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第五章第三話
とりあえず急いで帰る術もなく、そんな理由もない私は問題を先送りすることに決めた。
とりあえず今のところ、帰る術は無いので、急いで現実の世界に帰る理由も無いので、その悩みは忘れることにした。あまりいつまでも悩まないのが、私の長所でもあり、短所でもあった。
しかし、結論を先送りしようとした私に彼女は冷水を浴びせた。「あたしがあった時のはざまの人の一人が言ってたんだけど・・・」次の彼女の言葉が、また激しく私を動揺させた。 「その人が言うには、こっちへ来てから一年以内に現実の世界に戻らないと、二度と元の世界に戻れなくなって、ずっと、時のはざまにいることになるそうなのよ。」彼女は大事な事をさらっと言った。「君はもう帰る方法を見つけたのか?」私は焦って聞いた。「あたしは無理して戻りたいと思わないのよ。だから帰る方法も知らない。」そういう考えもあるな、と私は考え込んだ。