
「もっぺん貸し……っ」
手を出そうとした少年に鋭い刃を突きつける。背筋が凍るほど驚いたがそのナイフをくるりと回し少年に柄を向けた。
「ナイフの扱いも?」
「も、もちろんだよ」
手に持つ姿も違和感が無い。ベリルは確認し終えるとナイフを返せと指で示した。
「持っただけで解るの?」
「大体だがな」
警察の査察が訪れるためいつものモーテルには向かえない。ベリルはもう1つの馴染みのホテルに向かう事にした。
駐車場に車を駐めて後部座席に置いてある荷物を手に取ってホテルに入る。
そしてチェックインを済ませ部屋に入ると、セミダブルの部屋は前日に泊ったモーテルよりも格段に綺麗だった。
「わお!」
少年は嬉しそうにベッドに体を投げてスプリングを弾ませる。ベリルはそれを一瞥しバッグの中身をベッドに並べていった。
「わっ!? 凄い……」
沢山のハンドガンとナイフ類がバラバラと出てきてダグラスは目を見張った。
「持ってみろ」
言われて少年は恐る恐る手に取る。
「しっくり来るモノを出せ」
「……」
時間をかけて吟味している少年の姿を見つめる。
「これと、これかな」
「確かだな?」
ダグラスは小さくうなずく。それ以外をバッグに仕舞うとその2つを手に取り工具を出して手入れを始めた。
「手を出せ」
ベリルは出された手を握る。
「強く握ってみろ」
「? うん」
確認してまた手入れをし興味津々で眺めていた少年に、手入れを終えたハンドガンを投げ渡した。
「!」
さっきよりも手に収まるハンドガンに少し驚きながら見回す。
ベリルは次にナイフを鞘から出すと刃を確認し始めた。小型のシャープナーで磨いたり柄の部分を叩いたりと繰り返したあとに納得してナイフを鞘に仕舞いまた少年に投げ渡す。
「それはお前のモノだ、大事に扱え」
腰から銃を引き抜き今度は自分のハンドガンを手入れしながら発する。
「! 僕の……?」