*聞き分けのない弟子
「なんだとぉー!?」
爽やかな朝に大声を張り上げる男。ライカ・パーシェルはベリルから聞いた言葉に抗議した。
ここはオーストラリア連邦ノーザンテリトリー準州の首府であるダーウィンにあるベリルの自宅。オーストラリア大陸北側のチモール海沿いに位置する街だ。
「なんで俺は留守番なんだよ!」
リビングで優雅に紅茶を傾けているベリルを見下ろし、全身で怒っている事を表す。
「今回の仕事は少々、危険だ。お前に構っている暇はなさそうなのでね」
真横に立っているライカを見上げてしれっと言い放った。
「なんで危険だって解るんだよ。まだ詳しい内容は聞いて無いんだろ」
「だからだよ」
「?」
首をかしげるライカにゆっくりと言い聞かせるように説明した。
「電話で大体の話も出来ないという事はそれだけ危険かややこしい内容という事だ。直接話す事で難しい依頼も頼み込む事が出来る」
仲間たちの命も守らなければならない。
「……」
そう言われてしまってはこれ以上何も言えない。
ライカは悔しさを噛みしめてベリルの右斜めにある1人掛けソファにドカッと腰を落とした。
「で、どれくらいなんだよ」
「南米に2~3週間ほどかな」
「! そんなに!?」
「その間の仕事は頼んである」
猫の使い程度の仕事をね。
「!」
皮肉交じりに言ったベリルをギロリと睨み付けた。
「そういう事だ。大人しくしていろ」