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天使の残像  作者: 河野 る宇
◆第四章~やればいいんだろう?
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*エピローグ

 アメリカ合衆国、アリゾナ州──アメリカ南西部にあるグランド・キャニオン国立公園を有する州、州都はフェニックス市。

 砂漠の風景で有名な州だが、実は面積の半分以上は山や台地となっている。乾燥した気候であるにも拘わらず、その二十七パーセントは森林だ。

 ──乾性植物が点在するその場所にベリルは訪れた。乾燥地、特有の地面に立ち並ぶ石碑のなかに見つけた名前に立ち止まる。

 大理石で造られた小さな石碑に、その人物が何を成し遂げてきたのかを物語るものはない。どれほどの人間だったのかを知るのは、生前のその人を知る者のみだ。

 ベリル以外に見あたらない墓地は、緩やかな風が殺風景に渡っていく。

「教えればいいんだろう?」

 ああ、やってやるよ。刻まれた盟友の名に眉を寄せた。

「ライカはハンターには向いていない。故に、学ばせる気はなかったのだろう」

 中途半端に知れば返って危険となる。諦めて普通の生活をしてもらうためにもと考えての判断だったのだろう。

 それでも、ライカはセシエルの意志を継ごうとしている。

「私にそれを押しつけるとは」

 お前が弟子を取らなかったのは、とことん人に教える事が下手だったからか。仮にも育てた子供で愛情もあっただろうに、奴の運を試すとはお前らしい。

 愛情があればこそ、難しかった事も理解している。

「最後の最後まで私を楽しませてくれる」

 皮肉を込めて口角を吊り上げた。

 確かな絆があったのだと示すものは花束ではなく──おもむろに抜いたナイフは、白い大理石に高い音を立ててそれを刻んだ。

「そんな綺麗な墓は、お前には似合わない」

 それは、闘いの証──最期のそのときまで求め続けたもの。

 乾いた風を頬に受け、ベリルは墓地をあとにした。




「天使の残像」完

>次話「絆の継承」

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