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第六章第五話
年末が過ぎ、冬休みも終わるころ、単調な日々に少し動きがあった。
結局、クリスマスも年末も何事もなく、過ぎていった。私は少し焦りはじめた。焦ってもなにも解決しなかったが。
冬休みが終わるころ、少し動きがあった。
いつものように、俊ちゃんの家に遊びに行ったときのことだった。「オレ、バンド組もうかなと思ってんだ。」小さく、俊ちゃんがつぶやいた。
これが私の運命を混乱させる言葉になった。 「オレもそのバンドに入れてくれよ。」若い私は何も考えずに、迷うことなく叫んだ。「別にいいけどさ。お前なんか楽器出来んの?もう、ベースとドラムは決まってんだ。後はボーカルぐらいか?」「オレにボーカルをやらせてくれ!」自慢ではないが、私はまったく楽器など、弾けなかった。はじめからボーカルしかできない男だったのである。しかも、別に歌がうまい訳ではなかった。前途は多難だった。