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第五章第二話
女は他にも、この世界に落ちてきた仲間がいることをほのめかした
「いるわよ。」女はあっさりと答えた。「私はここに来てから、三人会ったわ。」「四十代のおじさん二人とあたしと同じ二十代の女の子。探せばまだいるかもね。」「みんなここであったのかい?」「ううん。ここで会ったのはあなたが初めて。他の人はみんなあのデパートの前で会ったけど。」あのデパートが一つの鍵なのだろうか? あのデパートとは静岡市に三軒しかないデパートのうちの一軒、西○百貨店のことだった。現在はもうなくなってしまったらしいが、その当時は繁盛していた。しかし、私はちょっと考えた。もし、そこで元いた世界に帰れたとして、私は本当に元の世界に帰りたいのか?長く付き合った彼女にフラれ、病気で車椅子の世界に。私は激しく悩んだ。