*騒動の予感
「みんなあなたを素晴らしい傭兵だと言います。その若さでみんなからそう言われるあなたの弟子になりたいんです」
「ちょっと待て」
一生懸命、話しかける少年にベリルは眉間にしわを寄せた。
「はい」
「その若さ……? どういう事だ」
「え?」
「聞いてないのか」
「な、何がですか?」
「私は見た目通りの年ではない」
「えっ童顔なんですか?」
そう来たか。
「50は超えている」
「は……?」
「私が15だったのは30年前の話だ。25で年を取らなくなった」
「へ……?」
ダグラスは意味が解らず呆然とした。
「解ったら帰れ」
「!? まっ、待って……!」
足早に去るベリルの後ろ姿を追いかけた。
「解りません! それに、それが帰る理由にもなりません」
一歩も引かない少年にベリルはあからさまに嫌な顔をした。
「私は教えるのがヘタなのだ」
「それはウソでしょ。ライカさんがあなたは教え方が上手いって」
「……」
あのやろう……帰ったら絞め殺す。ベリルは目を据わらせた。
「ベリル!」
声がかかって振り返る。
「キャシーか」
「また会ったわね」
「……っ」
大柄な美女に少年は後ずさりした。
「誰? この子」
ベリルの隣に立っている子どもを見下ろす。見事なブロンドにくびれた腰の魅力的なボディはサンドカラーのミリタリー服に包まれている。
「ハミルの子だ」
「へえぇ~彼の。預かったの?」
「まさか!」
「でしょうねぇ」
「いいえ! 僕は彼の弟子になりました」
笑って言った女性に少年は鼻息荒く胸を張った。
「……」
眉をひそめるベリルにキャシーは小さく溜息を吐き苦笑いで返す。
「諦めなさいな。ああいう子はきかないわよ」
ベリルは再び頭を抱える。
「まあ頑張ってね」
言ってベリルにキスし去っていった。
「誰ですか?」
「キャシー・キング。ハンターだよ」
「! ハンター……あれが」
少年はハンターに会うのは初めてだった。依頼を受けて対象を捕える者の事をハンターと呼ぶ。
「あれっ?」
気が付くとベリルがいない。驚いて辺りを見回した。
「あっ!? 待ってください!」
車に乗り込もうとしていたベリルを急いで追いかけた。