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第七章第六話
その噂とは、みやびが別の男と付き合っているという噂だった。
その噂とは、みやびが他の男と付き合っているらしい、との風の噂だった。私は激しく動揺した。別に私はみやびと付き合っている訳ではないので、誰と付き合おうが彼女の自由だし、みやびが責められるいわれはない。しかし若い私は、どうしても、みやびの口から直接真実を聞きたかった。若い私は、またしてもみやびに連絡を取ろうと決心した。
1月の終わりの日曜の午後、家には相変わらず、誰もいなかった。昔から放任主義の両親は不在で、弟と妹も友達たちと遊びに行った。電話するには、絶好のシチュエーションだった。
私は再び若い私と同化し、みやびの家へとダイヤルした。みやびの家の電話の呼び出し音が耳に鳴り響いた。呼び出し音は永遠に続くように響いた。